振り返りのようなもの

私はひろしである。

現在は妹であるゆいなりをしているが、中身は男である。

日々、女らしく振る舞っているからか、徐々に染まり始めている。


歩くときは小股になるし、座っても足を閉じるようになった。

一人称だって、普通に「わたし」になっている。


できることなら、今すぐ戻りたい。しかし、その方法を見つけられずにいる。



あの日、私たちは入れ替わった。

何かきっかけがあったわけじゃない。理不尽なほど、唐突で突然だった。


正体を誤魔化す日々が続く中で、使者と名乗る人ならぬ存在と出会った。


その使者から聞かされた話は正直信じたくない。

でも、入れ替わりは事実として起きているし、その話がどうも絵空事のようには思えない自分も居る。


博か結のどちらかが命の危機に瀕していて、その人の心残りが入れ替りを招いている。

その心残りが消える時、二人は元に戻れるが、同時にどちらかが命を落とす。


自分か実のきょうだいが死ぬかもしれないと分かって、そのボタンを自ら押さなければならないというのは残酷なことだ。


解決させなければ、二人とも死ぬと脅されている手前、このまま放置というわけにもいかない。


彼らは天使を名乗っていて、実際に人ならざる能力を見せつけられている。

むしろ、悪魔とも言える彼らの言動に、なんの恨みがあって、こんな運命を背負わせるのかと憤りさえ覚えるが、どのみち私たちはこの運命に向き合わなければならない。


本腰を入れることで、少しずつパズルのピースは集まりつつあるが、未だに全容は分からずにいる。


どうやら、子供の頃の約束にその糸口はありそうだが、互いの記憶や認識に食い違いもあり、曖昧な部分も少なくない。

真相にはたどり着けていないが、そこに何かがありそうだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る