第6話「再検査」

血液検査の結果は完璧でした。一般の血液検査の基準値ではなく、他人に与えて他人も健康になるための、より厳しい基準を全てクリアしています。フン、当然。吉村アリスです、コニチハ。


なのに再検査をくらったのは、サプリメントを飲んでいたからでして。


趣味に献血が加わり、成分献血明けたらすぐ献血ルームに行っていた吉村。献血のはじめこそ血液の値は良かったものの、不摂生もたたって献血前の検査で値が足りなくなるようになっていきました。これも、自分だけで生きるなら全く健康なのだが、他人に与えるほどのクオリティではありませんよというレベル。


当時ブログにも書きましたが、ボランティアではなく趣味でやってるので、楽しい趣味だもんで、やめたくない。赤血球を濃くするには鉄分との献血ルーム看護師の助言をいただき、鉄分を吸収するにはビタミンも必要と調べあげ、あーもーいろいろ面倒臭えや、ドラッグストアで一番ゴツいサプリメント、ネイチャーメイドのマルチビタミン&ミネラルを飲み始めた。


「食生活に気を遣わず、サプリに走るトコが吉村らしいよね…。」


そうなのである。吉村、食物の好き嫌いはほぼ無いが、食生活に気を遣うというのが甚だ面倒なのである。具体的にどうかというと、ホールケーキを夕食にする、ハマると数日同じものを食べ続ける、外食が多い等、要するにだらけきっているのである。


人間、時間も能力も無限ではない。私はそれを、栄養バランスとれた食生活につぎ込むよりは、読書と芸術をより深めたいのであります。血液成績が悪いからといって読書時間削ってオレがちまちま料理するかよ。献血より読書の方が優先度高いんだよ。というわけで、サプリメントは自然な流れで1年経過の現在。


サプリを禁じられて、血液成績下がることが危惧された。ドナーは是非ともやってみたい。どうにか検査をパスしたい。


吉村はコンビニの飲み物で鉄分が多いものを探し始めました。ネイチャーメイドの鉄分が4mgだった。とりあえずそれより多いものを飲んでおこうと、探し出したのはプルーンのヨーグルトドリンク113円、鉄分7.2mg入り。こういうものには、100mlあたりの含有量が記載されてたりするから注意だお!


とまぁこんなふうに飲んだり飲まなかったりして再検査の日を迎えたわけです。


会社には遅刻すると宣言し、朝イチに病院に行きました。場所は最初と同じ神戸市立医療センター中央市民病院で、受付で医師の谷上先生(仮名)と待ち合わせ。ふふ、ふふふふっ。コーディネーターさんが!いないっ!やたっ!(ガッツポーズ)


コーディネーターやることないし、医師が迎えにきてくれて採血するだけの、ものの10分程度の所要時間なんです。吉村はホワイトドナーなので約束の時刻の10分前には到着、受付で谷上先生を呼んでもらうようお願いし、椅子に座って待つのみ!前回はコーディネーターさんが私より早く到着していて、イロイロ気を遣って話しかけてくださっていたのが今回はいない。となると吉村、好奇心の赴くままに病人どもを観察してやんよ!←クズ


この病院の設備はとにかく新しくて、ピカピカなだけでなく「最先端」、以前も書いたように、シネコンロビーのような待合、ATMでの支払いと、しばらく大きな病院に来ていなかった吉村が「何ここ、未来?」と錯覚するような世界です。どうやらそれは吉村だけではないようで、患者って多くは年配の方で、アナログ人間が困っている様が其処此処に見られます。


先ず、受付といっても何ヶ所もあるからねー。一般外来受付、予約受付、入院受付、紹介状はありますか?診療科も多くて、どうやら受付手続からしてタッチパネルで行うようで、そんな操作の出来ない貴婦人や大臣のよーな爺ちゃんが係員を呼び、100%操作してもらっています。受付だけではなく、診察券作成する場所はまた別にあるし、次回の予約を取っておくトコもあるし、同じ場所にいて名前呼ばれたら行けばいいってわけにいかなくて、今自分がどの段階にいるのか把握し、自ら動かないと何も進まないようになっています。


そして偶々、私の目の前に、ジャージ姿、襟足のみ少し長めの茶髪パンチパーマのオッサンと、地味なオバサンの2人組が座っていたッ…!面白そうなDQN!吉村、本は開いて視線は本に落としてますが読んでません。


受付番号1番ということは、相当早くから来ていたのだろう。予約受付のカウンターの正面で、足を組みのけぞって座っている。話を盗み聞きすると、元々紹介状か何か持って先週来たそうな。そんで別のトコで受付しようとしたらわけがわからんくなって帰ったそうな。そしてこの日、多分正解のココ、予約外来カウンターに来てみると、指名の医師が非番だそうで、「どういうことや」とクレームをつけている。


谷上先生は予定の時刻を過ぎても現れず、私は内心ヨシヨシもうしばらく来るなとコトを見守っておりました。


受付の係員は、若いながら手馴れたものでした。DQNが「受付でたらい回しにされ、今度は医者がおらんて、どうなっとんねん」と暗に謝罪を要求するのに対し、「同じ診療科の他の先生に診てもらいますか?それとも日を改めていらっしゃいますか?」と建設的な問いかけを、それはそれは丁寧にされるのです。話かみ合ってないのがイイネ!何度も「確認しますのでお待ちください」とカウンターとソファを往復し、他の患者もさばき、ゆっくりゆっくり時間をかけて、DQNに「ここに文句言っても無駄なんやな」と思わせるようにもっていっておいででした。


自分が苦しいとき、苦しくてどうにかしようと自ら頑張って病院に来るとき、そこで優良患者になるかモンスターペイシェントになるかで人間が見えますな。私はホワイト貫くぞ!


と決意を新たにし、DQNが静かになった素晴らしいタイミングで谷上先生がやってきた。20分遅刻、謝っていらっしゃいましたがいえいえそんな、医師が仕事をするのに、私なんぞに謝らなきゃなんないことなんて全くありませんことよ。勿論20分間楽しんだからこそ余裕を持ってホワイト出来るというもの。


前回と同じく、医師同伴ですんなり採血をし、出口まで見送ってくださろうとする谷上先生に「わかるんで、ここで大丈夫です」と遠慮するくらい徹底してホワイト、一点の染みもない私!今回は職場に遅刻といってあるため、コッソリ観光するわけにもいかずに早々に帰りました。また来たいなー。入院もここがいいなー。


日々の努力の甲斐あって、二度目の検査も完璧な数値をはじき出し、あとは最終同意のお声がかかるのを待つのみ!

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