後日談2
アシュレイは屋敷でメイドに仕立て直してもらった礼服に着替えさせてもらっていた。黒い礼服はカナーベルからもらったものである。この一着しかない。
「坊ちゃん買わないんですか?」
メイドが尋ねるとまあそのうちなーとか言いながらかがみに写る自分の姿を観ていた。あれから135センチしかなかった身長はとっくに160を超え、あの時カナーベルと出会った時のような立派な騎士と見劣りしない見てくれに成長していた。
「立派な貴公子様ですね」
メイドが鏡に映る美しい貴公子をほめたたえる。アシュレイは不思議とこの鏡に映る騎士は誰なのだろうと思うことがある。明らかに自分自身のはずなのに。
「ミアム俺はドラゴニアを殺す」
メイドは驚いて鏡の中にいる貴公子の顔を覗き込んだ。
「そんなの執事が許しませんよ」
「許さなくたってやる」
固く決意を秘めた表情からは凛とした騎士らしい顔が浮かんでいる。鼻筋はとおり目は大きく殺意に満ちた目をして口角はやや上がり気味で黒い髪の毛を伸ばし黒い礼服に身を包む騎士は今日因縁の相手を殺すのだ。
「坊ちゃん今日は王都に行くとのことでちょっと見栄をはりましょう」
普段使ってる馬車は男爵が以前から使っていた古ぼけたもので執事がすこし見てくれのいい馬車をレンタルしてきたのである。馬小屋の馬車にはいい馬がいると牧童のミーシャが言っていた。
「坊ちゃん春に生まれた駒ですお母さんも立派な軍用馬だったのできっとよく走りますよ」
牧童のミーシャが連れてきた駒は葦毛の馬でそれを引かせる。アシュレイは馬車に乗り込んだ。馬車を引くのはミーシャである。使用人は四人しかいないのだ。馬車は国立公園を抜けて王都にたどり着く、ここにエリメルが、ドラゴニアがいる。しかしアシュレイは手荷物検査で懐に入れてたダガーを没収されることになった。
「なんでだよ!」
「規則ですので」
「坊ちゃんきっと神様がそんなことしてはいけないって言ってるんっす、悪い奴には天罰ってもんが下るんですよそんなドラゴンだか何だか知らない奴もきっと今苦しんでるんですよ」
そう言われても収まりがつかない。イライラしながらミーシャと別れ、パーティーの会場へと足を運んだ。今日は美しい女王陛下の誕生日だ。アシュレイを聖騎士団に入れてくれた人。アシュレイを覚えていてくれた人。屋敷を与えてくれた人、ミーシャたちとの出会いを与えてくれた人だ。プレゼントに薔薇の花束を用意していた。それだけでは一生返せない恩があった。いつか報いて見せると誓っていた。会場にはエリメルがいて、アシュレイにはすぐに気づかない様子だった。
「エリメル!」
アシュレイは懐かしくて叫んだ。不思議そうな顔をしてエリメルは顔をじっと見つめもしかしてアシュレイなの!と喜んだ。
「目が変わらないわ…」
「エリメル元気そうだ」
水色のドレスを着こんだ色白の姫は本当に愛らしくて、この国で騎士になったことを伝えるとよかったと一言言って微笑んだ。
「リトルコールティンを迎えに行く準備は整ったのね」
「エリメルあんたのほうはどうなんだ」
「私ふられました」
「あんたをふるような奴がいるんだ」
「そうね…勇気を出したのに私はダメだったそうだわアシュレイ今日はドラゴニアがいるわお前の仇はクロードがとるわ?平手うち程度にしておきなさい」
殺す覚悟で乗り込んできたのに牽制される。そこにはルヴァもいて、アシュレイの姿を見つけてやってきた。
「お前…アシュレイ…なのか…」
「坊ちゃんお久しぶりです俺のことやっと思い出したんですね」
「髪を伸ばして化粧をしていたからなきづかなかった、お前も生き返ったんだな」
「もう昔のことです…」
色々なことがあったエルキナで。宮廷楽士だった過去、レアデスの屋敷に仕えていた過去、そこであった事件、それから村に帰って戦争があって。そうだ自分たちは地獄から舞い戻ってきた仲間なのだ。
日が暮れる、女王陛下が現れる。その頃にはドラゴニアも姿を見せた。子供を連れいてた。
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