マイトリーカルナ 平等ないのち ①
**回想 •『親友との出会い』**
話を少し戻す。
これはあたしがみどりと仲良くなったときの話だ。
あたしは生まれてすぐに母を亡くして、
家は貧しくて、父からは虐待を受けて育った。そういう環境のせいなのか、あたしは疑り深い性格になった。
そして、幸せで何不自由なく生きている奴が本当に許せなかった。
クラスには千佳という真面目な性格の学級委員の女子がいた。
彼女は事あるごとに、あたしが授業参観に保護者を呼ばないことや給食費を忘れること、
借り物が多すぎることを咎めてきた。
最初はあたしも我慢していた。
でも、誰にだって我慢の限界はある。
ついにその限界を超えたあたしは、
千佳の長い髪を片手で激しく掴んで机に叩きつけた。
「ちょ、空ちゃん?痛い、痛いよぉ!」
「千佳ちゃん、大丈夫!?どうしよう、
保険の先生呼ぼうか?」
クラスメートたちに心配される千佳の顔は大量の鼻血で真っ赤だった。
でも、その時のあたしは、千佳の心配をするどころか、いい気味だって思っていた。
「テメーら、あたしに何か文句あるかー!?
あー!?」
あたしはクラスのみんなの視線に耐えきれず逆上して叫び、全員を鋭い眼光で睨みつけた。
『…………』
誰もあたしに意見する奴はいなかった。
その日以来、あたしは千佳を目の敵にしていた。
その後、あたしはクラスカーストのトップになり、あたしのことを悪く言う奴はいなくなった。
でも、そのことと引き換えに誰もあたしの前で笑顔を見せなくなった。
ある日、クラスメートが陰であたしの悪口を言っているのを偶然耳にした。
「ねえねえ、貧乏神って体臭臭くない?」
「あ、わかるー!特に頭。あのフケ頭、ホント勘弁して欲しいよねー!」
「こらこら、貧乏神に聞かれたら俺たちまで殴られっぞ!」
その日を境に、あたしは誰も信じられなくなった。でも、それはある体育の時間のこと。
あたしは生理ということにして、
その日の体育の授業は見学をさせてもらっていた。
もう誰の顔も見たくなくて、外野で体操座りをし、頭を膝の下に深く埋めて、心の中で自分に何度も言い聞かせた。
いいさあたしは誰かに助けてもらわなくても、自分一人で生きていけから。
『ねえ?』
『えっ!?』
突然、背後から誰かに優しく肩を叩かれた。
こんな孤独なあたしに声をかけてくれたのは、まるで天使のような存在だった。
それは、みどりちゃんだった。
※今回の要約※
貧しく虐待された幼少期の空は、学級委員に暴力を振るい孤立するが、体育の時間に優しい女の子みどりに声をかけられる。
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