これまでのフィナーレ キャラクター年表

キャラクター誕生年(古い順)

*ネタバレ含みます。

出来れば最後に見てください。




*** *** ***




2060年

キリウタ・エンカ、(享年60)


2065年

ゴッドフレイ・ポリフォニー


2077年

セルゲイ・オペラ(享年53)

ヴァンド・セレナーデ


2079

キリヤマ・エンカ


2083

マリア・ワルツ、(享年32)


2085

エルビス・ブルース(享年46)


2087

パルマ・ポップ


2094

ビズキット・メタル(享年36)


2097

ポール・レゲエ

シシー・ゴシック


2098

リップ・ヒップホップ


2100

イカルガ・マキナ


2102

エウロア・マキナ

キリシマ・エンカ


2103

ハーディ・ロック


2104

コレシャ・コラール(享年26)


2105

ハルゲイ・オペラ

レイラ・チルアウト

メロウ・セレナーデ


2107

ガストロ・クラシック(享年23)


2108

カンテラ・グライム


2109

キャリー・ポップ


2112

カルロ・ショーロ(享年18)


2120

ララ・ゴシック

シンシア・ポリフォニー




*** *** ***




<第22話 印刷>




「あの、それじゃあ、取材に行ってきます!!」


 グラミーにある小さな出版社。

 キャリーはそこで大きく声をあげた。

 窓からはグラミーの街並みと、青く澄み切った空が見える。


「キャリー、晴れて良かったな。遠いから気をつけてな。それにしても、随分嬉しそうだな」

「オレンジさん! ええ、久しぶりですから!」

「キャリー、彼らに会ったら、よろしく伝えておいてね」

「お母さん。大丈夫だよ。行ってきます!」


 オレンジとパルマは、意気揚々と駆けだしたキャリーの背中を見送った。

 セルゲイのクーデターから一年。

 世界は形を変えた。

 そしてセルゲイ亡き世界は、少しづつ、前に進みだしていた。

 レクイエムは今日、その内部を世界に公開すると踏み出したのだ。

 その独占取材が、キャリーに一任されたのである。

 大手出版社、新聞社は疑問を抱えたが、それがレクイエム最高顧問の一存であるからには抗えない。

 

 キャリーは出版社を出ると、政府官邸へと向かった。

 一年前のクーデターでセルゲイに占拠されてから、その警備をより一層強化し、官邸には第三世代の刑殺官が配置されていた。

 受付でキャリーが名前を告げると、懐かしい顔が歩いてくる。


「お久しぶりです! カンテラさん!」

「ああ、久しぶりだね」


 元カンツォーネに配属されていたカンテラ。

 彼は先の事件以降、レイラと共に刑察官の副監としてグラミーに配属されている。

 刑察官とは、新たにグラミーに作られた監督役であり、住民一人一人につけられた腕途刑のアシストによって街を取り仕切っている。

 民衆に犯罪を起こさせない事を信条としており、そこから刑を察する者と名付けられた。


「もう、ヘリの準備はできているよ。さあ、こっちへ」


 キャリーは、官邸に作られたヘリポートにカンテラに案内される。

 そのままヘリに乗り込み、レクイエムへと向かった。




*** *** ***




 レクイエムに到着すると、今度はハルゲイが見習いを引き連れキャリーを迎え入れた。

 以前のレクイエムとは違い、塀の外側であるこの管理棟には一般人も多く見える。


「お久しぶりです。ハルゲイさん」

「ああ、久しぶりだね。キャリー」

「ところでこの人たちは?」

「ああ、彼らはね――」


 彼らはレクイエムにて懲罰されている受刑者達との面会人であった。

 ハルゲイは父の後を継ぎ、レクイエムの最高顧問に就任した。

 内部で多くの悲劇を見てきたハルゲイの一存で、受刑者には月に一度、外の世界から面会が許可されたのである。


「面会……ですか。レクイエムも変わってきてるんですね」

「ああ。おかげで、受刑者達の顔つきも大分明るくなったようだ。それで、これからはオラトリオを取材するんだろう?」

「あの、はい。是非、中の様子も見させてもらいたくて」

「その前に、キャリーに会いたがってる人がいるんだ。ほら、きなさい」


 ハルゲイが呼ぶと、近くの部屋からシシーとララが出てきた。

 

「ララちゃん! シシーさん!」

「その、久しぶりね。キャリー」

「キャリー、変わらない」

「どうして二人がここに!? ララちゃん大きくなったねえ!」


 ララの身長は少し伸びた様に見える。


「キャリーを驚かせようと思って秘密裏によんでいたのだ」

「お父さんったら、子供っぽいんだから」


 ララに言われてセルゲイは苦笑いを見せた。


「キャリー、これからオラトリオに行くんでしょう? その、彼らによろしく伝えておいてね」


 ハルゲイはカンテラに変わり見習いをキャリーの護衛に付けた。

 馬車に揺られて、キャリーは懐かしき街、オラトリオを目指す。




*** *** ***




 オラトリオに到着したキャリーが向かったのは、やはりマーリーだった。

 あの時と変わらず、相変わらず目立つ看板をしみじみと眺め、キャリーは戸を開ける。


――カランカラン


「お久しぶりです!」

「キャリー! どうしたのよ! 久しぶりじゃない!」

「おおうキャリー! どうしたんだぁ? また捕まっちまったのかい?」


 突然のキャリーの訪問に、リップとポールの二人はとても驚いていた。

 二人は相変わらずマーリーで情報屋を続けている。

 ただ一つ違うのは、二人は同じ指輪をしているという事。


「キャリー、私達、結婚するのよ!」

「キャリー、頼むからキリシマの旦那には内緒にしてくれよ」

「ええええ!? そうなんですか!? あの、おめでとうございます!」


 すると、再び、マーリーの戸が開いた。


「ポール! 聞いたか! キャリーちゃんが今レクイエムに来てるって!」

「キリシマさん!」


 キリシマはあの事件の後、再びレクイエムに投獄された。

 ただ、ハーディの推薦で受刑者としてではなく、刑殺官官長としてだった。

 キリシマは剣術指南役として、官長を務める傍らで見習い達に講習を開いている。


「あれー!? もう来てたのかよ! 久しぶりだなあキャリーちゃん!」

「キリシマさんこそ元気そうで!」

「おお、相変わらずじゃのう。キャリー」


 続けて入ってきたのはドンだった。

 ドンはその腕を認められ、現在、ゴッドフレイ、シシーと共に研究棟に移り、刑殺官の武器、及び防具を製造している。

 字は世界一の鍛冶師ドン・ドドンパ。

 外の世界でも大きく知れ渡る事となった。


「ねえ。せっかくだから一杯やりましょうよ!」

「おいおいリップぅ……。まだ昼過ぎだぜ? 仕事が――」

「それじゃあボトル、持ってくるわね! ポール! なにかつまみでも作りなさいな!」


 ポールはため息をつきながらもリップに従う。

 どうやら、かなり尻に敷かれている様だった。


「キャリーちゃん。あいつは元気か?」

「ええ。凄く活躍なさってますよ。今度、また取材に伺う予定です」


 ハーディはグラミーを治める刑察官総監の役職についた。

 今現在グラミーを指揮するヴァンドの采配である。

 日頃はレイラ、カンテラの副官と共に、グラミーの平和を維持している。


「っかー。あいつにそんな大役務まるのかね」


 キリシマがからかう様に笑ったその時、マーリーの外から声が聞こえてくる。

 言い合う三人の女の声。

 誰もがその声に聞き覚えがあった。


「まったく。ハーディのせいで遅れちゃったじゃない! 友達がきてるんでしょう!? なんでそんな日に仕事なんかするかな!?」

「えうろあはん。あんたちょっと無茶言いすぎやて。はーでぃはんの立場まだわかっとらんのとちゃいます?」

「そうですわよ。ハーディ様は日々お忙しい身。どうですハーディ様! 私と愛の駆け落ちなんてのもまた一興ですことよ?」


――カランカラン


 マーリーの戸が開く。


 狭く、暗く、長い旅路であった。

 その旅の中で、彼らが掴んだ物は何であったのか。

 彼らがこれから紡んでいく物語がどういった結末を迎えるのか。

 それはまだ見えてこない。

 それでも、きっと。

 エルビスやセルゲイがそうであったように。

 彼らの意志は、これからも受け継いでいかれるだろう。

 世界の平和と、未来を願って。




   犯罪者達の終焉曲    完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

犯罪者達の鎮魂曲 いずくかける @izukukakeru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ