第3話 (凶悪な魔法)

とりあえず魔法の見せ合いが始まり、順番に魔法を発現していく。

小鳥遊 光の番が来たときに

「あれが噂で聞いた無効化の盾か、興味深い。」と宮本 勤が唸った。

小日向 雛は最後ということで次は遠征組の番である。

そして宮本 勤の後、林山 彰人のところで異変が起こった。

「なんや?頭痛がするで。」

「私も少し頭痛がするんだけど。」

「一体なにが起こったの!?」

と村山 正樹、木下 恵、秋月 明日香と声を出す。

ちなみに小日向 雛は何かを感じてか魔法力の吸収を発動させていた。

小鳥遊 光もそれに倣うように盾に身を収める。

「まあ、こんなもんか。」

とめんどくさそうな態度をしながら魔法を解除した。

すると一部を除き軽く崩れ落ちる。

説明を始めたのは監視官である。

「彼の魔法は周囲の生命体に対して錯覚を起こさせるタイプでね。今やったのは多分高熱という認識を植えたのだろう。その気になれば人も簡単に殺せる。」

と解説をする。

監視官が魔法を展開してるのをみるに精神系の魔法を防御してるようで、林山 彰人に付けられた監視官自体が希少な精神系の魔法特性なのだろう、というのが推測できる。

後天型でこの威力なのは錯覚を起こすタイプであるために魔法力による威力の影響が出にくいのだろう。

「しかし、2名ほど被害を受けてないようだね。」

と言葉を続けた。―木下 恵は銃の形状の具現化武装でを選んだため精神系でありながら精神系統を含む魔法の防御ができない。

範囲魔法の欠点としては中心を指標とするために防御した後ろの一定範囲には魔法の効果がなくなる、というものがあるため小鳥遊 光は防ぐことができた。

「無効化…

なるほど、魔法の系統種類関係なく無効にできるから魔法力が低いのはある意味当然なのか。」

と言うのは宮本 勤である。

「ちっ。」

とその言葉を聞いた林山 彰人は舌打ちをした。


最後に小日向 雛が中央に立つが

「みんなもっと下がって!」

と言い始める。

グラウンドの真ん中に小日向 雛が立つが、下がったメンバーの位置はだだっ広いグラウンドの隅に近いところまで下がったところでやっと「そのくらい。」と言う言葉が出た。

魔法の行使を始めた途端下がった位置ぎりぎりまでのグラウンドの砂が舞い上がる。

風の魔法で砂を舞い上げてこれが魔法の範囲という合図を出したのだろう。

次に、「魔法を撃ってみて。」と言う。

それに応じて魔法を行使したのは木下 恵が魔法弾丸を、宮本 勤が光線を小日向 雛の足元目掛けて放つ。

が、砂塵の舞い上がった位置あたりで消滅する。

これには、宮本 勤が「は?」と驚きの声を隠せなかったようだ。

そのあと冷静に分析したのか

「なるほど、これが彼女の魔法の標準範囲か。」

と言う。

「どういうことや?」

と村山 正樹が聞くと

これだから「阿呆は…」と村山 正樹に言ってそれに対して村山 正輝が怒る。

が宮本 勤は話を続けた。

「彼女は魔法力を練らなかった場合の標準範囲がこれで魔法力を練ることで範囲を制限してるにすぎないということだよ。

つまり、言ってしまえば周囲に味方がいない方が戦いやすいということだ。

特に、魔法力の吸収をする場合は練らずにそのまま行使すれば甚大な被害をもたらせるということでもある。」

と説明を受けた。

―つまり、この前の襲撃で小日向 雛が押されてた理由は小鳥遊 光を巻き込まないことや、死人を出さない事を前提に魔法を行使していたということになる。

「マジか。」と村山 正輝が言い、他の周囲の人も似たような感想を漏らす。

「よくもまあ、こんなものが野放しにされてるもんだ。」

と言ったのは監視官の人である。

そして木下 由実が

「雛ちゃんが暴走した場合それを押さえれるのは現状君しかいないからその時は君が頼りね。」

と言ってきた。


ひとまず全員が集まり、

「なあ、これ最後まで突破できるやつおらへんのとちゃうか?」

と村山 正輝が言う。

「確かに、前衛の時点で強力な精神系2人の3択は過酷かもねえ。」

と秋月 明日香が続く。

「次に連射の利く氷結系アサルトライフルと攻撃を完全に無効にできる盾持ち、そこで人数を削られてから次の光のルームと闇のルーム、突破しても最後にあの広範囲の小日向 雛が待ち構えるというのは過酷以外の何物でもないな。

いくら数の優位を作ってもな。」

と宮本 勤が答える。

「だからこその重複可能全員参加OKルールなのだろうな。」

と小鳥遊 光が答える。

「前衛で先に脱落した方が罰ゲームというのはどうだ?」

と林山 彰人が唐突に言う。

「そんなのに乗る訳が」

と秋月 明日香が言ったところで

「面白そうだね。何をするの?」

と木下 恵が乗り秋月 明日香が軽く項垂れる。

「そうだな、裸踊りでもしてもらおうか。」

と言う。前衛の他2名が女性だからというのがあるのだろう。

「ちょっ」と天雷 由実が言うが木下 恵がそれを抑える。

「別にいいけど私は男の裸に興味はないから…そうね、あなたが私に負けた場合は裸踊りは無し、私の下僕でどう?」

「はっ、面白いじゃねーかやってみろ。」

と林山 彰人が言葉を返す。

監視官も木下 恵の勢いに負けて言葉を挟めずにいたが、

「監視官、教師としてそれは認められないな。」

と近くにいた監視官が口を出した。

「下らん余興に付きあうんだ、少しぐらいいいだろ!」

「ダメなものはダメだ。」

「ちっ、下らん。」

すると、木下 恵がその監察官に耳打ちを始めた。

「…特別に許可しよう。」

「どういう風の吹き回しだ?」

「彼女が精神干渉系ということが起因している。」

「…なるほどな。」

と、精神系同士だから通じる簡略的な会話が投げられた。


後から聞いた話によると監視官の名前は山梨 初夏(やまなし はつか)―夏の初めに生まれたから付けられたとのことでれっきとした男性―と言って以前は木下 恵の監視官兼教師をやっていたらしいが、害がないと上層部の判断が下されて天雷の両親に監視権限を委譲されてその監視を娘が引き継いで―天雷 由実が偶然にも同学年で同じ学校であったためにちゃんと監視はしてるという名目上の委譲をして―やっているとのこと。

ちなみに木下 恵と天雷 由実は同学年であり秋月 明日香に銃機器の教授してもらう段階で知り合ってそのまま友達になったとも聞いた。

つまり、監視役と言っても形だけのものである。

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