17 虹のシリアル

 既に松の内も終わり今更感満載ですが、あけましておめでとうございます。


 新年最初のネタは何にしようかなあ…と色々迷っていましたが、やはり変わりものを食べたといった殺生?的なものは避けようと思い、今回のテーマはコレ。

『虹のシリアル』

 ちょっと明るくてシアワセセそうじゃないですか?

 新年早々、かかる虹なんてもし見られたら幸先良さそうだし。


 …うん、でもまあ、これマサキチの体験談(どっちかって言うと間抜け寄り)ですからね。ここで取り上げちゃうって時点で、ステキな話だ!なんてまとまるワケはないってトコなんですけれどもね。

 と、いうわけで行ってみましょう!おめでたそうなシリアル(コーンフレークとかそういうの)のお話です。



 コストコのようなところや、卸用のスーパーで買い物をしたことのある方はご存知かとは思いますが、大型スーパーってとにかくそれぞれの商品がワイルドかつ、大量というのがひとつの売りになってますよね。もっとも、海外の人たちにとっては当たり前の量だそうですから、どんだけ胃が大きいんだろうなあってな感じですが。

 それも若干日本人仕様っていうか、やっぱり遠慮がちなところがあるなあと思います。


 同じ英語圏でもイギリスはそうでもないのに、アメリカのスーパーって、それに輪をかけてとんでもない量のものがスタンダードになってたりするんですよね。

 少し前、某ピザ店でBuy 1 Get 1 Free(1個買ったらもう1個、それより安いものタダにするよ)で大混乱になったってニュースがありましたが、1個買ってもうひとつタダなんて当たり前。

 1ガロンの牛乳あるいはアイスクリーム(アメリカ単位で3.7リットル)がBuy 2 Get 1 Free(2個買えば1個タダ。…って10リットルの牛乳やアイスをまとめて買っちゃうのか!?) や、味覚以前にひたすら激甘の塊!としか言えないような、冷食のカスタードパイやチェリーパイがBuy 3 Get 1 Free(3個買えば1個タダ)になっていたり。そんなパイがまあ、10ドルから15ドルくらいで手に入ってしまう。

 28センチくらいのでかいパイが、近頃のレート無視のテキトー計算でも1ホール400円程度だっていうのは…食べたことなくても、なんとなーく味は知れるって感じかと思います。


 まあマサキチは興味を惹かれたものは確実に食べてみちゃいますけどね。勿論1個買いで、上述の通りでございました。パイはそこそこなのにチェリーパイの中身はべちゃっ、だし、カスタードという名のもったりした砂糖攻め。味に関して言うならば、冷食であっても日本ならばあれほどのハズレを引くことはまずないでしょう…。

 とはいえ、4個をレジに持っていったところで、当然のことながら1日で消費するわけじゃないだろうけれど…いくら超お買い得ったって、チェリーパイなんて冷凍庫に4つ入ってたって食べられないよ…と、想像しただけでうう、胸焼けが。

(※マサキチが見た時、アップルパイは人気なのかなぜか除外されていた。売り切りたいスーパー側の思惑だったかもしれない)

 他にも袋破いたら別の袋にでも入れないとどうしようもないよね、みたいなギチギチのパッケージに入ったベーグルは10個入り、アパートメントでもオーブンあるのが当たり前な家が多いので、チキンは勿論丸ごと1羽、さらに収穫祭サンクスギビングでアメリカ人が食する七面鳥(チキンよりはるかにでかい)も、羽むしって頭はないけど丸ごとごろん、だし、じゃがいもは米の入りそうな袋で丸ごと売ってるし…で、まあとにかくボリュームが多い多い…。

 マサキチ、背は割と大きい方でよく大食いでしょうとか勘違いされるんですが、案外胃袋ちっちゃくて、暮らしたところで絶対あんなん買えないよなあといつも思ってました。


 で、そんなスーパーを覗いた時に見つけたもの。

『レインボーシリアル』

 まんま虹色がいっぱい詰まったシリアルです。

 やっぱり5キロの米なんかと同じくらいのサイズじゃないのか!?ってくらいでっかい袋に入ってる、お買い得品みたいなものも時々あれど、シリアルやコーンフレークだけは不思議と、味に飽きてしまうからか、日本とそう変わらないサイズ(それでも結構箱は大きい)のものが売ってたりします。

 箱の表にはなんかアメリケーンなイラストもあったような気がするけど、そちらは記憶になし。けど輪っかになったカラフルなシリアルが皿に盛られている絵は、下部にドーンと描かれていた(不思議と牛乳のかかっている描写はなし)。それと、テイストグッドみたいなお定まりのアオリ文句と、いろんなフレーバーが楽しめるよ、的な言葉。

 おやおや、ちょいと美味しそうっていうか、面白そうじゃないですか。


 近頃はもうそういうのも日本に入ってきてるのかもしれないけど、当時のマサキチにとって、それはとてもとても斬新かつ珍しかった。

 いろんな味の色んな色!そもそも日本にはあんまりない。マーブルチョコやM&M’s、あるいはグミのハリボくらいしか、カラフルなものって見たことなかったし。しかもその大半が海外のものだった。


 ちょっと着色料のことを考えると体に悪そうだけど、体に悪いものって不思議と美味しそうに見えるんですよね…。

 つーか、マサキチの場合は面白そう、にもかなりの比重がありますけど。

 箱の横書きを見れば、塩分だの糖類だのの品目表示。つたないマサキチの英語力を総動員して読む限りでも、いろんなフレーバーがあるよ、て書いてある割には果汁なんかの表示が皆無なのが気になったものの、これはいいものを見つけたぞ、とウキウキしながら購入し、日本に帰ってから食べるんだ!と、それは楽しみにしていました。

 旅先に荷物をさほど持っていくタイプではないので、服なんかより購入した地図(旅先でその国の言語のものを手に入れて眺めるのが好きなんですよ…)だの本だのフライヤーだのといった紙ばかりで、重いくせに割かしスカスカな鞄の中に大切に詰め、持ち帰りました。


 いよいよ今日アレを食べてみるぞ!そんな気持ちになったある日、わくわくしながら箱を開けると、おなじみの湿気りにくい?銀色のパッケージ。


 袋物を気持ちがはやった状態で開けると、マサキチは期せずしてパーティー開けになってしまうことがあるので(これは不器用というだけでなく、のりづけ面の不備と思いたい!)、ここはひとつ慎重に…とはさみを使い開封。

覗き込んで匂いを嗅いでみる。

 うーん、スナックともコーンフレークともまた違う、なんか不思議な匂い。そしてフルーツ的な匂いは一切ない。

 でもカラフルな中身は体に悪そうというよりも、なんか見てるだけでふんわりした気分になるなあ、といい気分で皿に入れてしばし観察。シリアルだし牛乳も出していたけど、まずは最初は素で食べとかんとね、てことで、これはバナナかな?と思ってなんとなく黄色いものを口に放り込んでみた。


 黄色のシリアルはバナナどころか…

 …うわ、全然好きじゃない味。

 というか、小麦とかそういうものの味すらしない甘い煎餅を食べてる感じ。


 マサキチ、関東の人間ですが、実は煎餅が苦手なんですよね…。

 柿ピーや塩味の軽いものはまあ…なんですけど、勧められてやむを得ず、でない限りまったくと言っていいほど手を出さない(どうやら九州出身の方もそういう人が多いようなので、なんで本州の人は煎餅あんなに好きなんだ!という話でしばし盛り上がることがあります)。

 これで結構なHP削られた感じだったんですが、きっとアメリカ人はバナナの味を再現するのが得意じゃなかったんだ!と(アメリカンマフィンは、他のどんな味よりもバナナやウォルナッツ系に失敗がない、という持論があったけど棚上げ)好意的に解釈し、んじゃ、わかりやすそうな赤いのを…これはきっとイチゴやラズベリーなんかの味に違いないと期し、再びぱくり。

 ……。


 じゃあ、青いのはどうだ。ソーダ…は日本じゃないからありえないけど、ブルーベリーかな?

 ……。


 紫色!これぞブルーベリーなんじゃないか!?

 ……。


 そんな淡い期待を抱いて全色食べて見たけれど。

 えーっと…


 この『変わりもん、時々フツー』に今までアップしているもの、中身なんか読んでなくても、食べ物関連(とは思わないかもしれないものもあるかも)のタイトルだけ見たって、マサキチはグルメとは程遠いことはお分かりだと思います。

 ですが…さすがにこれは…


 おいいいいいい!

 これ、マサキチがたとえどんなに味オンチだとしたって、全然違うフレーバーなんてもん、ないですよ!?

 全部均一に均等に均質なる色つきの…なんか甘いだけのスナックだってば!

 うわー、無理だよー。

 これ牛乳かけたって完食なんて無理だよー。


 箱に描かれた絵に牛乳がなかったのは、こういう理由かあ…。だって、確実に牛乳かけたって美味しくないよ。

 そんなことを考えていた時に、ふと思い出した。

 このシリアルの味…それはまさに。


 『ひなあられ』だということに。

 横書き見ても米って書いてないけど、とにかくあのひなあられの味でした。そして多分小粒の米っぽいやつじゃなくて、中にいくつか混じってる(あれだけも売ってるのかな?)大粒のやつ。

 これがねえ…煎餅苦手っていうか、ぶっちゃけ嫌いに近いマサキチにとってはひなあられ、とってもダメな味なんですよ…。

 あーあ。

 その日はもう、尚更それ以上を食べることができず、輪ゴムできっちり口を閉じて箱に収めました。


 数日経ってもやはり食べる気にはならず…なんとなくそのまま放置していましたが、結局あれ、どうしたかなあ…。

 家族の誰かが捨ててくれたか、それともマサキチ自らが捨てたのかも思い出せないけれども、おそらく哀れ虹のシリアルは夢の島(東京にあるごみ捨て場)に旅立たせることになりました…。


 食べ物を粗末にしちゃいけないと、小さい頃に散々言われ続けていたのにすみません、という気持ちでいっぱいだった、

 けれどひなあられはダメなんだよーって、そんな甘くも苦い『虹のシリアル』の思い出。


 しかし、全然シアワセでもめでたくもなかったなあ、この話。

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