第1話 (不審者)

「ねえねえ聞いた聞いた?不審者が出たって話。」

「知ってる知ってる。結構な手練れで魔法警備隊が捕えれなかったんだよね。」

「逃げるのに適した魔法を持っていて見失ったって話よ。」

「何それこわーい。」

「目的は一体何なのかしら。」

「さすがにそこまでは見当もつかないわ。」

「噂では魔王様の復活を願う闇組織っていう話もあるみたいね。」

「魔王…ああ、雛ちゃんのことね。」

「まあ、あの子は結構純粋なところがあるから利用されかねないわね。」

「心が子供からあまり成長してないって感じー?」

「確かに子供っぽいけど結構しっかりした子だよ。」

「「それは知ってる。」」

噂が広まるのは存外早く、既に校内ではその不審者話でもちきりだった。

ちなみに小日向 雛はそのかわいらしい容姿―背も低い―に子供っぽい性格から上級生の女子にもよく可愛がられている。



「いやー、あんさんも大変やね。」

と小鳥遊 光は村山 正輝に声を掛けられる。

「ん?」

「いやな、不審者が雛ちゃんを付け狙ってたことで尾ひれの付いた噂が出回ってるってこっちゃ。」

「そういうことか。」

「あんさんが魔の手から雛ちゃんを守るとかいう想像で盛り上がってる人や、雛ちゃんが魔王化してあんさんが倒すなんて予想してるやつらもいるで。」

「みんな暇なんだな。」

「…あんさんも雛ちゃんに負けず劣らずやね。」

「…どういう意味だ?」

「噂を噂としか取ってないとこがやね。」

「なるほど。」

「わいが裏ルートから仕入れた話やと、狙いは雛ちゃんでほぼ確定やね。」

「どうしてそれがわかる?」

「それは相手の実力や。魔法行使の検出器から測定された数値が不審者とは思えんほど高かったっちゅーことや。

本来魔法力を持った不審者いうんは、半端な魔法力で悪さを働くもののことや。

魔法力が強いもんは単独なら自信があるがゆえに誇示するもんで、こそこそとやるようなもんは組織だっての犯行という線が強くなるんや。

とゆーこっちゃ。」

と教えてくれた。

話もあるので帰りに小日向 雛を誘って帰宅することにした。

誘った際「こうちゃんから誘うなんてめずらしいね。」と言っていたが。


再度言った、

「こうちゃんが誘うなんてめずらしいね。」

が会話の始まりだった。

「ちょっと話があってな。」

「うん?何のはなし?」

「この前の不審者は多分お前の魔法力がに関係するものだと思う。」

「ふーん。」

「ふーん、って危機感がないな。」

「そもそもどうやって狙うの?わたしの魔法力は魔王のと同類のものだから最強のはずだよ?」

「魔法を行使するには溜めが必要なのは知ってるよな?」

「常識だね。」

「つまり、魔法の準備が整ってない状態で麻酔銃でも撃たれたりしたら一発でアウトってわけだ。」

「あっ!」

「だから、常時警戒は怠るなよってこと。」

「わかった!」

という会話のあと

「心配してくれてありがとうね!こうちゃん。」

と言って後は解散となった。

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