第8話 第一航空戦隊司令官

 昭和14年11月治三郎は、第一航空戦隊司令官に就任する。第一航空戦隊「通称:一航戦」は、大東亜戦争開始時点においては、世界最強の空母機動部隊と言われていた。その錬度や、パイロットの技量、兵器の性能など、どれをとっても非の打ち所がない、まさに精鋭部隊であった。開戦の火蓋を切ることになった真珠湾攻撃においても、主戦力としてその力を見せつける結果になるのだが、そもそも昭和16年12月の開戦時に、世界で空母機動部隊を運用出来ていたのは、日本海軍及び英国海軍及び米国海軍のみであった。日本の海軍力が世界三大強国になるまでには、やはり日露戦争における、バルチック艦隊撃破の経験が大きな影響を与えている。仮想敵を陸軍はロシア(当時はソビエト連邦)、海軍は米国にそれぞれ設定していた。そこからもわかるように、日本の仮想敵国は、陸軍大国と海軍大国に目が向いていた。それらを同時平行的に戦力の均衡を保ち、世界で互角に渡り合う為には、少々の無茶苦茶を国民と分かちあっても、大きな航空母艦を用いての、空母機動部隊を本格的に運用するしかなかった。そして、それを形にしたのが、他ならぬ治三郎だった訳である。

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