53
ミラルカがシーザ王都宮廷魔術師団に召喚されたのは間もなくだった。
護衛のためにアシュレイも同行していた、宮殿の奥から魔術師団が現れ、エレメンツだとわかるとまあなんて若いんでしょうと驚いた。
「エレメンツのほとんどは学生だからね、みんな10代だよ」
ミラルカはそう言ってダウジング用の地図を広げた。
「おまえできないんじゃなかったのかよ」
「人に比べたらね、ルヴァとかリトルとかの足元にも及ばない程度」
「ルヴァってあのレアデスの坊ちゃん?」
「そうだよよく知ってるね」
その人物のことは本当によく知っている。でもそれ以上何も言わなかった。
明かりを消し、ダウジングが始まる、地図の上にペンダントを振り魔力でぱあっと明るくなっていく、どうですと魔術師団が聞くと、ミラルカが黙ってと地図とにらめっこしていた、
「レイブン……エレメンタル……」
ミラルカが集中しながらそう言うとそこは廃墟になった空中庭園です!と誰かが言った。
「空中庭園、どおりでわからないはずだ」
そう噂しあっている宮廷魔術師団である。
「でも空中庭園なんてどうやって行くんだ」
「もう使われていないエレベーターがあります、我々には力は残されていませんが
ミラルカ様の力ならまた使えるのでは」
転移装置の場所まで移動して、蜘蛛の巣のはったその場所を興味深くミラルカは観察していた。
「まだ魔力に反応するかしら」
古代文字の浮かび上がるその場所に魔力を念じて送り、少し作動したのを確認してミラルカはそこを出た。
「まだ使えるみたい、掃除しておいて」
「は、すいません」
慌てて下男が掃除に向かう、ファティナ姫の身に何かあったら国交断絶の危機でしたと魔術師が言うと、まだ油断はできないよと牽制するミラルカである、すっかり王の耳にも入り聖騎士団が派遣されることとなった。今度も六人である。
「またテメーと一緒か」
「なんだと小僧」
誰かがエーゼンを止めて、ファルス隊長はミラルカの若さに驚いていた。
「僕はてっきりおばあさんだと思っていたよ」
「エレメンツは学生だよ」
「学生?それじゃみんな若いの!年を取ったらどうなるの」
「年を取ったら宮廷魔術師団に入ってずっと経理や書類整理をすることになるよ、図書館の学芸員もしたりする」
「へえそうなのかあ、エルキナはそんなシステムになってるんだね」
「君なかなか可愛いね、いくつ?」
フェリクスがミラルカにそう言うとムッとした様子で16とだけ答えてそっぽを向いた。
「ああ、その子男の子嫌いだからあ」
しょげたフェリクスをフェルマが慰めると、世の中の半分は男なのにと愚痴った。
「ちょっと待てなんで俺は平気なんだよ」
アシュレイが咎めるとミラルカは私、あんたのこと男だとは思ってないものとけろっとした様子で言った。転移装置の起動が始まる、モスキート音が入るかもしれないから耳を塞いでおいてと言われた聖騎士団である。「俺は絶対音感なんだ、変な音とか困る」アシュレイがそう言うと聖騎士団の全員がそうだよとフェリクスが言った。
「俺は士官学校のピアノ科」
エーゼンがふとそう言うとええ!と言ってアシュレイは驚いた。
「騎士だからね、みんな音楽ができるよ君もできるんだね騎士志望なら有利だよ」
ファルス隊長がにこやかにそう言って耳を塞いでいた。
荒れ果てた村落のような場所に豪華な神殿がひとつ大きく建っていて、長らく人が出入りした形跡がないのがまるわかりの雑草の生えまくった場所であった。騎士はみんんな絶対音感があると聞いて頭が混乱しつつあるアシュレイであった。
「お前楽士だったのですものね、意外でしょう」
カナーベルがそう言って落ち着くためにタバコをふかす。
「師匠も楽器に覚えがあるっすか」
「私は琴をやります、みんななんだかんだ言って貴族ですからね」
本当に意外なことを聞いた。では演奏しなくて正解だったのかもしれない。
「リトルちゃんもピアノできるよ、でもいつもよくわかんない謎の作曲家の変な曲ばかり弾いてる」
「あいつらしい……」
「私は楽器はほとんどだめ、音楽の成績最悪なの、クレリアフォルセリアってね、音楽も必修なのだから最悪」
「知ってるよ俺の親父クレリアフォルセリアの音楽教師だもんよ」
「うっそ!鬼のカルティエ先生?」
「そう鬼」
ミラルカは本当に驚いていた。さあファティナ姫の救出へと向かわなければならない。
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