大きなショック


全てを仲間に伝える事なく数日経ち、ケルシーの術後の治りも良好だった。


ケルシーが皆んなと楽しげに話す姿を見ると、こちらも笑ってしまう。


でも、伝えなきゃいけない。


ケルシーの身に起きたことと、辛い現実を。


楽しい時間はあっと言う間、皆が帰る時間になり、病室を後にする。


後数日すれば、ケルシーも病室を後にする事になる。


皆が帰ったのを見届け、ドアを閉めた。


「あれ?ジェイソンは帰らないの?」


僕が病室に残ったのが心底不思議なようだ。


…まあ、そりゃ当たり前だけど。


「…うん、今日は色々話そうかと思ってね」


僕が椅子に座り、笑って話せばケルシーも笑って。


「…ケルシーの体の事とかね」


そう言葉を紡げば、ケルシーは一変して怪訝そうな顔をした。


「ケルシー、手術したのは知ってるね?」


僕がそう尋ねれば、ケルシーは頷いた。


「その手術の時、ケルシーは…その、子宮を…全部取ったんだ」


僕が告げれば、ケルシーは完全に動揺していた。


「…嘘、よ…」


ポツリと呟かれた言葉。


直後に、ケルシーの目から涙が溢れた。


僕はケルシーを抱き締めた。


ケルシーは僕の服を握り締め、泣いた。


大声をあげて、わんわん泣いた。


しばらくすると、ケルシーは落ち着いたのか、ベッドに座りなおした。


「…それしか、無かったんだ」


「…君の子宮に出来た筋腫はかなり肥大化していたから」


ケルシーはただただ、俯いていた。


「…普通なら、症状が出るけど…ケルシーは痛みとかあった?」


僕が尋ねれば、ケルシーは俯いたまま頷いた。


「どんな症状だった?」


そうな尋ねると、ケルシーは少し顔をあげた。


「…違和感、はあったの…それと、少しの痛み…後下腹部に少し重み…でも、女の子の日も同じ症状が出るから…そうだとばかり…」


ケルシーはまた泣きそうな顔になって。


「…そっか…ありがとう、教えてくれて」


僕はケルシーの頭を撫でた。


すると、ケルシーはびっくりした顔で僕を見た。


「…子宮、取ったから…これからは、女の子の日は来ない」


「…そして、妊娠出来ないし子供は産めない」


「…女の子としては…凄く辛い現実、だと思う」


「けど、受け入れるしか…ないんだよ」


僕がそう告げれば、ケルシーはまた泣き出して。


僕は抱き締めてあげる事しか出来なかった。


しばらく抱き締めていたら、面会終わりの時間になってしまい、ナースさんにやんわり叱られて退出した。





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