第2話「許可と連絡」
翌日には早速、職場で許可を貰います。というか、やるから休みます宣言。アナタタチ(上司だ)に私がやりたいことやるの邪魔する権利はまるで無いですからねって圧力を笑顔でかけるのです。
実は私の仕事が増えた矢先のことで、上司たちは全員営業マン、事務仕事が嫌いゆえ、「ちゃんと仕事してくれるならええけど」という雰囲気。仕事忙しい時期あるのでそれも心配のよう。「オレら、あの膨大な書類作成やらないから!手伝いたくないから!」という意思表示。大丈夫です、多分それまでにはカタがつきますから、とは言ったものの、カタが付かなくてもゴリ押しする気満々です。
ウチの会社にはドナーのための休暇制度は無いので(あるところもある)、普通に有給休暇を消化する予定です。吉村、今年から有給休暇余る勢いでして、余らせたら馬鹿馬鹿しいじゃないですか。この機会に取って、充実ドナーライフを送ってやる!他人の生命をかさに着て、気分は海外旅行みたいなノリです、私。
その昼休みに、バンクへの返送書類を仕上げる私。いやァ、書類受け取った前夜はゲームで忙しくて読むことすらままならないカンジでしたので。献血みたよーな健康アンケートに加え、親兄弟の同意はあるか、被爆の経験は無いか等の質問もあり、また検査を行うための施設リストがあり、それこそ関西一円の大病院一覧表よ、行けるもの全てにマルつけてくださいときたもんだ。市内なら行けるかなーと、特に何も考えずにマルをする。
同時に電話で問い合わせも。今後は、
アンケート返送
第一次検査(簡単なヤツ。複数いるかもしれんドナーの、移植適合順位を決める。)
最終同意(親同席せなならんヤツ)
第二次検査(精密なヤツ。ドナーの健康状態を徹底検査。)
入院、骨髄採取
という流れでして、いくつかの段階をパスせなならんのですが、それでも心配事は早くから解消しといた方がいいじゃないですか。こんな私でも、心配してることはあるんだよ。
親に、神戸に、来てほしくないっ…!
ウチの親、時間にルーズだし、この辺連れ歩くのも面倒だし、六畳一間のウチに来られるのも迷惑だ。最終同意の席は、出来れば地元で私が帰省するセッティングが出来ないだろうか。出来ないなら出来ないで、それなら神戸に来てもらうしかないとそっちを諦めて採取をキャンセルしたりはしないけど、希望を伝えるくらいはしてもええかもしれん。無理を言う気はないよ。
「それは出来ますよー。神戸と岡山で分けて最終同意の席設けることも出来ます。」
オペレーターのお姉さんが軽く即答してくれて、やけにホッとした。「面倒なこと言うドナーだな…」て思われたらイヤなので嬉しいことです。てゆーか同席しなくていい、帰省しなくていいとか、最高じゃねーか。ついでに、入院の際に付き添いは不要という言質も取り、何この吉村仕様、やりたい放題ですがな!
元気者吉村、元気な状態で入院して、出来れば大部屋で、他の不健康者の観察をしようと目論む←クズ。他人の生死は娯楽になるじゃないですかァ。本なんかでワザワザそういうのを読もうとは思わないけれど、リアルに目の前に居るのなら話は別である。私はボランティア、自己犠牲の皮をかぶったクズです!
という娯楽が待っているのに、付き添いなんかいたら、付き添いの相手せにゃならんやろが。見舞いも要らんなァ。この機に味わえるだけ病院を味わっちゃるからな!元気な時に入院出来る、しかもタダなんて、そう無いんだからな!入院患者に「大変ですねー」と同情したい!ナースステーションに菓子折り持参してみたい!
ククク…、不要とここまでキッパリ言われたら親をシャットアウトするのも容易いだろう。来てくれるなよ。独りで入院、独りで退院が最高!!
こんな目論見なんておくびにも出さず、「アッサリ済みそうですね☆」と喜び、「提供可能と返信致しますので、今後ともよろしくお願い申し上げます」と、仕事用の電話対応の私。その日中、つまり通知の封筒届いた翌日にはアンケート等を発送しました。
すごい!早い!こんなことでドナー候補者からドナーへ格上げされるとは思わないけど、こういう事務仕事の出来不出来ってやる気のパラメータよねぇ。
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