第11話 先見の明

 戦いの主力が巨大戦艦ではなく、航空母艦に変わると予測出来たのは、間違いなく先見の明と言う他にはなかった。日露戦役におけるバルチック艦隊撃破以来、「戦艦こそが海の王者」という認識が、海軍艦隊派と呼ばれる面々にはあった。もちろん、彼等は大正11年のワシントン会議と、昭和5年のロンドン会議という2つの軍縮条約によって、戦艦の保有比率で日米英 3:5:5となってしまった事にも不満がありありだった。奇しくも、英国で誕生した30.5センチ砲10門を搭載した、戦艦ドレッドノートが進水し、日本も負けじと長門級及び陸奥級を進水させる。大艦巨砲主義の勢いは止まらず、超ドレッドノート級戦艦建造の道を突き進む。そうした中で、アメリカ大陸の水運の要である、パナマ運河を通れない規模の戦艦も生まれる。大和や武蔵はその規模である。大和や武蔵が進水する時期には、最早大艦巨砲主義では戦えない時代に変わっており、航空戦の時代が幕開けた。それを実証したのは他でもない、治三郎が生んだ日本海軍空母機動部隊のパールハーバー作戦であった…。

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