第21話 特訓開始!

 

 レイアは特訓前にステータスを更新した。アズラとの闘いで得た経験値と、ビッポ村に着くまでに蹴散らした魔獣退治で上がったレベルのSTポイント800を、これからの特訓の為にHP、力、体力、器用さに200ずつ割り振り、まるで近接職のようなステータスに頷く。


 特に力が「名もなき剣豪のガントレット」の力二倍効果でえらいことになっていると驚いていた。

 やはり、この装備は絶対いわくつきだろうと考えている。


 フラグはいつ襲いかかるのか、と。


 __________



【名前】

  紅姫 レイア

【年齢】

 10歳

【職業】

  女神

【レベル】

 19

【ステータス】

 HP 937

 MP 1015

 力 1045(2090)

 体力 430

 知力 374

 精神力 290

 器用さ 471

 運 スキルが発動していない為、数値化できません。


 残りSTポイント0


【スキル】

 女神の眼Lv3

 女神の腕Lv2

 女神の翼Lv1

 ナナLv3

 結界Lv2

 狩人の鼻Lv1


【リミットスキル】

 限界突破

 女神の微笑み

 セーブセーフ

 天使召喚

 闇■■■

 女王の騎士

 ゾーン


【魔術】

 フレイム、フレイムウォール

 アクア

 ヒール


【称号補正】

「騙されたボール」知力-10

「1人ツッコミ」精神力+5

「泣き虫」精神力+10体力-5

「失った相棒」HP-50

「耐え忍ぶと書いて忍耐」体力+15精神力+10

「食いしん坊」力+10体力+10

「欲望の敗北者」精神力-20

「狙われた幼女」知力-10精神力-20

「慈愛の女神」全ステータス+50


【装備】

「常闇の宝剣」ランクA

「深淵の女王のネックレス」ランクB

「名も無き剣豪のガントレット」ランクA

「フェンリルの胸当て」ランクS

「ヴァルキリースカート」ランクB

「生命の指輪」ランクS

「若火の髪飾り」ランクC


 __________


 やっとまともな称号補正がついたとレイアは内心喜んでいた。ナナに付けられ続けた不名誉な称号と違い、「慈愛の女神」は全ステータス+50と強力なものだ。


 嬉しくて仕方がないと口元が緩んでいたが、それと同時に首を傾げる。

(「狙われた幼女」って、一体なんの事だろう?)


「ちっ! おっさんに狙われたからかな。余計な称号つけやがって」

 地面に向かって忌々しそうに舌打ちするが、それは違う。


 本人は気づいていないのだが、下手すると天使にぺろぺろなでなでされていたのだ。狙っているのは「ヤツ」である。

 称号補正がつく程の本気が、余計に恐ろしい。


 そしてm『女神の眼』から派生したリミットスキル『ゾーン』は発動中動体視力と集中力が上昇する。継続時間はその時のHPや体力の残量に依存したいた。

 その後、アズラと村の近隣の草原へ移動して特訓を開始する。


「まずは基本的な双剣の型からからいくか? とりあえず常闇の宝剣は使用禁止だ。村の武器屋から安い鉄剣を数本買っておいたから、俺もお前もこっちを使う」

 二人は互いに頷くと、両手に鉄剣を構える。


 レイアが暇な時に考えていた理想の構え、それは左の剣を立てるように前に、右の剣を突きを放つように後ろへ引き、脚をいつでも突進できるよう広げ腰を落とした形だ。


 左を防御、右を攻撃にわかりやすく割り振った構えは、攻撃を読み易いが、熟練度次第でかなり使えるという自信があった。


 この世界に「剣技」や「体術」などのスキルはない。身体強化系のスキルはあるが、あくまで技術とは飽くなき鍛練の元に、積み重ねていかれるものなのだ。

 強者の今まで鍛練で培ってきた経験や技術を、全て自分のモノにしてやろうと、ロリ女神は強かに狙っていた。


 一方アズラ側からもある約束をしている。それは、『隠し事を自分に話す』ということ。それに対して出された条件は、『剣技のみでレイアが勝つ事』だった。

 最初にその条件を聞いた時に、普通は逆だろうと教える気がないのと魔人は憤怒したが、目の前の幼女の表情を見て思い留まる。


 ーーその金色の瞳には、自信が満ち溢れていたのだ。


(この俺に剣技のみで勝つ事が出来るのだと、気迫が漲ってるな)

 まだ出会ってから大した期間は立っていない。普通ならこんな提案は一笑に伏して断るのが普通だ。


 しかし、アズラはその決意を馬鹿にする事など出来ないと約束に乗った。


『特訓一日目、一周目』


 お互いに剣を構えてまずは軽く剣を交差しあい、金属音を響かせながら、徐々に身体をほぐしていく。


「そろそろ、本気で来て? 時間が勿体無いよ」

 挑発する様な台詞に、アズラの顔付きが真剣な表情に変わり、圧倒的なオーラを巻き上げ威圧を放った。

 レイアはフェンリルの胸当てからスキル『神速』を発動させ、最初から様子見は無しだと『限界突破』、さらに『ゾーン』を起動する。


『ゾーン』はナナの戦術予測とリンクするようになっており、視覚へ未来予測に近い情報を表示するのだ。

 MP無しの今の状態で出来る、最大の攻撃態勢。


「いくよっ‼︎」

 掛け声を皮切りに、右手から刺突を繰り出すとアズラが剣で左へと弾き、その勢いのまま逆袈裟を繰り出すが、レイアは先読みしており左の剣で斬り上げる。


 この時点で、アズラは目を見開いて驚愕した。自分がステータスの『力』という面で、目の前の幼女に負けていると理解させられる程の重い剣撃。


 剣筋の拙さを補って余りある身体能力と、自分の剣を避け続ける動体視力。奥義こそ使わないものの、剣技において本気を出して、レイアを痛めつけてでも鍛えようと考えていたからだ。


「う、そだろぅ? この馬鹿力!!」

 剣を両手に持ち、焦ってスキル『身体強化』を発動させる。使う気のなかったスキルを、剣を交えた一合目から使わされた魔人は、気を集中し始めた。


 それはリミットスキル『剣王の覇気』という己の身体を『身体強化』で高め、気を練る事で剣にも強化を施し、強度や威力を高めるリミットスキルだった。


 ナナとの戦いの時に見せた奥義は、この状態にならないと発動出来ないものであり、初日から奥の手を発動させ得た事に動揺を隠せない。

 ロリ女神はそんな事を何も知らないが、三日月の如く口元を吊り上げ邪悪な笑みを浮かべた。前回の戦いでは気絶していて、覚えられなかったからだ。


「スキル二個ゲット〜〜!!」

 意味がわからないとアズラはひたすら激しい剣撃を浴びせ、体術を駆使してダメージを与え続けた。

 レイアは苦痛に顔を埋めながらも、隙を見せれば致命傷になりかねない鋭さの双剣を振るってくる。


(どうなってんだ⁉︎ これは模擬戦や特訓なんてレベルじゃねぇぞ!!)

 アズラはつい一週間程前に、余裕を保って打ち倒した相手の成長速度に恐怖を覚えた。


「ーーはぁっ!!」

 思わず声を上げると袈裟斬りを放ち、幼女の胴体を斬り裂く。

 レイアは痛みに呻きながら後ろへ倒れたが、強固な意志に変化は無かった。魔人は息を切らしながら、咄嗟に駆け寄ると、回復薬を飲ませて傷口に振りまく。


(俺は何を……こんなの特訓でもなんでもない。殺し合いだ……)

 自分は何て事をしたんだと悔恨に呻くアズラに向け、幼女が笑う。


「一時間休んだら、もう一度お願いします! 全力で来て下さい!!」

 らしからぬ口調に顔を顰めるが、それだけ本気なのだと気を引き締めた。


 アズラは木陰で休む姿を後にして村に向かう。追加の剣と大量の回復薬を買う為に。


 抱いた恐怖と同時に、ここまで打ち合える存在が目の前で成長していく感動に震え、歓喜していた。

 ずっと求めていたのだ。ーーこんな存在を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る