第一章「私が華族のお嬢様?」 第四話
後ろに
「
「ははっ!」
家令がいったん下がると、
長い平三角の
実際、
黒田家の家臣、
たまたま酒席を開いていた秀吉はほろ
主命を帯びての参上なので太兵衛はこれを固辞したが、秀吉は己の意に逆らうことを許さず、
そして、見事にそれを飲み干した太兵衛が秀吉から得たのがこの
以来、黒田家の家宝として伝えられているのだ。
「老いたりとはいえ、
チャンチャンコを脱ぎ捨て
「そっか。じゃあ、おじいちゃんに勝てば帰っていいんだね」
話は簡単。
このじいさんを
「それだけではない。この
当主は親戚一同に
「
と、言いながらも那佳は
やる気満々だ。
「那佳様、これを」
公平を期すためか、家令は那佳にも扶桑刀を
「ネウロイとの戦いじゃ、使ったことないんだけどなあ」
那佳は
実戦で扶桑刀を用いたことはまだないが、
「那佳」
父が
「そっか」
那佳は握り直して、
屍を越えていけとは言われたが、本当に
「あれを
当主はハンガーのストライカーユニットを、槍の
「ハンデというやつじゃ」
「
那佳は鞘を帯に差して、ひらりとストライカーユニットに飛び乗る。
「来い、
当主が槍を構えて声を張り上げた。
「いっくよ〜!」
那佳は当主に向かって、真っ
槍の方が当然間合いが広いが、こちらはストライカーユニットを装着している。
速度に加え、
「
肩の上に背負うように構えた刀が、間合いに飛び込みつつ振り下ろされる。
だが。
「甘い!」
当主は左足を引きながら、槍の穂先で那佳の
「うっそ!」
体勢が
当主は
「とととととと!」
せっかくの晴れ着の
槍は突くものとばかり思っていたので、斬る
どうもネウロイ相手の戦いとは勝手が違う。
当主の方が
「お正月に買って貰ったばっかなのに!」
あと十年は着ようと思っていた振り袖を台無しにされ、那佳は悲鳴に近い声を上げた。
「もう
「愚かな!」
当主は勝利を確信した。
「
芸のない攻撃を
「はああああああああああっ!」
だが。
「な〜んちゃって」
那佳は間合いに入る寸前、体を折って急減速をかけた。
「うぉ!?」
当主の槍が空を切る。
「こっから本番!」
那佳は回転しながら左手で帯から鞘を
「むうっ!? 二天一流!」
当主は一間あまりも
その二代目
那佳自身は二天一流を学んだことはないが、
もっとも。
「……にてん……何、それ?」
当の那佳は、二天一流の名前さえ知らないようだった。
「
喜色満面となった当主が、目にも留まらぬ三段
「歳の割にがんばるね!」
ようやく相手の動きに慣れた那佳は、これをことごとく
父や母、それに
特に、
「
「嘗めてんのはそっち!」
一進一退の
当主はだんだん息が上がってきていた。
このまま、相手が
「そろそろ決着、つけちゃうよ!」
那佳は宣言した。
「望むところじゃっ!」
急降下をかける那佳と飛び上がる当主。
扶桑号は当主の手から
「ここまでだよ、おじいちゃん」
「養子にはなってあげる。他の親戚は気に食わないけど、おじいちゃんは悪い人じゃないみたいだから」
那佳は刀を鞘に納め、大きくひとつ息をつく。
「いや、まいった!」
当主は
「見事なり
* * *
夕方になってから、改めて養子
那佳はボロボロになった振り袖の代わりに本家の娘の着物を借り、当主と固めの
一応、
慣れぬ正座に足は
「あの〜、これって持ち帰りにできます?」
(う、これ
「
当主はそんな那佳を見て
「黒田那佳は黒田家の大切な娘である! 以後、これに異議を唱えることは許さん!」
不服のある親戚たちも、全員が頭を下げた。
と、これで話が終われば感動的だったのだが……。
「
「これから
つい先刻まで那佳を白い目で見ていた親戚たちが、下にも置かぬ持て成しぶりを見せる。
その連中の
「けど、娘って変だよね〜? おじいちゃん、うちのじっちゃんとあんまり変わんない歳でしょ〜」
固めの杯を五
「……そなた、
口をへの字にする当主。
台無しである。
「何ともいやはや……」
「あの子ったら」
消え入るように身を縮ませる父と母。
そんな二人に
「堂々となされて構わないのですよ。お
家令は優しく
「今夜は
「え、でも?」
そろそろ実家に
父と母は短く視線を交わしてから
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