第8話 (幕開け)
岩山 輝人が特別模擬戦を教師に申請していたらしく、審議の結果として担任が了承の確認を取ってきた。
ちなみに断ることもできたのだが、
「まあ、何度やっても一緒だろうと思いますけどね。」
と言って了承した。
担任は「自身満々だね~☆」と言っていたが。
特別模擬戦は放課後にやるのが通例で、生徒同士が実力で話を付けたい場合などに用いられる。
模擬戦なので危険だと判断されればその時点で終了して、担当の教師が勝敗を決めるのだが。
放課後、見世物に集まるように人が集っている。
「お前のような雑魚に負けたのは油断しただけだというのを見せてやる。」
と岩山 輝人が言った。
とりあえず小鳥遊 光が位置に付くと
「こうちゃんがんばって~!」
という小日向 雛の歓声が聞こえた。
岩山 輝人も同じように定位置に付くと
「それじゃ~、いっくよ~☆
はじめっ!」
とウインクをしながら―ついでに片手片足も上げながら―開始のコールをしたのは吉川 恵。
ちなみに彼女の魔法特性は模倣とされている。
模倣という特性は実際には存在しないのだが、彼女は見た魔法の力の使い方をそのまま模倣する特技―魔法の行使が器用ともいう―があり、特性が不明ゆえにそういうことになっている―そもそも最初に行使した魔法自体が当時の教師のお手本の真似をしただけという―だけだが。
ちなみに特性が複製(コピー)の場合は相手の魔法を受けるか発動する際に触っておくなど―個人個人によってまちまちである―の接触条件が必要なのだがそれすら必要がなく、見るだけで覚えるのである。
その話はともかくとして
岩山 輝人が最初にやったのはまず谷を作ることだった、が
「あれ?行使が早くね?」
「魔法力をそこまで溜めてないよね?」
という周囲から疑問が飛び交った。
その谷の距離は跳躍の補助魔法が使えないと乗り越えられない距離である。
もちろん、小鳥遊 光は魔法力の盾に全魔力を注いでいるため解除しないと跳躍の魔法が使えない―しかし、そうすると今度は盾が使えず無防備―のだが。
(魔法力の低さを補ってるからくりを見抜かれたか…)
と思いつつ岩石の砲弾を防いだり躱したりしていく。
「おらおらおら、どうした!
この程度も飛んで来れないのか?
は、所詮雑魚は雑魚だわ。」
と挑発を繰り返していく岩山 輝人。
ふと砲弾の間隔が短くなり、それに気づいた小鳥遊 光はその上を脚力のみで跳躍していく。
周囲からは
「肉体だけでそんなことができるのか…」
「忍者かよ(笑)」
等の声で湧くが小鳥遊 光はそれを集中力でシャットアウトしている。
「ちっ、砲弾の間隔を詰め過ぎたか…」
と言いつつ岩山 輝人は魔法で自分の位置の足場を押し上げて壁に激突させようとするがそこにシールドアタックを叩きこんで崩す。
魔法力を込めて叩き込んでいるために破壊力があり、谷の形状にしてしまったため崩れる瓦礫を止めるものもなく、そのため大きく崩れた足場に岩山 輝人が飲まれ、落ちる。
こうなると宙に浮いているのと同じで大地の魔法は行使できない。―ついでにいうと谷が深くてただでは済まない。
小鳥遊 光は破壊した後にできた突き出た岩に手を伸ばして落下を凌いで―瓦礫は盾で防いで―いた。
「こうちゃん!」
という小日向 雛の声が聞こえると同時に下から強風が吹きあがり体が持ち上げられた、と思ったらいつの間にかできていた足場に落ちる。
吉川 恵が谷を使って強風を上に巻き上げさせ、その隙にそのまま大地の魔法で足場を作るという最小限の魔法力の行使で最大限の効果を発揮したのである。
その手際には試合を観戦する側に回っていた若月 夏も「やっぱり恵は器用だねえ。」としみじみした感想を言っていた。
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