不吉な予言
アシュレイたちが屋敷に引き返し、体調を整えていると、アシュレイはふと、大きな大広間の鏡を見ながら考えるのであった。
カナーベルあいつは死ぬ。
人を失うというのはどういった気持ちだろうか、またあの人のことを自分はどう思っているのだろうか、と考えを巡らせた結果今のことしかわからないという結論に至ったアシュレイは、うーんと背伸びをした。
「いいのかしらここにお邪魔させてもらっても」
ミラルカが話しかけて申し訳なさそうにするので俺は何か月もただ飯喰らってるぞと何故か威張るアシュレイである。
「ファティナまだ寝てる?」
「うんすやすやと、眠り姫みたいに」
あれから眠り続けているファティナであった、疲れからか恐怖からか、めを覚ます様子は見られなかった。
「きっと父上もそうしろと言うでしょう」
リビングのソファでくつろいでルースとチェスなどをやっているカナーベルが微笑んでそう言った。
「王手」
すぐに詰んだルースがお手上げだと笑う。
「お前は思慮が浅いのですよ」
「もう一度!」
ルースがチェスの駒を並べ替え何度も同じですよとカナーベルが言うが諦めない様子で再び挑んでいる。穏やかな時が過ぎていてた、空中庭園での出来事はまるでなかったかのように。アシュレイは再び思い出していた。カナーベルの師匠の言った言葉を。気に病んでも仕方のないこと、今のことしか考えなくていいという結論にいつも達するものの、アシュレイの心は何とも言えない感情で埋め尽くされていくのであった。
「何か気になる?アシュレイ」
「いや別に……」
ミラルカは鋭い様子で暗い影を落とすアシュレイに気づいていたようだった。城にはあと二人女の子が泊っている。一人は本当は男だったが。
「フェルマってなんで女装してんの?」
「さあ知らない、。何かあったんじゃない?多分だけどただのおかまちゃんじゃないよあの子」
「私の話してる?」
後ろからフェルマが現れた。
「いやあんたなんで女装なんてしてるのかなって」
「そうね、女の子になりたいからかしら」
そう言ってごまかして、スキップをしながらチェスをしている二人のところへ向かうのであった。そうしてカナーベルと対戦している。
「フェルマってね頭もいいよ」
「余計なんで女装しているのかわからないな」
カナーベルが対局の途中で強いと言った。燃えるような戦いが繰り広げられている、そうしてフェルマはカナーベルに勝った。
「まいりました、強いですね」
「うふふ……」
口元を隠し、女らしく微笑むフェルマである。
「可愛くて頭もいい……本当に女の子だったらよかったのにね」
「可愛くて頭もいいのはお前も同じじゃね?」
そう軽くアシュレイが指摘したのでミラルカははっとなって少し顔が緊張でひきつった。
「誰にでもいうのそんなこと」
すこしそっぽを向いて、照れていたようだった。
「別にそう思ったから……」
「リトルコールティンに言ってやろ」
笑顔を作り、チェスの会場まで軽い足取りで移動するミラルカである。
「素直じゃねえなあいつは」
頭をかいてケラケラと笑うアシュレイである。時間は昼をすぎていた、屋敷が慌ただしくなったので給仕に何かあったすかと尋ねると、ファティナ姫が起きたとだけ告げた。ファティナはようやく起きたらしい、病室に駆け込むのは野暮なので、アシュレイたちは広間で待機し、ミラルカ達だけが病室に向かった。
昼になったので昼飯の時間になり、給仕がローストビーフのサンドイッチなどを運んでくるとそれを全員で食べた、果汁の入ったドリンクなども配られた。とれたての果実を絞ったものですよと言われ、そのグレープフルーツのジュースを飲み干した。屋敷で食べるものはなんでもうまいっすね等とカナーベルに言うと、きっと無料だからですよと言ってカナーベルは笑った。ファティナが目を覚ました。それはアシュレイにとって喜ばしいことでそれは全員にとっても大切な、またシーザにとっても大事なことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます