これまでのフィナーレ

ここまでのネタバレをほとんど含みます。

出来れば、ここを読むのは最後にしてください。




*** *** ***




2087年

セルゲイ・ワルツ(10)家、一家惨殺事件発生。


2095年

セルゲイ・ワルツ(18)、グラミーに上京

グラミーにてスラム街のリーダー、エルビス・ブルースと出会う(10)


2097年

セルゲイ・ワルツ議員当選(20)、最年少での当選記録更新、一世を風靡

エルビス・ブルースの交渉術を使い、セレナーデ家と親交を深める


2100年

大型刑務所『レクイエム』創立

責任者、セルゲイ・ワルツ(23)、秘書エルビス・ブルース(15)

資金援助 セレナーデ財閥

レクイエム法案可決

マスコミによりレクイエム公表


2102年

世界中の犯罪者をレクイエムに移行終了

それに伴い各国の刑務所が閉鎖

レクイエムは世界唯一の刑務所となる


2103年

セルゲイ・ワルツ(26)、マリア・オペラ(20)馴れ初め


2104年

セルゲイ・ワルツ(27)、マリア・オペラ(21)結婚


2105年

セルゲイ・オペラ(28)、妻のマリア(22)との間に第一子、ハルゲイを授かる


2109年

ハーディの生みの母親、ティグレット・ロック(26)、病死


2110年

セルゲイ・オペラ(33)、レクイエム最高顧問に就任


エルビス・ブルース(25)、レクイエム刑殺官官長に就任


ハーディ・ロック(7)、スラムにてセルゲイに助けられる。その後に養成所入り


2115年

シシー・ゴシック(18)、レクイエムの研究施設にスカウトされる


ポール・レゲエ(18)、連続爆破事件でレクイエムに投獄、懲役200年

マリア・ワルツ(32)、事件に巻き込まれ死亡


2116年

ポール・レゲエ(19)、オラトリオにて情報屋「マーリー」を開業

リップ・ヒップホップ(18)、「マーリー」専属の仲介屋になる


2117年

シシー・ゴシック(20)、レクイエムの特別技術担当に就任

腕途刑にGPS、盗聴機能を追加


軍人ビズキット・メタル(23)、軍の研究機関入り


2118年

メタル遺伝子。研究担当にシシー・ゴシック(21)が就任


腕途刑で生体反応が読み取れるよう改良


ガルディ・ロック(37)、エウロア一家殺害。レクイエムに収容。懲役70年。



2119年

ハルゲイ・オペラ(14)、シシー・ゴシック(22)と子供を授かる


パルマ・ポップ(32)グラミー内の留置所に収容


シシーゴシック(22)、レクイエムに収容


メロウ・セレナーデ(14)、仕入屋としてレクイエム入り


ハーディ・ロック(16)、エウロア・マキナ(17)、馴れ初め


ハーディ・ロック(16)、エルビス・ブルース(34)と共にレクイエム入り


イカルガ・マキナ(19)、グラミーに移住


ゴッドフレイ・ポリフォニー(54)ハロルド、デイトナ開発



2120年

シシー・ゴシック(23)、レクイエム内でララ・ゴシックを出産

その後にララ・ゴシックは外の施設に引き取られる


エルビス・ブルース(35)、ララを匿った容疑でレクイエムに投獄

ハーディ・ロック(17)がそれに代わり官長に就任

レイラ・チルアウト(15)ハーディの側近としてレクイエム入り


キリヤマ・エンカ(41)、キリウタ・エンカ(60)を殺害

キリシマ・エンカ(18)が武者修行の旅に出る


2121年

メタル遺伝子、人体実験開始


2122年

メロウ(17)、エウロア(19)、レイラ(17)、三つ巴のハーディ争奪戦


メロウ・セレナーデ(17)、父親ヴァンド(45)と和解


2123年

メタル遺伝子初の成功者、カルロ・ショーロ(11)

レクイエム計画、第3世代開始

腕途刑に高電圧を流せるよう改良


エルビス・ブルース(48)、無期懲役


2125年

ガストロ・クラシック(18)、レクイエムに投獄 懲役730年

その後刑殺官殺害の為無期懲役に変更


ララ・ゴシック(5)、ドド・ゴシック(32)に引き取られる


エルビス・ブルース(40)、解放軍を設立


2127年

ビズキット・メタル(33)、レクイエムに投獄

その後職員殺害の為に無期懲役に変更


2128年

グラミーの武装勢力、ザディゴファミリー、及びミュゼットファミリー、一夜にして壊滅

キリシマ・エンカ(26)、自首によりレクイエムに投獄 懲役456年


2129年

ハルゲイ・オペラ(24)、死亡 現役刑殺官官長による銃殺


エウロア・マキナ(26)、死亡 死因は不明


2130年

ハーディ・ロック(27)、レクイエムに投獄、懲役1000年 史上最高刑期


キャリー・ポップ(21)、レクイエムに投獄 懲役20年


コレシャ・コラール(26) 殉職


ガストロ・クラシック(23)、死亡


ビズキット・メタル(36)、死亡


レクイエムから初の脱獄犯、

ハーディ・ロック(27)

キリシマ・エンカ(28)

キャリー・ポップ(21)

政府は国際指名手配に指定


セルゲイ・オペラ(53)、ヴァンド・セレナーデ(53)と会合

セルゲイ、セレナーデ財閥と対立


メロウ・セレナーデ(25)、脱獄の手引レクイエム収容。懲役30年


セルゲイ、レクイエムの全管理者に避難勧告

刑殺官関係者をグラミーに集結


脱獄犯、反レクイエムを掲げる過激派、戦火のグレゴリオと接触


グラミーにて電波ジャック事件

脱獄犯による犯行


シシー・ゴシック(33) 逮捕


ハーディ、キリシマ、キャリー 逮捕


レイラ・チルアウト(25) 国際指名手配


グラミーにて新政権発足


エルビス・ブルース死去(45)


セルゲイ・オペラ死去(53)



2031年

新政権セルゲイ発足

当主ヴァンド・セレナーデ(54)


グラミーにて刑察官制度発足

総監ハーディ・ロック(28)

副監レイラ・チルアウト(26)、カンテラ・グライム(23)


レクイエム最高顧問

ヴェンディ(26)




*** *** ***




あとがき


 どうも、二度と長編は書かないと心に決めたいずくかけるです。

 フィナーレ、とうとう書ききりました!

 いままで、応援してくださった方、本当にありがとうございました!

 そして、途中で盛大にエタって申し訳ありませんでした……

 あれだけエタらないって言ってたのに。

 しかし、物語にピリオドが付いて、私は今達成感で胸いっぱいです。

 本当に、読んでくれてありがとうございました!

 また、お会いしましょう!


 いずくかける




*** *** ***




<第21話 封印>




 時は2110年

 レクイエム創立から十周年を迎えたグラミーにて。

 レクイエム法案が可決された当時、国民のほとんどは政治に無関心だった。

 ただ、マスコミが大きく取り上げたセルゲイを、まるでスーパースターの様に崇め、その人物が為す事なら間違いないだろう。

 そんな、他力本願な意識を民衆は抱いていたのである。

 その結果、世界中で頻発していた犯罪は激減した。

 大きな要因は、受刑者の大半が戻らなかった事にある。

 レクイエムに送られ、そのまま中で死亡するもの。

 中で生きていく事を受け入れるもの。

 一度刑を受けた者たちの再犯が抑えられ、さらに帰らない受刑者に、荒くれ者どもはレクイエムという未知なる刑務所を勝手に想像し、犯罪に手を染めなくなった。

 民衆はレクイエムを讃えた。

 セルゲイを、世界を救った英雄として、より一層祭り上げた。

 これはそんな時代の、レクイエム創立十周年を記念して執り行われた式典での話。


 式典はグラミーにある一流ホテルを貸し切り、執り行われていた。

 各国の首脳も参加する盛大なパーティ。

 同時に報道陣も世界中から訪れ、その様子は広く放送された。

 会食は昼の十一時から始まり、司会が今日の主役を紹介する。

 会場に集まったゲストは、それぞれ話を辞め、司会に注目した。


「皆さん。本日はレクイエム設立十周年を記念した、このパーティにお集まりいただき、本当にありがとうございます。私含め、グラミーの街ごと、盛大に歓迎させて頂きます。さて、世界は十年前まで、人口増加問題、資源不足に頭を悩ませておりました。そこから、深刻な犯罪件数の増加に繋がりました。このグラミーも、刑務所に犯罪者が溢れ、そのコストもままなりません。しかし、その時、レクイエムが誕生したのです。この大型受刑者収容所は、世界を劇的に変えました。世界から刑務所を失くし、運営にかかっていた税金をより有意義に回せるようになりました。さらに、皆様も周知のとおり、犯罪件数を激減させ、世界に光をもたらしたのです。それでは、そのレクイエムを考案し、設立に甚大な活躍を見せたレクイエム最高顧問、グラミー議員のセルゲイ氏に登場して頂きましょう! 皆さま、盛大な拍手でお出迎え下さい!」


 会場から溢れんばかりの拍手が鳴り響く。

 セルゲイはネクタイを直し、壇上にたった。

 ゲストも、報道陣のカメラも、その姿を逃さぬよう一様に視線を向ける。

 セルゲイは壇上に立ち、会場内を見渡すと、軽く咳ばらいをしてスピーチを始めた。


「えー、今、ご紹介にあずかりました、セルゲイです。皆様、本日は大変ご多忙の中、このグラミーにお集まりくださり、誠にありがとうございます。恐縮ですが、少し、これからのレクイエムについてお話しさせていただければと思います。是非、ご清聴下さいませば、幸いでございます。私は、幼き頃、家族を失いました。唐突で、理不尽な事件でありました。私が学舎に行き、家に戻ると、そこにいたのは変わり果てた家族の姿だったのです。その犯人は、事件からつい数日前に出所したばかりの薬物中毒の常習犯でした。……私は苦しみました。生離死別を味わいました。自らの命を絶つことすらも頭をよぎりました。しかし、周りの人々に支えられ、再び、立ち直る事ができたのです。……その時、私は、私と同じ思いを抱えた人が多くいる事を学びました。そして、これ以上、被害者を増やしてはいけないと考えるようになりました。グラミーに上京し、私はスラム街で貧困にあえぐ者たちと交流をもつようになりました。彼らは、最初は私から現金を奪い取ろうとしました。しかし、何度も言葉を交わし、わかり合っていけば、共に手を取れる事を証明してくれました。彼らは悪ではなかった。貧困こそが本当の悪だったのです。正しい教養、豊かな食事、そしてわずかながらの思いやりがあれば、この世から犯罪は無くせるのです。私はそこにいるヴァンド卿の手を借り、レクイエムを創立しました。世界から犯罪者を隔離しました。彼らはレクイエムの中で、手を取り合い、助け合っています。共に同じ境遇を生きる仲間と、受刑者同士が協力し始めたのです。彼らにはできた。今度は我々の番です。レクイエムが示してくれたように、今こそ各国が手を繋ぎ、長年の怨恨を捨て、平和を作り上げていこうじゃありませんか!」


 セルゲイは深く頭を下げ、その演説にはまた、先よりも一層大きい拍手が送られた。

 拍手の中、セルゲイは自分の席に戻ると、ヴァンドが声をかける。


「セルゲイ、素晴らしいスピーチだった。このレクイエムの成功。グラミーは各国に主導権を握ったようなものだ。さらにこの演説が拍車をかけ、民意は君に心酔することだろう」

「ヴァンド卿。お言葉ですが、すべてはこれからです。完全なる犯罪のない世界。満足するには、いささか早い。世界が僅か意気衝天を迎えたに過ぎないのです。すべては……これからです」




*** *** ***




 会食が終わり、セルゲイは凱旋パレードの為、用意されていたオープンカーに乗り込んだ。

 グラミーは街をあげてセルゲイと、レクイエムを祝福している。

 通りには屋台がひしめき、あちらこちらで風船が挙げられている。

 街中をブラスバンドの奏でる音楽がさらに盛り上げ、通りでは多く人でにぎわっていた。

 グラミーの住民だけではない。

 世界中から、この歴史的イベントに参加しようと、人が詰め寄っているのである。

 その様相は、今まで執り行われたどんな祭りよりも人の関心を集めていた。

 セルゲイが乗り込むと、車はゆっくりと進み始め、警備もそれに付き従う様に一定の距離を保ち続ける。

 セルゲイは周囲に手を振りながら、グラミーを見渡していた。

 凱旋パレードはおよそ十分で終了した。

 セルゲイが車を降りようとしたその時である。

 一人の少年が目に入った。

 その金髪の少年は三名の警備兵に取り押さえられ、身動きがとれないでいる。

 セルゲイは咄嗟に駆け寄った。

 その様子に慌てた様に警備兵たちも後を続く。


「ど、どうなされました!? セルゲイ様!?」


 セルゲイは少年を取り押さえている兵に尋ねた。


「この華やかなる式典で、なにをしている。その少年がなにをした」


 少年は非常にみすぼらしい服装をしていた。

 髪をボサボサに伸ばし、泥に汚れた服、やせ細った頬。

 家族に連れられこのパレードを見物しに来た様にはとても見えない。

 グラミーに巣くうスラムの出だと、セルゲイは判断した。


「スリです。このガキ、セルゲイ様の記念式典だと言うのに、この騒ぎに乗じて観光客から財布を盗んでいたんです!」


 少年は病気がちの母と二人で暮らしていた。

 父は賭博と酒におぼれ、帰ってくるかと思えば、母が稼いだ僅かな蓄えを奪い去っていく時くらいのものだった。

 やがて母は病に倒れた。

 少年は母の命を繋ぐ薬を買う為、たびたび街に出てはスリを繰り返していた。

 しかし、母は死んだ。

 一人残された少年はスラムに入るも受け入れられず、一人で生きていた。

 天性の身のこなしと俊敏さを生かし、スリで口にノリをしていた。

 しかし、これだけの厳戒態勢。

 遂に少年は捕らえられてしまった。


「こいつら、金持ってんだろう! 少しくらいなんだ!」


 少年は必死の抵抗を続けている。

 しかし、七つの少年が大人の腕力に敵うはずもない。

 その腕は一向に動かせないでいた。


「このガキ! とんでもないやつだ! 裏に連れてって痛い目を見せないとまた繰り返すぞ!」


 警備兵は少年を立ち上がらせ、そのまま連れて行こうとした。

 それをセルゲイは止める。


「待ちなさい。おまえはいつもここでスリをしていたのか?」


 セルゲイの問いかけに、少年は悪びれもせずに答えた。

 それが少年の生き方だったからだ。


「それがどうした。奪わなければ死ぬ。俺はあいつとは違う」

「そうだな。一体、いつからスリをしていたのだ」

「……二年ほど前からだ」


 二年前。

 それを聞いた警備兵たちは唖然とした。

 こんな年端もいかない少年が、二年間も捕まらずスリを働いていたなんて、とても信じられる話では無かった。

 悪に染めておくには惜しい、とセルゲイは考える。


「おまえ、いつまでこんな事を続けるつもりだ。大人になるまでか。死ぬまでか。こんな犯罪で成り立つ人生など、つまらんぞ」

「うるせえ! 他に……、どうやって生きろって言うんだ!!」

「……私がお前に相応しい場を用意してやる。お前の力が十分に発揮できる、そんな舞台をな。おい、離してやれ」

「で、ですがしかし――」

「離すんだ」


 解放された少年はセルゲイを見上げた。

 少年はその後、レクイエムの養成所に送られ、後に刑殺官官長にまで上り詰める事になる。

 この様子を見ていた見物客は、子供に慈悲をかけた心優しき英雄と、セルゲイを更に讃えあげることになる。

 この行動を称賛し、セルゲイにはグラミーから記念盾が送られた。

 セルゲイがこの時、民衆の支持を得る為、計算して動いていたのか、これからの未来を創る子供達に可能性を感じていたのかは、今となってはわからない

 盾は、レクイエムに作らせたセルゲイの自室に、ただ飾られている。

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