Aufgeschlossen Reduktionismus 科学者という名の思想家
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回想〜
「郵便で~す!」
「わしは腰が痛くてのう。真智、すまんが、代りに郵便をここに持ってきてくれんか?」
「いいよ、わかった」
そう言ってあたしは玄関のポストに行くと
入っていた一通の手紙をおじいちゃんの元に運ぶ。
「あれ? おじいちゃん、この手紙、差出人が書いて無いよ」
「真智、ありがとう。
おじいちゃんこの後、書斎でゆっくり読むからね。
真智はこれで友達と遊んでおいで」
「やったねっ!
おじいちゃんにお小遣い貰っちゃったぁ♪
ブイ~♪
おじいちゃん、ありがとう♪」
あたしの頭の中はもらったお小遣いで何を買おうかだけでいっぱいだった。
あたしが外に出かけようと玄関で靴をはこうとしたとき……、
あたしなぜかその手紙の内容が気になって、
おじいちゃんの手紙をこっそり読ませてもらうおうと思った。
あたしがおじいちゃんの部屋に戻った時、
おじいちゃんはまださっきの場所にいたままだった。
そしておじいちゃんはその手紙を既に読み終え、封を開けたままテーブルに広げていた。
あたしの心の中に突然、天使の真智と悪魔の真智が出てきて少しの間良心の呵責と格闘してたんだけど、あたしの場合はどうやら素手で下着姿の天使の真智より伝説の槍ゲイボルクを持って完全武装したチート級悪魔の真智のほうが圧倒的に強いらしい。
その瞬間、あたしの中で文字通り魔がさした。
「偽善者死ね!
グサー!!」
「ギャ〜!!」
ポン!
消えた。
「おじいちゃん、勝手に読んじゃうよ、
ごめんっ!」
そう言ってあたしはその手紙を手にとり中身を読んでみると、そこにはたった一言だけこう書かれていた。
『税金泥棒』と……。
「真智、そこにいたんだね」
あたしは子供ながらにも、ここで手紙のコトを直接聞かないほうがいいっていう直感が働いた。
だからあえて違う話題をふることにした。
「ねえ、おじいちゃんはどうして科学者になったの?」
「真智はそれを知りたいんだね。わかった。
それはね……」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
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「真智~、いつまで寝てんの! 早く起きなさい!」
「叔母さん、ごめんなさい」
あれは死んだおじいちゃんがまだ生きていた頃の夢……?
「真智? ちょっと聞いてる?真智?」
「はっはい! 」
「確かに今日は学校休みだろうけど、
ちょっとだらけすぎよ!」
「ごめんなさい」
「ところで真智。この回覧板お隣さんの永山さんの家まで届けておくれ?」
「博士のところね? 着替えたら行く~」
「忘れず持って行くのよ~」
あたしは叔母さんに催促されるのは嫌だったから、
着替えた後直ぐにお隣の博士の家に行った。
「博士~、回覧板で~す!」
「真智ちゃんか~。 わざわざありがとうね」
あたしが博士と呼んでいるのは年の頃50代くらの中年太りのおじさんである。
何故か○ャップリンみたいに鼻の下部分の狭い範囲だけに綺麗に整えた髭を生やしたおじさんは本名を永山さんっていう科学者である。
原子の構造を早くから発見してて、周りからはノーベル賞間違い無しって言われてたのに惜しくもノーベル賞を逃しちゃった可哀想な人。
最近はおじさんの研究に感心を持つ人も随分減ってしまったらしい。
それに、最近家族に出ていかれたって噂もある。
おじさん随分苦労してそうだなぁ。
「あれ、博士は今何を書いているんですか?」
「あ、これね。 これは今日の夕方、僕が駅前で一般市民を対象にした科学講演会をするからその時話す内容を考えてたんだ」
「博士すごいじゃないですか? あたしや友達も聞きに行っても大丈夫ですか?」
「いいけど、会場は人はほとんど集まらないと思うよ。
それでも来るの?」
「もちろん行きます!」
こうして、あたしは愛理栖、イワン、四葉ちゃん、谷先生を誘って博士の講演を聞きに行くことにした。
あたし達は講演会の始まる時間に少し遅れてしまい、みんな揃って会場に着いた時にはもう講演は始まっていた。
ちょうど博士が数少ない観衆からの質問にしどろもどろしていたときだった。
「うちらはな、貧乏で今日を生きていくことだけでやっとなんですわ。
それなのに、うちらがやっとの思いで納めている貴重な税金を、
直接うちらの暮らしを良くすることに使わんで、
どうして科学の研究とかにたくさん使うんですかい?
納得できませんな!」
「申し訳ありません。
あなた方のご意見はごもっともです。
ですが、私達科学者も長い目で見た時に
皆さんが豊かに暮らせるように切に願って動いているのです。
その点どうかご理解ください」
「納得できんよ!」
「そうだそうだ!」
「税金泥棒!」
あたしは、観衆に向け深々と頭を下げる博士の姿が無性に悔しかった。
そして、観衆のだれかが言った税金泥棒という言葉で、昨日の夢に出てきた昔科学者だったおじいちゃんの言葉を思い出した。
あたしは、込み上げる気持ちに居ても立ってもいられなかった。
だから、真っ直ぐステージの前まで行って博士のマイクを奪い観衆に向け言ってやった。
「皆さんは、人類の歴史において、神や宗教が社会や文化に与えた影響を知っていますか?古代から中世にかけて、多くの文明や国家は、神の存在や意志を信じて、様々な行動や規則を定めてきました。例えば、
- 豊作や繁栄を祈るために、人や動物を生け贄として捧げる儀式が行われました 。
- 神や神に選ばれたとされる王や貴族などの一握りの強者が、自分たちの権力や利益を守るために、弱者や異端者を差別や迫害したり、殺害したりしました 。
- 女性に対する魔女裁判や科学者に対する宗教裁判が行われました 。これらの裁判では、理性や証拠ではなく、偏見や恐怖に基づいて、無実の人々が罪に問われたり、拷問されたり、処刑されたりしました。
これらの事例は、人類が本当の仕組みを深く知らなかったために、神や宗教に依存して生きてきたことを示しています。しかし、時代が進むにつれて、神や宗教によって支配されてきた社会や文化に疑問を感じる人が現れてきました。彼らは、世の中でそれまで常識とされてきた理解し難い仕組みに疑問を持ち、自分たちの目で見て、手で触れて、頭で考えて、真実を探ろうとしました。彼らは科学という方法論を発展させていきました。
私達科学者は、科学という方法論からこの永遠のテーマに挑戦しているのです。私達は、この宇宙の真実を知ることが、私達みんなの幸せに繋がると信じています。なぜならば、科学は私達の生活に多くの恩恵をもたらしてくれるからです。例えば、
- 科学は私達の健康や寿命を向上させてくれます。医学や薬学などの分野では、病気や怪我の原因や治療法を発見したり、予防したりすることができます 。また、栄養学や衛生学などの分野では、健康的な食事や生活習慣を提案したり、感染症や汚染物質から身を守ることができます 。
- 科学は私達の交流や情報共有を促進させてくれます。通信技術やコンピューター科学などの分野では、電話やインターネットなどのツールを開発したり、改良したりすることができます 。これらのツールは私達が遠く離れた人々とも話したり、知識や意見を交換したりすることを可能にします。
- 科学は私達の教育や芸術を豊かにしてくれます。教育学や心理学などの分野では、学習や記憶の仕組みや効果的な方法を研究したり、教育の質や公平性を向上させたりすることができます 。また、音楽や美術などの分野では、音や色の性質や感覚の仕組みを理解したり、創造的な作品を制作したりすることができます 。
以上のように、科学は私達の生活に様々な面で役立っています。しかし、科学は万能ではありません。科学は私達が作り出したものであり、私達が使うものです。そのため、科学は私達の倫理や責任にもとづいて行われなければなりません。科学は悪用されたり、乱用されたりする可能性もあります。例えば、
- 科学は私達の環境や生物多様性を破壊してしまうことがあります。化学や工学などの分野では、有害な物質や兵器を製造したり、使用したりすることができます 。これらの物質や兵器は私達の住む地球やその上の生命に深刻な影響を与えることがあります。
- 科学は私達の人権や個性を侵害してしまうことがあります。生物学や遺伝学などの分野では、人間や動物の遺伝子を操作したり、改造したりすることができます 。これらの操作や改造は私達の自然な姿や特徴を変えたり、失わせたりすることがあります。
- 科学は私達の信念や価値観を揺るがしてしまうことがあります。哲学や宗教などの分野では、人間や宇宙の起源や目的について考察したり、議論したりすることができます 。これらの考察や議論は私達が持っている信念や価値観に反するかもしれません。
以上のように、科学は私達の生活に様々な面で影響を与えています。そのため、私達は科学に対して関心を持ち、理解しようと努めなければなりません。また、私達は科学に対して批判的に考え、問題点を指摘しようと努めなければなりません。そして、私達は科学に対して貢献しようと努めなければなりません。
私達科学者は、このような姿勢を市民に求めています。私達は市民に科学への理解や関心や支持をお願いしています。そして、私達は市民に科学への参加や協力や責任をお願いしています。科学の研究にはたくさんの税金を使ってしまいますが、それは市民から頂いた信頼と期待に応えるためです。それは市民
それは市民と科学者が共に科学の発展と応用に責任を持ち、協力し合うためです。それは市民と科学者が共に科学の恩恵と影響に対処し、対話し合うためです。それは市民と科学者が共に科学の真実と美しさに感動し、楽しむためです。
・・・・・・・・・・・・
あたしはただこの場の人達に昨日の夢で思い出したおじいちゃんの言葉を伝えたかっただけだったんだけど……、
あたしが話をした後の会場はしんと静まり返っていた。
頭に血が昇った状態から覚め我に返ったあたしは今のこの状況に泣きそうになった。
『グスン』
「よく行った~!真智~!」
『パチパチパチパチ!』
「え?
谷先生……」
谷先生の助け船に救われて、あたしはなんとか正気を保つことができた。
※今回の要約※
真智はおじいちゃんの謎の手紙を読んで疑問を持つ。科学者への批判的な内容に悩み、講演会で博士を助けるために感情的なスピーチを行う。谷先生に支えられながら、真智は自分の気持ちを伝える。
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