第一章「私が華族のお嬢様?」 第五話
その夜。
那佳はあの本家の
温泉宿のものかと思うくらいの広い風呂だ。
帰国する際の
黒田本家で使われている
本家の娘は最初はびくびくした感じで、那佳が話しかけても生返事しか返ってこなかったが、しばらくするとあごの辺りまでお湯に
「……………………あの」
「ん、何?」
「昼間は本当に……ごめんなさい」
娘は視線を合わせることができずに湯の表面にできた
「私、あなたが財産を
それでも
「あり得ないって、そんなの」
白い綿のような泡が、
「軍ってけっこ〜
だから那佳は軍へ入る道を選んだのである。
「私、みんなにウィッチになることを期待されてたの。あなたに発現があってからは特に」
告白する娘の声が
「そっかあ」
それはそれで
「新聞であなたの
泣きそうになった娘は、顔を湯に浸ける。
「……背中、流してあげる」
那佳は本家の娘の手を取って、湯船から引き出した。
「え、あの?」
白くて
那佳は紅海での戦いでかなり日焼けしたのが、いまだに残っている。
手首や
「ね、私たち友達になれるよね?」
那佳は本家の娘に
「……う、ううう」
本家の娘は泣き出す。
「ご、ごめん!
「
本家の娘は目を
「
「だったら、今日から友達ね!」
那佳は形式上、自分の
石鹼の泡が、
(ちゃんと、分かり合えるんだよね? 話してみれば)
那佳は窓から
だが。
窓から覗いていたのは月ではなかった。
「おじいちゃん、また!」
本家の娘が胸を
窓のところからニヤけた顔でこちらを見ていたのは、あの当主だった。
「またって!?」
那佳は訳が分からずに当主と娘の顔を見比べる。
当主は風呂を
「おじいちゃん、私がお風呂に入っているとしょっちゅう覗きに来るの!」
娘は
「の、覗き!?」
那佳が目を丸くしていると、風呂場の
「これこれ、失礼なことを言うな。
開き直った当主は、だらしなく
「こ、こ、こ、こ──」
那佳はちょっとでもいいおじいちゃんだと思った自分が情けない。
「このスケベ
那佳はサイドスローで檜の
この半年後。
黒田
* * *
興味ない。帰れ。
マリアン・E・カール
(フリーランスの雑誌記者の
* * *
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