チャプター1〜からの〜

「ここは……」


玲奈が今いるのは、玲奈が通っている学校の玲奈の教室、


間違いない、ついさっきまで、あゆみとさやかといた、どこかは分からない暗い部屋から、




あゆみが叫んだ瞬間、




どこかへ飛ばされた感覚の後、気がつくと時刻は夕方くらいと思われる、夕日が差し込むこの教室にいた、


「どうなっているの?」


戸惑いながらとりあえず教室を出ることにする。



廊下へ出て辺りを見回す玲奈、



しかし、明らかに人の気配が無い、




生徒どころか、先生の気配も全くない、



しばらく校内を歩き回ったが、結局、人っ子一人見つからなかった。



この世界には私以外の人間がいないのか?



そんな不安が、玲奈の心に生まれる、





「さやか〜、あゆみ〜‼︎」


半泣きになりながらおそらく事態の原因を知っている二人の名を呼ぶ、



反応は、無い……




校舎を出て、体育館へやってきた玲奈、




「流石にここには誰もいないよね〜」



おそらく、


ここに飛ばされる前にさやかが言っていた、



私が今はあゆみの頭の中の世界に囚われているということが、




話を聞いただけではとても信じられなかったが、



ここへ来てようやく信じられそうな気がする、


というか信じるしか無いようだ、



さやかは、あゆみはこの世界を自由に動かせると言っていた。



だからさっき、あゆみにとって不都合なことが起こりそうになったから、私とさやかを別々の所に飛ばしたのかしら?



という結論に至る、



だが、あゆみ自身も玲奈と離れる必要があったのか、



悩んだ末、


「恥ずかしかったのね、きっと!」



という結論を出した。




いつからかは分からないけど、あゆみは私のことが好きだった、でもその思いを理由は分からないけど、伝えられなかった、


で、その気持ちを拗らせた結果、私を自分の世界に閉じ込めることになった、というところかな?


そして、あゆみの性格からして、私に自分の気持ちを知られるのが恥ずかしくてたまらないという感じだったし、知られないよう、なんでも思い通りになる世界にいても、普通と変わらない毎日を送るようにしていた。



でも、状況が変わり、力を使うしかなくなった。



しかも、それは、私と仲を戻そうとやって来た、さやかと私を引き離すために、



それはつまり、あゆみが私のことが好きで、私とさやかとの、仲直りしそうな様子にヤキモチを焼いたと自白するようなことだ、



今まで悟られないように気持ちを募らせて来たのに、こんな形で知られたのが、たまらなかったのね、


そしてそのことが恥ずかしくて出てこられないのだ!



丁度、玲奈がその考えに至った時、体育館の舞台へたどり着いた。



そして、確信する、



ここが、玲奈の知る現実世界では無いことを、



舞台の上の、丁度ど真ん中の位置に当たる場所に、現実にはまず無い不自然な物があったのだ、


「これは……」


玲奈が目にしたのは、椅子、



それも、俗に言う、電気椅子と言われる代物だ、


体育館の、みんなの注目の的となる、舞台の上に、こんなものがあるなんて、




「嘘でしょ……こんな……」



こんな、玲奈の趣味ど真ん中の物が、パッと用意されているなんて、現実ではあり得ない、



「す……座りたい……座って、ビリビリしたい……」



ウズウズしていると、


「どうされました?玲奈さん、座らないのですか?」


ここへ来て、初めて聞く人の声、



それは、今まで聞いたことのない、声に抑揚のない、機械のような話し方の女の人の声だった、



「聞いたことのないとは、失礼ですね、私はあなたの担任です」


「あっそういえば、担任の先生‼︎」


声の主の正体に気づくと同時に、いつの間にか、玲奈の前にこの世界での玲奈の学校の担任の先生が立っていた。



「もうお分かりかもしれませんが、ここは現実ではありません」


「みたいですね……」


ここまで来れば、もう何が起きてもビビらない、



「そしてあなたはここから出なくてはなりません、あなた自身のためにも、あゆみさんのためにも……そして、あなたと共にこの世界に囚われた、人々のためにも……」


「他にもこの世界に閉じ込められてる人がいるの?」


「はい、あなた以外に数名、この世界に囚われています、そして、あなたがこの世界から出ると同時に、その人達も現実へ帰れるのです。」



「なるほど、責任重大ですね。」


「ええ……でも大丈夫、あなたが誘惑に負けなければ必ず出られます。」


「誘惑……?」


「当然、あゆみさんはあなたをこの世界に留まらせようと誘惑してきます。あなたはそれに耐えなければならない。」


「そうよね……そう簡単には出してもらえないわよね……で?その誘惑とやらには気合いで耐えられるの?というか、ここは大丈夫なの?」


「はい、ここはあなたにとって必要な場所……セーブポイントなので、ただ、気合いどうこうは、今のあなたの精神力では力不足です。」


「え?じゃあ、今から精神修行でもしなくちゃいけないのかしら?」



「そうですね、ただ、この世界においては必要ありません、なぜなら、そうゆう時に使うのが、そこの椅子だからです」


「は……?」


担任の言っていることが理解できず、固まる玲奈、



「あの椅子に座り、ビリビリすることによって、この世界においての、あなたの精神力が強化されます。他にも、ダッシュ時間や、打撃威力、回復薬の回復量も強化できます。」



「はぁ〜」



どうやら、この世界の電気椅子は、自己強化するトンデモナイ代物らしい……、


後半の、打撃威力やらは、いるのか分からないが……



そもそも回復薬ってナンゾヤ?



その辺は、後々として、




玲奈が、元の世界へ戻るためには自身を強化しなくてはならず、強化のためには、この電気椅子に座ってビリビリするしかないらしい、




つまり、電気椅子に座りビリビリするしかない‼︎




そのことを理解した時、玲奈のマゾ魂に火が着いた‼︎



「い……いいんですね?座っても?」


「いいんです」


「ビリビリしちゃっても?」


「いいんです」


「いっただっきまーーーす‼︎」


興奮のあまり、鼻息を荒くして電気椅子に座る玲奈、



「では、始めます」



「は、はい‼︎お願いいたしま〜す‼︎」



担任がスイッチを入れる。



その後数十分間、玲奈の幸せそうな悲鳴が、誰もいない学校内に響き渡ったのだった。

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