第3話 翻訳魔術
「તે આપ્યો અમને આવો સ્વાગત છે, જેમ બહાદુર」
目の前にいる沢山の影、ここでは「魔法使い」ということにするが、その「魔法使い」の中から、一人の老人が現れて何やら聞き覚えのない言語を発した。
「તમે શબ્દો જાણો છો」
何やら威厳のありそうな老人だった。
背は大体俺の肩くらいで小さいが、顔には沢山の皺が刻まれ、その老人が言葉らしきものを発している間「魔法使い」達は一言も発することなく頭を垂れていた。
残念ながら俺にはその老人が何を言っているのかはさっぱりわからない。
「અથવા તો ન સમજી રહી છે, પરંતુ તે એક મોટી સમસ્યા એ છે કે હું હોય છે, પરંતુ આ હું શું વિશે છે. શું લીડ્સ」
老人は俺が言語を理解していないことに気づいたらしく、隣にいた大きな「魔法使い」に向かって何やら話しかけている。
「ક્યાં હજુ પણ જાદુ વાપરો તો」
老人が言う。
大きな「魔法使い」になにか尋ねているように見える。
「નહીં તો કરશે, હું કરીશ」
大きな「魔法使い」はそれに答えた。
二人の様子を見るに、何かが二人の間で決定されたらしい。
すると、大きな「魔法使い」は両手を合わせ、目を瞑ってなにやら集中し始めた。
同時に、俺の周囲に青い雪のようなものがチラチラと降り始める。
そして周囲一帯に青い雪が降り積もり、俺の足がその青い雪で埋まったくらいで、大きな「魔法使い」は俺に向かって一言言い放った。
「અનુવાદ!!!!」
突然、耳鳴りが始まり、喉にじんわりと温かい感触が広がった後、焼けるように熱くなった。
あまりの痛みに俺は大声を出してしまいたくなったが、なぜか声が出ない。
「------------ッッッッッッ」
俺は喉を手で押さえつけ、痛みに全力で抵抗した。
そしてふと喉の痛みが薄れた、と感じた瞬間、俺の意識は闇に飲まれていった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「-----大丈夫ですか!聞こえておりますか!?」
頰に痛みが走った、と認識すると同時に俺の意識は覚醒した。
ぼんやりとした視界に人の輪郭らしきものが映る。
さっきの老人の顔らしかった。
「おお、よ、よかった、お目覚めになりましたかな?ついでに私の言葉はわかりますかな?わ、わかるのならどこか体に異常はございませんかな?翻訳魔法は体に負担がかかりますが、絶対に完治する類の負担なのでまったく心配はございませんぞ!」
「‥‥‥‥ぅ、ぅるs‥‥‥‥ぃ」
老人の剣幕に「うるさい」と言おうとするが、俺の口はうまく動かない。
考えてみれば引きこもり始めて数ヶ月、人と全く話していなかった事を思い出す。
コンビニに行く時も深夜だったし、店員とは目も合わせずに買い物していた。
どうやら老人の方は威厳を持った見た目に反して、意外にも落ち着いていないようだった。
人が慌てている姿を見て落ち着くということをたまに聞くが、今はまさにその通りの状況で、老人の慌て様を見ていると何故だか俺も落ち着いてきた。
「ぅ………みぁせん、ぅあくしゃぇぇあくぇ………」
「おいユルト!翻訳魔法は成功しておるのか!?」
「は、はいお師様。確かに成功したはずです………」
そういえば気絶する前と違って老人達の言葉が理解できる。
話を聞く限り、あの大きな「魔法使い」はユルトという名前で、そのユルトが俺に言葉がわかるようになる『翻訳魔法』をかけた、というところらしい。
それならまず俺の方から「伝わってますよ」という意思を伝えないと話が進まないだろう。
「ぁ、ぁいじょうぶ、えす、ぅたわってあす」
「……………伝わっておるのか?申し訳ありませんが、今一度言っていただけますかな?」
どうやらこちらが何かを伝えようとしていることは老人と「魔法使い」達に伝わったらしい。
全員が動くのを止め、俺の言葉を聴き取ることに注力しようとしていた。
俺は次ははっきりと話せるように、口の中を上下に動かし、それから何回か舌をぐるぐると回した後、ゆっくりと丁寧に言った。
「ぁ、だい、じょうぶ、です、つたわって、あす」
「おお、これは失礼致しました!はい、確かに。聞こえていらっしゃるみたいですな」
全く流暢には喋れなかったが、とにかく伝わった事に俺は安堵した。
「お師様、恐らく翻訳魔法が喉や口に一時的に負担をかけている為、滑舌が安定していないものと思われます」
「あいわかった。下がれユルト」
「はっ!」
何やら都合の良い解釈をしてくれたようだ。
さて、意思の疎通はできたのでできれば本題へ入りたいところだが、何分口がうまくまわらない。
どうしたものかと俺が悩んでいると、老人が俺の気持ちを察したのかはわからないが、口を開いてくれた。
「勇者様はまだうまくお話になれないみたいですな。それなら私がとりあえずの状況説明を致します。一方的ですみませんが聞いてくだされ。」
「ぁ………あい」
俺がまわらない口で答えると、老人は改まって俺の目の前に跪いて言った。
「ようこそいらっしゃいました勇者様、ここは賢王国家セミラミス。我々はあなた様を歓迎致します」
そして老人が言った言葉は、大方俺の予想通りの言葉だった。
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