第6話 喧嘩ばかりしていると為にならない

 地方に居てもやる事が無いので、治三郎は、東京に上京をする。しかし、働く気にもなれずブラブラと退屈な日々を送っていた。そんなある時、帝国海軍軍人である兄から手紙が来る。そこにはこう書いてあった。

「喧嘩ばかりしていると為にならない。」

 というような意味の内容で、海軍兵学校を受験してみてはどうか?というようなニュアンスの事も書いてあった。当時の海軍兵学校と言えば、最難関かつ選ばれしエリートにしか入れないトップヒエラルキーの場所だった。治三郎は、兄の勧めを素直に聞き入れた。それまで費やしていた喧嘩へのエネルギーを、兵学校受験の為に変換し、必死に勉強した。そんな甲斐もあって、何とか海軍兵学校に合格を果たす。治三郎は思った。人生その気に成れば何でも実現は可能なのだと。学校でもまともに鉛筆を持たなかった男が、心を入れ換えて努力した成果なのだが、そもそも勉学に集中出来る人間は、この時代において身分は低くない。治三郎は、素直に喜んだ。だが、海軍兵学校が何をする場所なのかという事は、入ってから知った。中々にして本末転倒な話だが、特段彼の進路に影響が出る訳ではなかった。こうして、治三郎は海軍兵学校の門を叩く事になった次第である。

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