14 えぐれちゃうんだ、マンボウ

 ここのところ水の中の話ばかりだったので、そろそろ食べ物ネタを書こうかなあ…と考えていましたが、ついでなのでもいっちょ水棲生物、マンボウのことを語りたいと思います。


 マンボウといえば。

 グレイの平らかな体、飼っている水族館なら必ずといっていいほどパンフレットに写真が載っている、言わずと知れたアレですね。

 大きいものでは3メートル、体重は2トン以上にもなり、水の中だからわかりにくいものの、よくよく考えれば自動車並みのダイナマイトボディ(言葉の使い方を間違っている気がしなくもないけれど)。

 でも、あのぼーっとした感じでふわふわと泳いでいるのを見てるだけで、こっちまでふんわりした気持ちになってきて癒され…るのはマサキチだけだろうか。

 まあそんなことはどうでもいいか。


 んで、一度でも水族館で目にした方ならご存知かもしれませんが、マンボウの水槽の中って大概、ネットが張ってあるんですよね。

 ただでさえ厚手でチューブ状だったりする水槽、歪んで見える挙句にさらにネットが張ってあるなんて、見にくいことこの上ない!そう思ったことはないでしょうか。マサキチはあります。大いにあります!!

 ああ~もう、ぼやーっと何も考えてなさそうにたゆたってるマンボウの姿を、もっとくっきりはっきり見たいよう!!

 いっつもそんなこと、思ってました。ネット(かなり目が細かい)があると当然薄幕がかかっている感じで、もどかしさもマックスってもんです。

 でもなあ…こうも頑なに他の魚ではやっていないことをやってるってのは、やはり何らかの意味があるに違いない。と、別に疑い深いわけでなく疑問に思ったことは、それを誰かに聞くチャンスがあるならそりゃもう遠慮なく聞いときたい(知りたい)マサキチ。聞くは一時の恥などではなく、知らないままにしちゃう方がもったいないよー!って、知りたいことにはとっても正直者です。

 自分で調べるのも勿論面白いんですけどね、何をどうやって調べたらいいんだ?っていう、とっかかりすらよくわからないものなら、その道のプロに聞いちゃった方が間違いも少ないし、他に知りたいことができたときにそっちに時間割けるじゃないですか(好奇心旺盛ではあるけれど、妙なところで合理的人間ッス)。

 なので、マンボウの餌付けショー?そんな名前だったと思うんですが、かなりあやふや…があると聞き、ええ!?すごく楽しみ!!

 その上、きっとそのタイミングなら詳しい人が説明に出てきてくれるに違いないと、しばし辺りをうろつきながらわくわくして待つこと小1時間。


 そして餌付けショーが始まりました。

 しかし、うーん…。

 あれ、ショーと言えるのかなぁ…。

 虫取り網?みたいな、あの柄つきの網が水槽の上から下ろされて、なにやら水中にほわあっとしたものが放たれる。

 透明なゼリー状の…ん?あれはクラゲか?

「マンボウはクラゲが大好物でーす」

 係員ののどかな声が聞こえる。

 なるほど、あのやわらかそうな体はクラゲを食べてできているのかあ。ふむふむ、こういう説明はいつも勉強になるな。

 けれど…。

 文字通り降ってわいたはずのごはん…ごはんが…マンボウの口にちっとも入らない。

 モハアー…と口を開けて落ちてくるクラゲを求め、あっちへフラフラそっちにフラフラと泳いでは吸い取り?に行くものの、あまりにものんびりしすぎているせいか、いつまでたっても食べられない。

 モハアー…ふよふよ、モハアー…ふよふよ。

 何度も何度も果敢?に繰り返し、ようやく食べられた時にはお客さんたち、なぜか拍手喝采。

 ああ、でもその気持ちわかるよ…

 モハアー…ふよふよ。

 向きを変えては残りのクラゲをひたすら追い続けているマンボウ。案外手に汗握るショー…かもしれない。

「はいっ、マンボウの餌付けでしたー!」

 え、まだ全然終わってないけど、切り上げちゃうんだ!?

 あまりに時間がかかるからか係員、あっさりと見せ場を終了させる。

おいおい、結構雑だな。そういうテキトーさ、嫌いじゃないけどちょっと衝撃。

 …まあいいや。マサキチとしてはあの網の謎が聞きたいだけだし。

で、尋ねてみたところ。

「マンボウってあの通りゆーっくりしてるじゃないですか。方向転換とか苦手なんですよ。水槽にぶつかっただけでも体がへこんだり、ごっそりえぐれちゃうので、その防護のためにネットを張ってるんですよ」

 うお、なんともすごい第一声。

 そうか、えぐれちゃうのか。それなら仕方ない…よな。

「はいー。ものすごくやわらかいので、ちょっとの衝撃でも傷ついちゃいます。よく船のスクリューとかにぶつかったイルカなどは保護されることもありますけど、マンボウはまず無理でしょうね。自然環境でもまだ幼態でたくさん食べられちゃうので、なかなかここまで大きくなりませんしね」

 途中の話は豆知識としては楽しいかもしれないけど、いささか余分な上に不穏だし、最後のはちょっとした誇りか自慢だろうか。

 よくわからないが、あの見にくい網の意味はわかりました。

 マンボウは3億個ほどの卵を産むのに、成体になるのはほんの数匹と聞いたことがあるけれど、そんな理由なら当然になっちゃうんだろうなあ。


 ちなみに、アカマンボウと呼ばれるものは食べたことあるよ、という釣りをする知り合いがいたので、どんな味だった!?と興味津々で勢い込んで聞いてみたところ。うまかった、の一言でちょっとがっかりした記憶が。

 一体どううまかったんだよ~。

 その後淡白であっさりしてた、となんとかさほど面白くはないけれど、かろうじて感想聞き出しましたけどね。


 ただ、間違った知識は申し訳ないのでこれ書くのに調べてみたら、アカマンボウってマンボウの仲間ではなく、深海魚のリュウグウノツカイ(きょろっとした目、長い体に触覚のような長ーい腹のひれの愛嬌あるアレです)の仲間なんだそうで。

 そうだったのかあ。

 リュウグウノツカイの仲間はあっさり系か。

 …でも、じゃあなんでマンボウなんてつけたんだろうな。

  生物の名づけって、不思議なものが多いなあ。

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