第9話 ハンモックナンバー人事
今の自衛隊はそうでもないようだが、帝国海軍には、ハンモックナンバー人事というものが存在した。ハンモックナンバーとは、海軍兵学校や海軍大学校の卒業席次の事であり、分かりやすく言い換えるならば、卒業時の学年成績順位である。正式名称は軍令承行令というもので、海軍が学閥主義と言われた所以である。部隊での出世を、たかだか士官教育の試験成績で決めるというのは、かなり馬鹿げているが、こういった学閥主義は、現在も存在している。主要省庁の国家公務員試験などはその典型だろう。平時の海軍においては、派閥の専横がなくなるなど、有用に機能したが、戦時になると弊害が出て来た。その最たる例が、日米開戦時の人事であった事は有名である。昭和16年、航空機戦闘の知識のない南雲忠一中将の方が、知識も実力も南雲中将の上を行っていたであろう小沢治三郎よりも、わずか一期(一学年)先輩であったというただそれだけの理由で、戦隊司令長官にはなれても、空母機動部隊を率いる機動艦隊司令長官には、なれなかった。このハンモックナンバー優先の人事が、後のミッドウェイ海戦での大敗北につながる。南雲も小沢も、同じ水雷畑の水雷屋であるが、航空機戦闘における知識の有無を考慮して、機動艦隊司令長官を選出しなかったのは、ハンモックナンバー人事の弊害というよりは、ここまであからさまだとヒューマンエラーである。小沢は、南雲亡き後機動艦隊司令長官に就任するが、時既に遅し…であった。
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