非情の選択
病院での手術は3時間かかって、やっと終わった。
無事に成功し、医師も大丈夫だと話してくれた。
その後病室に行けば、麻酔が効いてぐっすりと寝ているケルシー。
テイラーとマーサが寝顔を見て凄く笑顔になっていた。
医師が病室に来て、ケルシーの事で話をしたいと言われた。
誰が診察室に行くかで軽く揉めたけど、ジークの発言で彼氏だからと僕が行くことになった。
診察室に入り、椅子に腰掛ける。
それを見つつ、医師が話を切り出した。
ケルシーの下腹部…子宮に、大きな塊があり、その塊はかなり肥大化していたこと。
ここまで肥大化していたら痛みや不正出血、貧血などの症状がある筈だということ。
そして…
子宮を全摘する以外に、救う方法が無かった事。
そこまで話すと、医師は一息置いた。
まるで気を紛らわすように「病気の方は、もう大丈夫」と言って笑った。
そして、医師の表情が一変し、また話し出す。
ケルシーは子宮を全摘した為、もう妊娠する事は叶わず、自分の子供を産めない、と。
それは、女性としてこれ以上無いほどに…辛い現実だった。
話しを聞き終え、ぼんやりと診察室を出る。
横の椅子に座り、頭を抱えた。
彼女にどう切り出すか、説明するか。
皆に、全てを伝えるべきか。
考えても埒があかなかった。
ぼんやりしながら皆の元へ戻る。
「ケルシーはもう大丈夫だって」
それ以外、説明出来なかった。
きっと、ケルシーは皆の表情や気を使ってしまう言動で気づいてしまう。
今は、今だけは僕の心に秘めて置いて、彼女に説明してから皆に伝えよう。
ケルシーの完治に皆が大騒ぎしてよろこぶ姿を見ながら、そう考えた。
そして、僕もその騒ぎに混じって一先ず、ケルシーが完治した事を喜んだ。
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