第一章 文化祭実行委員任命編
1-1 弟の寵愛
「待って、
彼女、菊本ことはといきつけの大学病院で出遭った次の日、学校へ向かおうと住んでいるマンションを出ようとしたら、弟の
僕の弟・
僕たちが通う高校は、巷では結構有名な進学校だ。僕が住んでいる県の偏差値が高い高校はなぜか男女別学の学校が多いから、男女共学校の中ではトップクラスとも言ってもいいかもしれない。男女別学の高校は比較的伝統が長い学校が多いけれど、僕の学校は年々地道に偏差値を上げてトップまでやっと上り詰めたタイプの学校である。だから、公立校にしては手厚く受験の面倒を見てくれるところが人気の秘訣だったりする。もれなく制服はダサい。
「あー本当に
少し大きめの学ランに袖を通している
ちなみに、弟の中身も僕よりも優れている。人付き合いが上手く、友達も多い。サッカー部に入っていてスポーツもできるし、勉強も卒なく人並み以上にこなす。加えて、かっこいい部類にカテゴライズされる容姿を持っている。
なぜ神様は僕にそれらの一つも与えてくれなかったのかと昔は恨めしく思いもしたが、今はこう生まれてしまってはしょうがないし、日陰で生きるのも悪くないと思うようになった。
そんな自分と正反対のじめっとしたネクラでもやしでがり勉な兄のことをどう思っているかと昔尋ねてみたら、弟は僕を尊敬していると言った。まさか尊敬しているとたった一つしか年が違わない弟に言われるなんて想像もしていなかったから、その一言を聞いたときに驚いてしまった。なぜこんなにも盲目的に僕に懐いているのか、ただただ不思議である。
きっと僕の弟は性格も完璧なのだ。友達がたくさんいてスポーツも勉強もできる兄思いなイケメンの弟。こんなに完璧な弟はこの世に心以外に存在するのだろうか。
僕は別に他人にはあまり興味がないが、僕のことを好いてくれる弟のことはもちろん嫌いではない。僕が唯一まともにコミュニケーションを取れるのはなんたって家族だけなのだから。
「こうやって
こんな風に僕に対してたまに妄信的な恋する乙女みたいな台詞をさらっと吐いたりする時はどうかと思うが、それを除けば完璧な弟である。
最近では目立つ容姿のせいか、女の子から連絡先をちょくちょく聞かれると話していた。でも、本人は恋愛などさらさらする気がないらしく、連絡先を渡しても友達以上に発展することはないらしい。罪な男だ。
そして、なおさらこんな僕と一緒に登校することで弟の株が落ちてしまわないか心配なところでもある。全く本人は気にしていない様子ではあるが。
「僕はここから一人で行く 友達に見られたら嫌だろ?」
そんなことを弟に向けて言ってみると、
「なに言ってるの? 俺が
……どうしてこんな風に育ってしまったのか。
僕のことを慕ってくれるのはとてもありがたい。こんなにも僕を好いてくれるのは
しかも、数名の女子はわくわくした目で僕らのことを見つめている。それを考えると、今晩の彼女たちのオカズが“兄と弟の恋愛劇~
これまでにもさんざん変わっていると噂が流れたというのに、またそれにプラスするようなことを僕は避けたいのだ。目立たないように日陰で生きている僕が、
「今まで助けてもらった分、俺は
「わかった」
もう黙ってくれ、と思いながら、そう言ったらまた何か誤解されかねないことを大声で叫ばれそうだったので、僕は大人しくただため息をついた。
「わかってくれたなら俺はいいよ」
弟は
少しでも熱を出せば僕のそばで心配そうな顔で看病してくれたし、誰かが僕の悪口を言っていたらそいつに制裁を与えていた(具体的には記述は控えておく)。
最近では身体の線が細いからと、僕の身体に合った筋トレのメニューを持ってくる始末で、それをスポーツはしたくないと断ったらじゃあこれならいいでしょ、と言って学校に持っていくための弁当を心が作るようになった。
だけど、
……一応言っておくけれど、僕も
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます