第19話 巨漢の豪放磊落
小沢治三郎という人間を一言で表すならば、巨漢の豪放磊落であろう。政治的な所は、一切なく厄介な所もない。海軍兵学校37期で、井上成美と同期であったが、179人中45番目と、さしたるエリートではなかったが、海軍大学になんとか入り、卒業する。ややエリートコースにも乗りかけていたものの、艦隊勤務が多かった。先にも述べたように、それまで従属的な役割であった空母を集めて、集中的に利用するという機動部隊を生み出す。独創的な発想の持ち主であった。参謀がいなくても作戦が立てられる珍しい人で発想は豊かでありつつも、少し一人よがりな部分も否めなかった。エピソードには事欠かない彼は、大酒飲みのアルコール中毒だったという。宴席で酒が入ると、必ず腰を振りながら歌を歌ったそうである。巨漢な上に、あのゴツイ顔でやるから周囲は相当に面白かったらしい。当時の帝国海軍では珍しく、陸軍からも支持されていた海軍士官であった。目立った戦績はない彼だが、マレー作戦は、小沢治三郎なしでは巧く行かなかったと言われている。
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