第4話 六欲天 四大王衆天を進行中!
「そういえば、六欲天って、俺が知ってる構造と違うみたいだ」
閻魔様の親切サポートにより、目的地から遠くないところに転移してもらえた俺たちは、物陰から物陰へと、徒歩で進んでいく。この場所は、四大王衆天というところらしい。記憶によると。
本当は、神楽坂は空も飛んだりできるらしいが、俺を抱えて飛ぶのを嫌がった。
童貞がうつるのが理由らしい。砲弾の的にされるという理由ではない。
だから、うつらねえって!
「私は、純平と違って自殺志願者じゃないから、あの世の構造なんて知らないわ。何が違うの?」
相変わらず辛辣ですね。神楽坂さん
「自殺志願者じゃねーよ。まあいいや。あのな、地獄って罪の重さによって、行くとこの深さが変わるとかって聞いたことないか」
「うん。それなら聞いたことあるわ。純平が、無間地獄に行く予定だったとかって事でしょ?」
「いやいや。俺そんなに大悪党じゃないから」
「若くて美人な前途あるJKを殺しておいて、ぬるい地獄に行けると思ってたの?」
それを言われると弱い。
「ごめんなさい。そこは言わないで」
くすりと笑う神楽坂、くそ、相変わらず可愛いじゃねえか。
「で、でな、天国も階層が有って、六欲天も六つの階層に分かれてるってのが、現世での言い伝えないわけだけど。今の俺たちが持っている記憶だと。この六欲天はそれぞれ、テリトリーごとに分かれてるっていうか、国みたいな感じ?」
「だから?」
「だからって言われると困るんだけど……」
いや、そんな馬鹿を見るような目で見ないでください。気になっただけなんです。
それと、もし、伝承通りなら、あんまり会いたくない方もいるんですよ。
「そんなのどうでもいいじゃない。私は仕事をして、もう一度JKライフを取り戻すのよ」
「そうですか、そうですか。てか、俺この仕事終わらせたらどうなるんだろ? 閻魔様に聞いてなかった」
「輪廻転生してゴキブリか、ミジンコ位に生まれ変わるんじゃないの?」
もはや俺は、哺乳類にすら生まれ変われないらしい。
「せめて、人間でお願いしたい」
「どうせ、生まれ変わっても、引きこもりニートの童貞なんだから、意味ないでしょ」
「い、意味なくなんてねーし。次は必死で生きるし」
相変わらず酷い言われようだ。これだからリア充は苦手なんだ。
俺は項垂れながらとぼとぼ歩く。
「まあ、それ以前に天国とか、あの世って感じしないよな」
周囲を見ながら改めて思った。さっき隠れた廃墟もそうだったんだが、戦争行為で滅茶苦茶になっていなかったら、都会のビル街みたいだった。
「そうね、雲の上の小川が流れてる世界とか、中国の風景画みたいな感じじゃ全然ないわね」
多分、東京のど真ん中でミサイル禁止で戦争したら、こんなふうになるだろうと言った感じだ。
ガラスは殆ど割れて飛び散っているし、中には傾いてしまっている物もある。でも明らかに自分たちの世界にあったビルといえる建物だった。
転送された時の情報によると。当然、新しい時代の人間達も、どんどんこちらの世界に送り込まれてくる。
基本的にここまで登ってくると、輪廻転生の輪に戻る者も少なくなる。そうして更に人口と知識、技術は集積され今に至るそうだ。
「何か、時間が経つほど異世界感が無くなってきた」
「じゃあ、純平の理想の異世界ってどんなところなの?」
お、神楽坂が乗ってきてくれた。
「そりゃ、異世界の定番っていえば、中世ヨーロッパみたいな、文明がまだ未発達な感じのところだ。
そこで、現代日本の知恵を披露する事で、一躍ヒーローみたいになるのがお約束みたいなもんだ。
後は、猫耳や兎耳の可愛い獣人族の可愛い女の子たちや、金髪碧眼のスレンダーなエルフ美女がいる世界だな」
おっといけない。ついつい熱く語り過ぎてしまった。
「そう、取り敢えず言いたいことは分かったけど。純平が気持悪い妄想に取りつかれた、末期の童貞だという事だけはわかったわ」
バッサリだった。流石は神楽坂さんだ、顔色一つ変えず。残酷な事をサラッと言ってくれる。
「いやいや、妄想なのは認めるけど。末期の童貞ってなんだよ。俺、童貞病で死ぬのか?」
「まあ、童貞のまま死んだ事は事実でしょ?」
「はい……。事実ですが、あまり僕の心を抉らないでください」
フンっと。鼻で笑われてしまった。
「あんまり、童貞菌まき散らす様なら、汚物は消毒しないといけなくなるから気をつけなさい」
今度は火炎放射器を出す神楽坂。これで、モヒカンと肩のトゲトゲガ有れば完璧だ。
「折角、地獄行きは免除されたので、火あぶりは勘弁してください」
俺は天国にまで来て、何回死なないといけないんだ。
周りは今でも魔法に銃弾にいろんなものが飛び交っている。
俺は怖くてこそこそ移動しているので、まだ今のところは被弾していない。まあ、神楽坂から一撃頂いたが。
神楽坂は悠々と歩いている。たまに火球が直撃したり、恐らく銃弾だろうが当っているだが、バリアの様なもので守られているらしく、平然としている。
流石、魔法少女? だ。
「純平……」
神楽坂の冷たい目と、火炎放射器の先端がこちらを向いている。
「か、神楽坂様は、美少女であります」
「宜しい。あんた、顔に出やすいから気をつけなさい」
恐ろしい、何という勘の鋭さ。これもチート能力の一つなのか? いや、元からだった気もする。
神楽坂の陰に隠れながら、こそこそと建物の影を移動する。我ながら男らしい。
「お!なんだあれ?」
進行方向の建物の陰に、蹲っている人影? といっても、尻尾が生えている。丸くてふさふさしている
あれはモフモフに違いない。絶対気持ちいいはず。
衝動が抑えられなくなった俺は、音を立てないよう。丸いふさふさに近づいていく。
「えい!」
俺はモフモフを思う存分たんのする為、両手でワシワシする。
「ぎゃあ!」
モフモフは飛び上がろうとするが、俺はそんな事は許さない。さらにモフモフする。
「いやっす。変態っす。犯されるっス」
こっちを見てプルプルする少女。
おお!獣人族だ。ウサギの獣人だ。うさ耳に、うさシッポ、大事な部分は真っ白な毛でおおわれているが、それ以外は、殆ど人間と同じような皮膚だ。人間でいえば、ブラとホットパンツだけと言う感じだ。
「いやいや、そんな恰好しているお前が悪い。そんなんだから、俺の様な奴にモフモフされるのだ」
モフモフを続ける。俺が悪いんじゃない。そんな恰好で誘ったお前が悪いのだ。
「やばいっす。変態が説教垂れてるっす。しかも、ウチが悪いみたいっす」
そう言いながら、必死でもがくうさ耳ちゃん。小さくてかわいい。身長は150cmもなさそうだ。
人間の歳なら十歳位か。
しかし、獣人がいるとかの記憶はなかったな。記憶をたどっても、この世界の概略と地理、大まかな目的くらい。でも、異世界に来たって感じがするぜ。あの世だけどな!
そんな事を考えながら、感慨深げにモフモフを続けていると。俺の眉間に冷たいものが当たる。
「そこまでよ、ド変態」
パンッ。
乾いた音を最後に、俺の記憶が途絶えた。
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