2ー14


もし、志望校に行けないとすると、どうするか。

当の本人はどこでもいいと言い張る。


とりあえず、一般的な学校で、かつ、敷居の高くないところを先生と相談しながら選んだ。

いわゆる、滑り止めだ。

妥当な選択だとは思う。でも、本当にこれでいいのだろうか?という不安が込み上げる。


「それはどうしようもないことだから」という彼女の言葉を、自分に言い聞かせて勉強に勤しむのだった。

やることはやった。あとは彼女の能力次第だ。


当日の朝、母に背中を押されながら家を出る。

もちろん、結からも応援のメッセージが届いた。


今回は復習に力を入れ、苦手科目を中心に対策をしてきた。

また、学校の下調べをして、なるべく場の雰囲気に呑まれないよう意識した。

その成果か、緊張することなく、自然体で試験に取り組めた。


手応えはあった。きっと大丈夫だろう。

でも、本命ではない。その複雑な心境だ。

彼女からは「大丈夫だよ」とメッセージが届いた。


色々な意味で落ち着かない日々を過ごした。自分の時には感じなかった感情だった。

数日後、先に届いたのは志望校の通知だった。


実際に届くとやはり緊張するものであった。いや、もしかしたら、自分の合否発表よりも緊張したかもしれない。


二年連続の合否通知。見覚えのある封筒をきれいに開封し、書類を取り出す。

その手は震えている。

横では母が固唾を飲んで見守っている。


三つ折にされた紙をゆっくりと開くと、「不合格」の文字が飛び込んできた。

手応えからして覚悟はしていた。しかし、実際にそれを知らされると結構ショックであった。

母は必死に励ましてくれたが、きっと彼女は残念に思うだろう。


自室に帰り、結にメッセージを送る。

「ごめん、試験落ちた」

そんな簡略なメッセージを送ることしかできない自分が悔しかった。


「諦めてたし、大丈夫だよ。受けてくれてありがとう」という絵文字付きのメッセージに少しだけ救われた気がした。


そのまた数日後に滑り止めで受けた学校の通知が届く。

結果は予想通り合格。

家族も彼女も喜んでくれた。


彼女からは「おめでとう!これで私も晴れて高校生だね!新天地でも頑張って!」というメッセージが届く。

親からも似たような言葉を掛けられ、一様に安堵の表情を浮かべた。


親友であり、唯一入れ替わりを知る叶にも連絡してみる。

彼女は名門大学の付属高校を目指しており、その勉強のため、最近は疎遠になっていたのだ。


「それはよかったね。私ももうひと頑張りするから応援してね。差し入れ待ってます」と冗談混じりのメッセージが送られてくる。


「それより、例の件はどう?何か掴めた?」

と立て続けに送られてくる。

何も進展がない。受験に集中していたとはいえ、やはり手がかりの一つくらいは見つけたいところだ。

「何も協力してあげられないけど、何かあれば相談に乗るから遠慮なく言ってね」と気遣ってくれる。その気持ちだけで十分だった。


本当の意味で喜べる結果ではなかった。これが心残りになってしまいそうなほどに落ち込んだ。

唯一の救いは、何の変化もなく日常が続いていることだ。

それは、志望校に行くということが心残りではなかったということを意味する。


とはいえ、これで振り出しに戻った。


そろそろ、解決の糸口を見つけたい。できれば、進学前に解決はできなくても、何らかの進展はさせたかった。

このまま入学を迎え、新しい環境に慣れてしまっては、彼女が通いづらいだろうと思ったのだ。


恐怖心が無い訳ではない。解決すれば、どちらかが死ぬかもしれない。

それでも、二人共に何かがあっては元も子もない。


どんなに考えても思い当たる節がないため、思い切って思い出の場所を巡ってみようかと思った。

学校や病院、美容室に食堂など、一度でも訪れたことがある場所を本人に聞きながらリストアップした。正直、手がかりになるとは思えない場所ばかりだが、どこで何を思い、何を感じるかは人それぞれだ。

思い残すほどの出来事とはいえ、些細なことがきっかけになっていることもあるだろう。


こうして、一つ一つ彼女の足跡を辿っていく日々が始まった。









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