忘れて欲しくなかった12話。


「明里さん?ちょっといいですか?」


4月18日、火曜日。


葵が入部して5日、そして部活動紹介の日からちょうど一週間のこの日。


葵は写真部のなかでどうしても分からない所があり、同じクラスの神崎 明里の元を訪れた。


「ん?なに、立花さん?情報を売ってくれるの?それとも買う?」


一応説明しておきますが、明里はこの街、峰倉市で情報屋をやっています。


登場が久々すぎて設定を忘れかけましたw(作者談)


「葵でいいですよ。えっとですねちょっと買いたい情報がありまして。」


「へ〜、なに?」


「私、写真部に入ったんですけど、副部長の真斗先輩と弘人くんが部活の中でしている"トンカツ"って言うのがどうも分からなくて...」


「あ〜、それはね。」


明里はポケットからメモ帳を取り出し、何ページかめくると、

「トンカツっていうのは、現在写真部副部長の真斗が行っているカツアゲのこと。」


「え!?弘人くん、真斗先輩と一緒にカツアゲしてるんですか!?」


「なお、カツアゲの内容は、歩いている中学、高校生を路地裏に連れて行き、おもむろに財布を奪う。」


「えっ...」


葵は驚きが隠せず、口を手で覆う。


「そして。」


「そして!?」


「中に入っている金額を二倍にして財布を返し、この事はくれぐれも言わないようにと口止めする。これがあなたの知りたかった"トンカツ"の内容よ」


「(......優しい...)」


「さて、お代は?」


「ではこちらでいいですか?」


葵は胸ポケットから明里が好きだと言われている猫の写真を数枚取り出し、明里に渡した。


「ありがとう。じゃあ私は...」


机からとりだしたポーチをいじると、なにやら券らしき物が中からでてきた


「ハイ、カフェの一杯無料券3枚。」


「いいいんですか?私はただ情報を教えてもらっただけですが...」


「いいのいいの!私もあなたから情報を今買ったんだし。」


「??」


「葵さんが写真部に入ったっていう情報よ。じゃあ私ちょっと用事があるから、またね。」


明里は席を経つと、さっさと廊下へ行ってしまった。


情報を買うつもりで来たのに、情報を買われるなんて。さすが情報屋ですね


葵はそう思いながらも、もう一つある事を考えていた。


「(この話って本当に日常的なのかな...?)」


ごもっともである。



12話。【完】

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