後日談3

 パーティーに現れたドラゴニアは奥さんと子供を連れていた。やつは結婚していたのか。アシュレイは怒りでぶるぶる拳が震える。そっと寄ってアシュレイはドラゴニアにコップの水をかけた。


「きゃっ!


 ドラゴニアが連れていた妻が悲鳴をあげる。


「何者だお前は」


「忘れたのかよお前がやったことを」


「さあ悪事ばかり働いていたからな、被害者はいちいち覚えてないよ」


 最低なことを言い放ちドラゴニアはタオルを受け取って拭いていた。


「こんな場所だから武器を持ってないからこの程度で許してやる子供の目の前だしな」


「たわごとを」


「アシュレイ!」エリメルが寄って泣いていた。


「よく堪えたわ、ドラゴニアはいずれ破滅するわ、お前には未来があるの、こんなことで自分の未来を奪ってはいけないわ」


「何の騒ぎです」


 女王陛下が現れドラゴニアが暴漢に襲われたのですと笑いながら言った。


「陛下」


「アシュレイ、元気そうね館の居心地はどう?」


「俺…とてもとても幸せです、師匠がいてくれたらもっと幸せだったでももう新しい友達がたくさんいるんです」


「よかったわね、それでいつかいい人を迎えにいくのでしょう」


 誰がいったのか。手に持っていた薔薇の花束を渡しアシュレイはお辞儀をし、いつかこの人に恩返しをしなくてはならないと決意を固めていた。日が暮れて夜は深まって森の中に城の周辺でフクロウが鳴く。ここで新しい人生をもう始めたのだ。ルースがいて、森の様子を眺めていた。


「私、あれから考えていたんです、カナーベル様のいない人生なんて考えられないといっそのこと後を追うなどといったバカげたことも一瞬考えました。あの人は私の人生の光でした、死霊のような暗い、暗黒の騎士でしたが」


「暗闇にいたって光だった」


「何の取り柄もない、馬を走らせることしか能がない私を認めてくださったあんな優秀な人が。私にとって心の支えでした、親より姉より」


「師匠あんたからたくさんの物をもらった何も返せないうちに行ってしまうなんてな」

 色々な思いでがよみがえってくるこの何年かの間、ずっとカナーベルのことをアシュレイは考えていた。


「いつか…また会えるよ」


 給仕がシャンパンのグラスを持ってきてそれをもらうと二人でこの暗闇の城で飲み明かした。そういつかまた会える、人はいつか死ぬのだから。そうしてリトルコールティンをエルキナに迎えに行っていつか使用人を増やして家族を作り、こうして仕事をして王に片膝をつくような手柄をたてそうして暮らしていくのだ。でもカナーベルあんたにいてほしかった。


 フクロウの声は木霊する合唱のように。いつかいた暗黒の騎士の思い出を語るように。

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アシュレイと暗黒の騎士 斉藤なっぱ @nappa3

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