②アルビノの少女イヴ 〜これは、人がまだ猿だった太古の昔。僕に『愛』を教えてくれた少女の物語〜

alaya-vijnana 6次元の潜在意識

◇ねえ?

君はさ……、

文明社会が人を幸せにしてきたと思う?◇


『誰!?』


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「なんて綺麗なんだ……。信じられない」


僕はまるで、まだ誰も知らない秘境で、

無数に色とりどりの宝石が散らばる果てしない真っ暗な洞窟を見つけたかのように興奮していた。


そして僕は、顎をしっかり上げないと見えないくらい高い所にあるほんの少しの範囲でほんの一瞬流れた刹那の奇跡に思わず右手をかざした……。


僕の手はもう人間のそれでは無かった。

手の甲の部分まで毛むくじゃらで、まるでオラウータンのようだった。

そして、目線の高さが地面に対して小学校低学年の頃のようにかなり低くなっていたので、しばらく歩くことすら難しかった。

僕は、恐る恐る下を向き自分の身体を確認してみた……。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ヒトがかつて、大自然に対してまだか弱き動物に過ぎなかった太古の時代、

星空を見上げることが大好きなしょう年がいた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『うっっ、

うおおおぇええええええ~っつ!

びちゃびちゃびちゃびちゃ、

ぴちゃっ、ぴちゃっ』

僕は、最初の食事を全部吐いて一口も食べられなかった。

もはやそれは、食べ物と呼べる生易しいモノでは無かったのだから……。


火を通していない草食動物の生肉だった。

そして、その肉は腐っていた。

きっと、サーベルタイガーなど、肉食獣の食べ残しを

もってきたに違い無かった。

ものすごく臭くて、想像を絶する程不味かった。

目を瞑り一口で呑み込もうとはしたけど、

体の防御本能が働き、それは結局、強烈な吐き気と一緒に吐き出された。


 僕が試行錯誤の結果やっとのことで火をおこし、

焼いて食べようとその肉に火を付けたまさにその瞬間だった。


背後からボスがやってきて、そして、

僕を殴った。



「え……?」


ボスの意図は正解にはわからなかったが、その身振り手振りから

火は神聖なものなので、勝手に使わないようにと注意されたんだと思う。



そこは食べるモノがとにかく少なかった。

そこは時間だけがとにかく多かった。

お日さまが昇り、沈むまでの時間が異常に長かった。

僕は、ここが地球より重量が重く、時間の進みかたが遅い巨大惑星だと信じるしか無かった。


僕は結局何日も肉を食べず、

肉の代わりにサバンナにはえる草を食べ飢えをしのいだ。

僕の身体にはタンパク質が全く足りず、ガリガリにやつれ、

立ち上がることさえ辛くしゃがみあぐらをかいていた。


僕の意識は空腹のあまりもうろうとしていて、

焦点の定まらないその目は、ずっとただ一点を見つめていた。


『キュイン!キュイン!』


目の前には子供のジャッカルが三匹いて、その内二匹が白い一匹に一方的に噛みついていた。


噛みつかれた一匹は体中が血だらけになっていた。


暫くして、別の大人のジャッカルが近くを通りかかった。

二匹はそれに気付くと、血だらけの白い一匹を置いて

そのジャッカルの元に向かっていき、

三匹のジャッカルは、血だらけの白い一匹を置いて、

なに食わぬ様子で立ち去っていった。


『キュイ~ン!』

その血だらけの白いジャッカルは僕に気が付いたみたいで、

僕のほうを振り向いた。


しっぽと片耳が噛み切られていた。

「キミは自分が惨めだと気付いていないのか?」


あろうことか、その白いジャッカルは僕に元気になついてきたんだ。


僕は、そのアルビノと差別するイデオロギーが太古から当然のように許されてきたことが

理解できず、

どうしようもない気持ちだった。



僕はそれからも肉を拒み続け、とうとうあぐらをかいた姿勢を維持することすら出来なくなり、前に倒れた。


僕は、もう姿勢さえもどうでもいいなとそのとき感じた。



 そして暫くすると、何かを手に持った一人の白い女の子がどこからか僕の方へ近付いてきた。




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※アルビノの少女イヴは、

久石譲さんの『優しさの芽生え』という曲から想像を膨らませて書いた作品です。


※あとがきコラム

「人類最古の足跡〜遠い宇宙で起きた超新星爆発」


約800万年前、遠い宇宙のどこかで起きた超新星爆発によって地球に大量の宇宙線が降り注いだ。

地球の海底に存在する鉄鉱床にその痕跡が残されている。

そして、宇宙線は260万年前にピークを迎えた。


米カンザス大学 物理天文学者エイドリアン・メロット氏は、その頃降り注いだ宇宙線が地球の環境に大きな影響を与えたと考えている。

メロット氏は、大気下層で起きたイオン化現象によって地上への落雷が増え、世界規模で山火事が多発した。

このような過程でアフリカの多くの森林地帯がサバンナへと変化していったという。

実際、この時期の地層では世界的に炭素量の増加が検出されており、火災の痕跡だと考えられている。

このような環境の激変により、木の上で暮らしていた類人猿たちは草原に降りることを余儀なくされた。

それまでは多くの肉食動物達に狙われる事なく木から木へと安全に移動することができていた。

しかし、森林地帯を失いサバンナの環境で生きることを強いられた類人猿たち。

彼ら類人猿達にはサバンナで生きるうえである進化が起こった。

エネルギー効率よく長距離の移動が可能で、高い位置から周囲を見回して敵影を確認できるという能力。


直立二足歩行である。

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