全てを吐き出して
それから数日、ケルシーは益々やつれていった。
目のクマも酷くなり、食欲は落ち込み、今も布団を頭まで被ったまま。
手術痕も大分きっちり治り、退院間近だというのに。
「ケルシー、大丈夫かい?」
僕が声をかければ、ケルシーは布団から顔を出した。
「…どうしたら良いの」
ポツリと呟かれた言葉。
女性として一番大事で大切な場所を、病気で全て切除した。
2度と、妊娠することも…産むことも出来なくなった。
友達は皆、それが出来る。
それに対しての羨望と嫉妬でケルシーは壊れていった。
「…話したほうが、すっきりするんじゃないかな」
それしか、言えなかった。
「…ジェイソンが話してよ、代わりに…」
「…君が皆に話すことに意味があるんだよ。」
そんな事を話していた時だった。
皆がケルシーのお見舞いに現れた。
僕が少し遅く来て欲しいと頼んだから、少し遅く来てくれたみたいだ。
「…ケルシー、大丈夫?」
トロイが静かに尋ねれば、ケルシーは頷いた。
「大丈夫なんかじゃないじゃない!」
シャーペイが叫んだ。
「目はクマが凄いし、最近益々痩せて…!」
言い募るシャーペイを、ジークが抑えた。
ケルシーが怯えていたからだ。
「ジーク!」
「…それじゃ逆効果だよ、シャーペイ」
ジークは静かにシャーペイをたしなめていた。
ケルシーは胸を抑え、大きく息を吐く。
そして、静かに話し出した。
「…私、話したいことがあるの」
皆が一斉にケルシーを見つめる。
「…私、手術で…子宮、全摘…した、の」
そう話すと、皆が驚愕し顔を見合わせた。
そんな中、チャドが尋ねる。
「なぁテイラー、全摘ってなんだ?」
テイラーは動揺していた表情から一気に呆れ顔になりながら、説明した。
「全摘ってのはね、全部を摘出…つまり、全部取っちゃうってこと」
「だから、子宮の全摘ってのはね、女の子の下腹部…お腹の下にある、赤ちゃん産むための場所を全部取っちゃうってことなの」
テイラーがしっかり説明すれば、チャドはなんとか理解出来たのか、納得した顔をしていた。
「…だから、私は…もう…」
それ以降は言葉が続かなかった。
ケルシーが泣き出してしまったから。
ケルシーは僕に抱きつきながら、嗚咽するほど泣きじゃくった。
「…続きの説明、僕が君の代わりにするかい?」
そう尋ねれば、ケルシーは小さく頷いた。
そして、僕は皆に向き直った。
「…ケルシーは、もう妊娠することも出来ないし、子供も産めない」
「更に言えば、女の子の日も…もう、2度と来ない」
「…だから、ケルシーは皆が羨ましかったし、それを妬んだんだ」
「自分の意思とは裏腹に、ね」
僕がそう告げれば、ガブリエラも、テイラーも、マーサも、シャーペイも…一様に泣いていた。
「っ、ケルシー、ごめ…気づいて、あげれなくて、ごめん…!」
シャーペイが泣き叫んだ。
ジークはそれを、ただ見つめていた。
ケルシーは僕の身体に寄りかかりながら、泣きじゃくるシャーペイを抱き締めた。
抱き合いながら、2人は泣いていた。
ガブリエラも、テイラーも、マーサも、代わる代わる謝っては抱き合い、泣いて。
僕含む男性陣がつられ泣きしたりして。
全てを皆に吐き出したケルシーは、どこかすっきりした表情をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます