第6話 「レベルアップと、女神の眼が優秀過ぎる」

 

「……レベルアップかぁ」

 俺は初めて魔獣を倒した感動などあまり無く、淡々と作業をしていた。気持ち悪かったので手を洗い、血の匂いで他の魔獣が来ないように身体を解体して埋めていく。


 幸いにも倒したオークから錆びた剣を入手した為、切れ味は悪いが処理には困らない。自分自身驚いていたのは、こういう血を見たり解体するという行為に対して、多少気持ち悪いが絶対無理だと思うような嫌悪感は湧かなかったからだ。


 ある程度作業を片付けると、ステータスの確認は後にしてご飯をどうするものか悩む。


「ねぇ、ナナさんよ。さっき討伐ランクが上がるほど、オークの肉は美味いとか言ってたが、これは食えるの? 虫とかは絶対食べたくないから、焼いてなら頑張ってチャレンジしたいんだけど……」

「マスター。この深淵の森でオークを食べられないとか言ってたら餓死して死ぬしかないよ。私なら絶対に食べたくないけど、マスターだし平気だよ! レッツ、異世界クッキング的なね」

 相変わらずのドS全開ナナの返答に眉を顰めながら、今は食料だと我慢する。


(何がレッツ異世界クッキングじゃい、料理なんてした事も無いっつーの)

 しかし、俺はいずれ冒険者ギルドとかテンプレな道も歩みたいので、これも経験のうちだとポジティブだった。


「じゃあとりあえず火だな。焼きとんだと思えば俺はいける気がする。ナナ、火の魔法とか教えて? ファイアとかあるの?」

 ナナが仕事モードのナビナナに切り替わる。

(なんでこいつは説明したりする時だけ、ナビに切り替わるのだ? 仕様か?)


「残念ですが、私はあくまでサポートナビであり、マスターに知識を与える事は出来ますが、女神様の能力を持つマスターは、普通の人間と同じようにはスキルや魔法を習得出来ない為、現状魔法ではなくこの世界で言う『魔術』は使えません」

「ーー?」

 不思議に思い首を傾げる。普通は異世界では、魔法使いから呪文などを習ったり練習したりして魔法や魔術を覚えるんじゃないのか、と。

 それに対して、出来ないという答えは一体何故だ。


「んっと。じゃあどうすれば、俺はスキルや魔術を覚えられるの?」

「マスターは女神様の身体を貰っていますから、その身体自体が俗に言うチートなのです。今はレベルが低いので『女神の眼』しか発動していない状態ですが、スキルの説明を聞きますか?」

 真剣な顔で頷く。正直ナナがサポートナビっぽい事をしているのに感動していた。


 __________


【スキル『女神の眼』】


 ・動体視力の向上。一定レベルで派生リミットスキル『ゾーン』を覚えます。

 ・相手の表面上の嘘、偽りを見抜きます。一定レベルで派生リミットスキル『心眼』を覚えます。


 ・自分のステータスだけじゃなく相手の情報を読み取る事が出来ます。ただしレベル差が開きすぎている相手には規制が掛かります。また強力な隠蔽アイテムを使用された場合は阻害されます。

 読み取れる情報は相手の名前、種族、レベル、スキル、HP、MP、ステータスの平均数値までで、称号補正は読み取れません。


 __________


「……なんかすげーな、『女神の眼』」

 俺は驚きながらも、その効果を全然感じられていない現状に小さな溜息を吐いた。


「マスター、続きがあります。これがマスターが魔術やスキルを知識で覚えられない理由なのですが、マスターは『女神の眼』で見た能力を任意で自分の能力へとコピーできます。なので、先程の火の魔術が使いたいならば、火魔術を使える者から見て覚えなければなりません」

 その説明を聞いた途端、口をポカンと開き絶句した。


「それ、ガチでチートですやん……」

 俺が本格的に女神の身体の能力を、理解し始めた瞬間だった。

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