第3話 Lose feeling

―名前の分からない感情


最初は寝ている隙をついて、唇に口付けを…キスを落とすだけで十分だった。いつの間にかそれだけでは満たされなくなっていた…


触れたい、触れられていたい…

求めたい、求められたい…

溺れたい、溺れられたい…


そう願うまでに時間は掛からなかった。


際限なく湧き出る欲求…それを満たすことは難しかった。さり気なく身体に触れることしかできなかった。


素肌に触れたい…

肌と肌で体温を感じたい…

触れたい、触れられたい…


虚しい独り善がりな感情に支配されていく。


―背徳感、背徳的な欲望…


互いに堕ちていくまでには時間が掛からなかった。


「好きだよ…」


甘い言葉を囁かれ、囁き合いながら没頭する行為。身体と身体が触れ合い、互いの熱を感じ合うことのできる行為…甘美で背徳的な行為…それすら快楽のひとつとなってしまう…


同じ容姿

同じ声色

同じ吐息

同じ喘ぎ声…

切なそうな表情…


鏡に映る自分自身を見ているよう。


わざとらしく音を立て、唇を貪る。深く長い接吻…


“ほら、もっと求めて…”

“ほら、もっと昇り詰めて…”

“もっと爪を立てて…”


グチャグチャになりながら互いに求め合う。

互いの隙間を埋めるように…


二人でひとつ、だから身体と身体で隙間を埋め合う。


背徳的な行為

歪な形でも…

背徳的な感情だったとしても…


綺麗事でもいいから

慰めでもいいから


言い聞かせるように

そう…


それは運命だったと…呟いて…


Inspired, theme from『lose feeling (sang by Yuri Nakamura belonged to GARNET CROW)』


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