第5話 放校
喧嘩に明け暮れていた治三郎は、学校を転々とした。旧制宮崎中学から、東京に出て来て、成城中学を卒業するが、都会の暮らしが肌に合わなかったのか、鹿児島県第7高等学校へと進学する。しかしながら、元来の性格と生活は、変えようと思っても、簡単には変えられるものではなかった。喧嘩に始まり喧嘩に終わる生活を、どこにいても繰り返してしまう。白黒をはっきりつけたがる性格が災いしたのか、分からないが、喧嘩というもの以外に個人を表現出来る事を知らない。それは彼にとっては辛いことであった。戦国乱戦の世ならまだしも、散切り頭を叩いてみれば泰平の明治である。腕っぷしだけで飯が食える職業はない。あれだけきちんと取り組んでいた柔道も、ついには辞めてしまう。治三郎にしてみれば、喧嘩も柔道も紙一重なのかもしれないが、片や殴りあい、どつきあい。に対して柔道は、明文化されたルールがあるスポーツである。世間の評判を気にするようなタマではないが、周りの評判も変わってくる。結局治三郎は、鹿児島第7高等学校を放校(退学処分)になってしまう。この時代は、中学卒業の学歴は当たり前にいたから 、特に放校になった事に、特別な危機感など微塵もカンジテハいなかった。
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