第2話 beautiful dazzle

心地よい水音が頭の中に響き渡る。


─チャプン、チャプン…


居慣れている筈の、身体を纏う水温はあまりに冷たすぎて、冷たすぎて…何もかもを奪われていくように錯覚する。


─チャプン、チャプン…


貴方がキレイだ、と言ってくれた歌声はね…貴方の顔が見たくて、ただ傍にいたくて、ただずっと隣にいたくて…ただそれだけの為に捨ててしまったの。痛みと引き換えに、手に入れた“姿”を見せたかったから。


─チャプン…チャプン…チャプン…


ねえ“人間”は外見じゃなくて、内面を好きになるなんて言っていたよね?でも、結局は…嘘吐き…嘘吐き…


頭がおかしくなるほど、胸がざわめいてしまうほど貴方が愛おしくて仕方がなかったから、殺せなかったの…殺せなかったの…


本当はね、貴方を殺して、一緒に死ぬつもりだったの…どうせ叶わない恋ならば…


ほらほら、夜が明けていく…


ほらほら、空色が…空気が…何とも言えない雰囲気に変わっていく…


身体がとろけて、意識が遠のいていく…


ふわふわと温かくなっていく…


不思議と嫌な感じはしない、むしろ…


…サヨウナラ、セカイ。


…サヨウナラ、コイシイヒト。(了)



Inspired, theme from『水のない晴れた海へ(sang by Yuri Nakamura belonged to GARNET CROW)』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る