33 間章



 死の運命に捕らわれた水晶屋敷の少女、レミィ・ラビラトリ。

 禁忌の果実、帝国、死の屋敷により、レミィの未来はいずれの世界でも悲劇を辿る運命にあった。

 しかし……。

 そこに彼女を救うものが現れた、数多のループを繰り返し、数多の世界を経験してきた彼は、その知識を活用し、見事、一人の少女を救い出したのだった。




 帝国歴1499年2月 

 ライトはおよそ一か月の期間を過ごした屋敷の前で、使用人達と分かれの言葉を交わしていた。


「本当にありがとうございます」

「あなたのおかげで、私達はこうして今も生きていられます」


 彼らからかけられる言葉はひたすら感謝のものばかりだ。

 最善の洗濯、最高の結果。

 ライトは数々の試練を突破し、困難を打ち破り、奇跡的な可能性の中から、その未来を掴み取ったのだ。


「あの、ライトさん」


 その中から、檸檬色の髪の少女が前に出てくる。


「ありがとうございました。色々と、助けてくださって」

「気にしないで、当然の事をしたまでだからね」


 応じるライトはにこやかに言葉を掛ける。

 そして、さも今思い立ったかのように言葉を口に出す。


「ああ、君さえ良ければ僕の力になってくれないかな。僕はこれからも旅を続けるつもりだけど、困っている人に出会うかもしれない。その時、君の手を貸してほしいんだ」

「わ、私の力ですか」

「もちろん無理にとは言わない。でも……君さえ良ければぜひ、力を貸してほしい。必要なんだ、君が……」

「ライトさんがそう言ってくださるのなら、私は……、わかりました。一緒について行きます。私もライトさんに助けてもらった分を返したいですし、困っている人がいるなら可能な限り、助けてあげたいです」

「ありがとう、君ならそう言ってくれると思ってたよ」


 レミィはライトの隣に立ち、使用人達へと分かれの言葉をかけていく。

 驚くようなそぶりを見せつつも、話の流れがそうなる事を予想していたようで、少女はあらかじめまとめてあった荷物をすぐにとって戻って来た。


 そうして……、

 世話になった屋敷を背後に、今まで共に働いてきた使用人達に見送られて、二人は新たな世界へと旅立っていった。



happy end










 ……。

 …………。


「これでいいの?」


「確かに物語は悪役以外誰も不幸にならない、善良な登場人物は皆が幸せになれる最高のエンディングにたどり着いたわ。だけど、貴方はこれでもいいの?」


「私は嫌よ。レミィにはアスウェルと一緒に幸せになってほしい」


「ここで物語を閉じる?」


「そうね、ここから先の物語は存在しないわ。この物語はどんなにひどい内容でもライトが主人公で、ヒロインはレミィという物語だもの。エンディングを見たらそこで終わり」


「でも、貴方はこの最高のエンディングが本当に良いと思ってるの?」


「もっと、用意されるべきエンディングは別にあると思わない?」


「……そう、そうよね。だったら今度はあなた自身が紡ぎ出せばいいわ」


「貴方が望むならその為に私も精一杯力を貸してあげる」


「だからもう一度力を貸して……」



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