第23話 仲が良過ぎる友達は、もはやストーカーと変わらない。
「うーん、何か身体に不都合でもあったかい?」
「…………」
首をブンブンと横に振るい、アリアは何も答えない。そしてレイアの腕にしがみ付いて離れずにいた。
「じゃあ、お父さんの所に一緒に帰ろう?」
何か不満があるのか、少女は顔を更に激しく横に振る。
「い、や……おと、うさん、き、らい……」
その瞬間、ガタンッと音が鳴り響く。近くの樽の陰にハビルが隠れており、アリアを尾行していた。
(似た者同士の親子だなぁ。何やってんだか)
レイアは呆れた視線を向けつつも、アリアを悟す様に微笑みかけた。
「君の事を救う為にお父さんがどれだけ苦労し、涙を流したか君は知っているかなぁ? 君は嫌いだって言うけど、目覚めてからちゃんと話したのかな? 俺は女神だから嘘は通じないんだよ。早くごめんなさいって言ってきな?」
優しく頭を撫でると、アリアは涙を溢れさせ、静かに頷いた後に走り出す。
その後、暫くすると親子は仲良く手を繋いで現れた。
「女神様にお手を煩わせてしまい、誠に申し訳ない。娘も一緒に謝まると言って事情を説明してくれました。女神様に救われなければ命を散らしていた我が子です。あなた様が望むのであれば是非、末長くよろしくお願い申しあげます」
ーーん??
「一体何の事か、話が見えないんですけど……」
不思議な顔をしたレイアの問いに、ハビルが言葉を続ける。
「アリアから自分の命を救ったのは女神様だから、私の命は女神様をお護りする為に使うと諭され、私自身涙が溢れんばかりの感動をしております。娘が立派になって……うぅっ……よかった」
(ん〜、何故そうなるのだ? 多分、歳の近い俺と遊びたいんだろか? おっさんが気絶しちゃって明日まで休息する予定だったし、それもいいかな)
『女神の眼』には親子が嘘をついていないとわかっている為、ただの善意だろうと思っていた。
話が終わるとアリアが少しずつ近づいてきて、腕を絡めてくっついてくる。
「お、とうさ、ん。じゃま、き、えて?」
娘の冷淡な言葉にハビルは再びショックを受けるが、会釈して去っていった。
(あれ? これ仲直りしたの?)
レイアはその様子を見つめて首を傾げたが、これ以上は気にせず宿に歩き出す。
「これからご飯なんだけど、一緒に食べる?」
日が暮れてきたので夕飯にしようと思い、少女を食事に誘ってみた。
「た、べます」
アリアが辿々しくも答えてコクコクと頷くと、ロリ女神は不思議に思った事を聞く。
「君の身体は完全に治癒したから、喉も治っているはずなんだけど話辛いかな? 痛い?」
「い、たくない、です。た、だ、しゃべるの、がむずか、しいで、す」
「う〜む……」
理由が分からず首を傾げたが、多分後遺症の一種でじきに治るだろうと考えた。
「わかったよ。とりあえずご飯を食べよう?」
目の前の少女は嬉しそうに無言のままコクコクと頷いた。
(何この生き物、可愛い)
あとレイアはちゃっかり、腕に絡みついている豊満な胸の柔らかさを感じている。たまに少し肘を張るのがコツだと学んでいた。
(あぁ〜、シュバンに行って男になったら絶対戻ってこよう! この子は俺のハーレム一号になってくれる気がする!! しかし柔らか〜い。この歳でけしからんぞ〜?)
表情には全く出さず、脳内は欲望百パーセントの女神は宿につくとエジルに夕飯を頼む。
「おまたせ。一杯食べな? 可愛い嬢ちゃん達」
テーブルに置かれたのは、なんの肉かわからない薄めのステーキと、ミネストローネのように細かい野菜が煮込まれた酸味のあるスープだった。
「食べよう! アリア!」
「は、い」
レイアがナイフとフォークで肉を切って口に運ぼうとした瞬間、目の前にアリアが切った肉を差し出してくる。
「たべ、て? めが、みさま」
あーんをナチュラルにしてくる巨乳少女を前に、ロリ女神は薄目で天井を見上げた。
(今の自分十歳ですから、何も問題なんかありませんよね? うん! 無い!)
その後もひたすらアリアに食べさせられ続け、時に食べさせつつ食事を楽しむ。
「じゃあ、お風呂に入って休むからまた明日遊ぼうね! ちゃんと家に帰るんだよ!」
アリアはコクコクと頷くと、手を振って別れを告げた。幼女は一人脱衣所に向かうと服を脱ぎ、浴場で身体を洗おうとしたのだが、背後に人気がして振り向く。
「何故いる⁉︎」
「せ、なか、ながす」
いつのまにかアリアがいた。勿論既に真っ裸だ。
(う、うーん。今、自分十歳だから、も、問題ありませんな? うん! ないない!)
レイアは自らを納得させて無理やり頷いた。問題は無かろう、と。
だが、身体を洗いっこするという元男なら喜ぶべき場面で、物悲しい表情を浮かべる。
(欲情しない……出来ない……だって相棒がいないんだもの。まぁ、自分ロリコンじゃないしね!)
風呂を上がり、今度こそはと手を振って別れる。
部屋のドアを開け、中に入って施錠すると再び背後に気配を感じ、振り向いた先には、ーーアリアがいた。
「だから、何故いる⁉︎」
「こわい、ゆ、めみて、ね、れないか、らいっしょに、ねて、ほ、しいの」
たどだどしく言葉を紡ぐ少女の表情は、ポタポタと涙を流しながら悲しみに沈んでいた。
(確かにしょうがないかぁ。怖い思いしたんだし、優しくしてあげよう)
「わかったよ! 一緒に寝よっか!」
ロリ女神はおっさんとの話は明日にして、今日は寝ようとベッドに誘う。アリアはてくてく歩きながら、共にベットに潜った。
頭を撫でてあげながらおやすみを告げると、嬉しそうに微笑んでいる。
レイアはそのまま眠りについた。
__________
左手に隠し持った水の入った小瓶を、レイアの見えない位置からベットの下に隠し、証拠を隠滅する。
アリアは竜に喰われ、何も見えず、動けもしない日常で全てを憎み続けていた。
身体は元に戻り憎しみが薄れていった分、自分を救ってくれた目の前の小さな女神様への愛情が、天元突破している。それは崇拝に近い。
そう、『目的の為ならば手段は問わない』を体現した女へ変貌したのだ。
(上手くベッドに入る事はできた。あとは、女神様が寝るのを待つだけね……)
__________
「うっ……あぁっ、んっ……」
俺は夢の中でワンちゃんにじゃれつかれていた。顔をペロペロ舐め回し、尻尾を振るワンちゃんとキャッキャと戯れている。
「くすぐったいよぉ〜!」
頭を撫でながらもワンちゃんは止まらない。ペロペロレロレロと舐めながら愛情表現を最大で発揮する。ペットとはそう言うものだと分かっているが、激しいな。
口周りはベタベタだが、可愛いペットとのコミュニケーションだと自然に微笑んでいた。
「アンッ……そこはダメだよ!」
俺はスカートの中に頭を突っ込むワンちゃんを、押しのけて叱る。
「キュゥゥゥン?」
だが、怒られて項垂れる頭を撫でてあげると、嬉しそうにワンちゃんは笑っていた。
妙に現実感のある夢だと思いながら目覚めると、身体に違和感を感じる。なんか肌がカピカピしていた。まるで犬に舐められていたさっきの夢みたいだ。
隣にはアリアが全裸で寝ている。そして俺は再び自分の身体を見た。
「な、なんで裸なんじゃあああああああああああああああいぃ⁉︎」
朝陽が窓辺から差し込み、チュンチュンと鳥が鳴いてたりしてる感じの雰囲気の中、俺は一人困惑していた。
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