第2話

 林を出発し目的の村まで少し歩きながら話す。

「それにしても何だったんだろう? イレイサが僕たちにやったこと」


エクスが話はじめた事でさっきまでのことを思い出したレイナは、顔を真っ赤にして怒り出す。


「そうよエクスの頬にき、キスなんて」

自分が太ももからお尻を撫でられた事や、タオなど唇にキスをされていたのだが、それは頭から抜け落ちているらしい。


「実はちょっと気持ち良くなっちゃいました」

シェインは少し顔を赤らめながら話している。


「そんなことはどうだって良い。アイツに何かされたかもしれないってことが重要だ」


そして気になることも言っていた。タオを見て一度消されたことがあるというのだ。


憤怒の気持ちを隠さないタオに、怪訝な顔をしてレイナが問いかける。


「タオ。何だかあなたいつにも増して気が立っているみたいだけど大丈夫?」


少し心配するように問いかけるレイナに、タオは我に返ったように返答を返す。


「悪いお嬢。何だか解らないがイレイサを目にした時から気持ちが落ち着かない。心配させちまってスマン」


急にしおらしくなるタオに、らしくないなと思いながらも気にしないでと声をかけて歩を進める。


すると目的の村が見えてきた。

だが村の様子がわかるほど近くに来ると、村の様子が慌ただしいことがわかった。


「何だ? 何かあったのか?」

村の入口に入ると慌ただしさの理由がハッキリした。


イレイサが村人達を消して回っていた。

小さな子供の頭を掴み、その子供は目の前で泣き叫びながら消えていく。


「やめろぉおおおおおお」

ソレを見たタオの中で何かが弾けた。


タオがイレイサに襲いかかろうとした途端、周りにヴィランが現れる。


エクス達は導きの栞を空白の書に挟んだ。


だがタオは冷静さを欠いていて、栞を使うことなく生身でイレイサに襲いかかる。


「タオっ! 導きの栞を使って!」

エクス達の声も届かなくなっているようで、空白の書に栞を挟んで戦おうとしない。


エクス達は仕方なく、タオを抜いたパーティーでヴィランに立ち向かい、タオを守りつつ戦った。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

『塗りつぶせ』

タオの中で何かが囁いている。


『黒く塗りつぶせ』

その声はだんだん大きくなる。


『消されていても黒く塗りつぶせば浮かび上がる』


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


戦闘に勝利した後、タオを何とか落ち着かせてから村民に聞き込みを行った。


存在を消されてしまったのは、目の前で消された子供も含めて二人。


もう一人は消された子供の母親だったらしい。

被害は他にも出ており、この二人以外は数名ほど、ヴィランにされてしまったらしい。


イレイサが言っていた、中途半端に消すことで起こる事とは、ヴィランにしてしまう事のようだった。


イレイサは戦闘中にこの場所を離脱し、村の外れの方に潜伏している。


エクス達が聞き込みをしている間、タオは項垂れるようにして座り込んでいた。


心配したシェインが駆け寄る。

「タオ兄大丈夫ですか? かなり憔悴してるように見えますが……」


心配するシェインに、タオは弱々しく答える。

「シェインか。心配ばかりかけてすまないな。」


痛々しいほどに打ちのめされているタオは、それでも心配をかけまいとシェインに微笑みかける。


そんなタオを元気付けようと、シェインは吉報を持ってきたと告げた。


「姉御が言っていたんですが、ヴィランにされた人々は今までと同じように治すことが出来るはずとのことです」


「そうか……それなら良かった」


安心し少しだけ元気を取り戻したタオに、シェインはさらに続ける。


「あとこれはエクスが言っていたのですが」


エクスは村の人々の話と自分達の体験を照らし合わせ、一つの結論を出した。


それは、イレイサが消すことが出来る人物は、イレイサが直接触れた事がある人間。


触れられなければ消されることはないのだ。


「そして私達、空白の書を持つものにその能力は効かない」


シェインは目を輝かせ、タオに結論を聞かせる。


「私達ならイレイサの所業を止めることが出来るんですタオ兄!」


タオの目に希望の光が宿った。

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