アートマン 心の壁③

回想•『すれ違い』前編


生後まもなく母を亡くし、父との二人暮らしが始まった。

父は精一杯私を育ててくれたけれど、

会社が倒れてからは、あたしたちの生活は一変した。


父は酒に溺れ、あたしに手を上げるようになった。食事をまともに与えられず、外で一日を過ごす日々。


近所の公園で、他の子どもたちが楽しそうに遊ぶのを横目に、あたしはただじっと座っていた。


「ねえママ?

あのベンチで寝ている人ホームレスじゃない?」


「やめなさい」

通りかかった親子のにそう言われた時、

あたしの心はチクチクと痛んだ。

まるで、あたし自身もどこかへ捨てられたような気がした。


それでも、学校には、あたしのことを大切にしてくれる子がいた。

 その子といる時間は、唯一の心のオアシスだった。


 「お使いの余りで貯めてきた小銭、

これだけで足りるかな?」

 ある日、その子の誕生日に、精いっぱいのお祝いをしようとバナナを買った。

 けれど、プレゼントを渡した時の彼女の反応は、どこかぎこちなかった。

 もしかして、贈り物を選んだあたしの気持ちが、うまく伝わっていないのだろうか。

 そんな不安が、あたしの心をよぎった。



そして、運命の瞬間が訪れた。

その日の午後、放課後。いつものように学校を後にしようとした時、あたしは信じられない光景を目にした。

 

 大切な友達が、校舎の裏にある焼却炉に向かって歩いていく。

 その小さな背中が、夕焼けに染まって見えた。



※今回の要約※

父親から虐待を受ける幼少期の空は、

唯一の友達に誕生日プレゼントを渡した後、

その友達が焼却炉に向かっていたところを目の当たりにした。

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