桜の花言葉は〜spiritualbeauty〜
ピンポーン、
と、あゆみの家のチャイムが鳴る、
鳴らしたのはもちろんこの私、
玲奈お姉ちゃんの妹、桐谷桜です、
私があゆみさんの家にやってきた理由は一つ、
ズバリ、お姉ちゃんの危機を知らせるためです!
お姉ちゃんは今日の夕方に、元同級生の横田さやかという人物に誘拐、監禁されています。
しかも、
そのさやかという人物、
なんと玲奈お姉ちゃんの初恋の相手だというではないですか!
でも、さやかは、中学卒業すると同時に、玲奈お姉ちゃんとの連絡を一切断ち、
お姉ちゃんを人間不審のボッチ野郎に仕立て上げた、最低な人でもあったのです、(いいぞー!もっとやれー!と思ったのはナイショです!)
とはいえ、一度は本気で好きになった相手、いくら最低な仕打ちをされたとしても、そう簡単には嫌いになれないのが玲奈お姉ちゃん、
今回も、さやかに誘拐、監禁されているにもかかわらず、何やら色々言い訳じみたことを言われただけで、心が揺らいでおります、(手足を縛られて床に転がされている状態で)
さすがは自他共に認めるドエム野郎の玲奈お姉ちゃん!
でもこのままでは、私の大切な玲奈お姉ちゃんが、ポッと出の女の子にアッサリ持ってかれる、
それは避けねば!
という訳で、
現在、助けを求められる可能性を秘めた存在、あゆみさんと、理沙さんに、玲奈お姉ちゃんの危機を知らせようとしているところなのです!
でも、この事態を知っているのは私一人だけ、
二人に知らせたくても、別々の場所にいる二人に、同時に知らせることは不可能です、
えっ⁉︎私がいけばいいじゃない?
それでは色々面白くないじゃないですか‼︎
というわけで、
ここはあえて、あゆみさんと理沙さんに行ってもらいます!
話は戻って、
現在私は、玲奈お姉ちゃんを助けに行けそうな、あゆみさんと理沙さんに、お姉ちゃんの危機を知らせに向かっているところです。
でも、事態を知っているのは、私一人、
なので、
ここは、一人ずつ、
まずは、近い方のあゆみさんに知らせに来ました。
理沙さんは現在、さやかの手下達と交戦中、携帯で連絡しても気づかないでしょう、
というか、連絡先知らないです!
さっさとあゆみに知らせて、次へ行かねば、
と、若干焦り気味の私、
私がチャイムを鳴らして約15秒、家の中から誰かが歩いてくる音がし、
そのすぐ後に、玄関のドアが開かれ、中から眠そうに目をこすりながらあゆみが姿を現す、
「ん〜?誰よ?こんな時間に〜」
現在、時刻は夜の10時過ぎ、
完全に迷惑な奴であるが、お姉ちゃんの緊急事態である、
……許せ、あゆみ……
っていうか、
こんな時間に玄関のチャイムを鳴らす奴が普通なはずない、
にもかかわらず、こんなにも無防備に、玄関のドアを開けるなど、とんだお間抜けさんである、
今回は一刻を争う時なので、助かったのですが、
一秒でも早く、玲奈お姉ちゃんを助け出してもらわなければ、
あのさやかという人物に、お姉ちゃんがまた心を許すのも、時間の問題である。
「アレ?アンタ、確か玲奈の……」
玄関前に立つ私を見てビックリした様子のあゆみ、
「はい‼︎先日玲奈お姉ちゃんの妹になりました、桐谷桜です!こんばんは!あゆみさん!」
何だこの事故紹介は!
先日妹になったって、なんか言ってる私も訳わからんです!
「こんばんは〜、ってアンタこんな時間に何やってんの?女の子が一人で外歩いていい時間じゃ無いわよ?最近変な事件やら不審者やら出てるんだから気をつけなさい全くもう!」
っていうか、その設定、まだ続いてたんだ〜、と
心配そうに叱ってくれるあゆみさん……
女の子が一人で歩いていい時間じゃないって、
あゆみさん、男前っす!
思わず惚れてしまいそうな私、
だが!
今はあゆみの優しさに惚れている時ではないのです!
「はい!ご心配、ありがとうございます!でもそうも言っていられ無いくらい緊急事態なのです!」
今は玲奈お姉ちゃんの危機を知らせなければならないのです!
「何よ?緊急事態なんて、」
こんな時間に私に知らせなければならないほど、緊急事態とは、只事ではないと緊張感を持って聞いてくるあゆみさん、
なんか……カッコイイ!
「あゆみさん……」
「だから何よ?」
「好きです!」
「は?何言ってんの?」
「えっ⁉︎あっ、スミマセン……あゆみさんがとってもカッコ良かったので思わず口走ってしまいました。」
「別にいいけど……それより私はアンタの方が心配よ、アンタ、今本当に玲奈の所にいんの?もし家出して玲奈ん家にいるんだったら早く家帰った方がいいよ?親御さん心配してるだろうし……それにアンタ、結構可愛いんだから、そのまま玲奈の側にいたら玲奈が黙ってないわよ?あっ、もしかしてそれで私の家に来たの?もう襲われたとか、ったくアイツは〜」
なんかお母さんみたいに心配してくれるあゆみさん、(私、お母さん知らないですけどね)
うれしいですけど、でも、残念ながら間違ってます、
「ごめんなさい、家出云々は置いておくとして、今日来た理由はお姉ちゃんが襲ってきたんじゃなくて、お姉ちゃんが襲われてしまったのを知らせるためなのです」
「は?ナイナイ、あの玲奈が襲われた?そんなこと、あるわけないじゃない、アイツは狩る側よ?狩られる側じゃないわ」
私が言ったことが信じられないのか、鼻で笑うあゆみさん……
確かに、そうでした、あのお姉ちゃんが誰かに襲われるとは、玲奈という人間を知っている人間からしたら、とても信じられる事じゃない、
さて、どうすれば信じてもらえるのでしょうか、
しばらくの沈黙、
すると、あゆみさんが、
「……玄関で立ち話も何だし、とりあえず上がりなさい、話は中でゆっくり聞かせてもらうわ」
という温かい言葉、
「あっ、ありがとうございます!でも私今急いでて……」
気持ちは嬉しいですけど、今は一刻を争う時なのです!
断ろうとした私だったのですが、
「ほら、上がりなさい、大したものは無いけどお菓子くらい出したげるから」
「ポテチはありますか⁉︎」
「あっあるけど……」
「お邪魔します‼︎是非‼︎上がらせてください‼︎」
「どっどうぞ……」
そうゆうわけで、少しあゆみさんのウチにお邪魔します、
ごめんなさいお姉ちゃん、私、少し遅くなります、
–––––––––––––
あゆみ家
リビング、
「じゃあ私はお菓子とお茶を取ってくるから、その辺座ってて」
明かりをつけて、あゆみさんがリビングに置かれたテーブルを指し、好きなところに座るよう、勧めてくれる。
「はーい」
私はお言葉に甘えて一番近くの椅子を引き、座る、
これから出てくるであろうポテチに胸を躍らせながら、
しばらくして、あゆみさんがお盆にお茶と皿に山盛りポテチをのせて帰ってくる、
私、大歓喜‼︎
「……で?アンタは何でウチ来たの?」
どうやらあゆみさんはまだ私を家出少女かと勘違いしている様子、
「最初に言っておくと、私、家出少女じゃあ無いですからね?」
まずはそこを正さねば、
「ふーん、じゃあ何よ?」
ありのままを説明しても今よりもっと信じてもらえなくなりそうなので、適当にありそうな感じで繋げてみる、
「私、元々親がいなくて、困ってたところを玲奈お姉ちゃんが見つけてくれて、拾ってくれた感じです」
どうだ?
「……そっか、アンタも色々大変な思いしたのね、言いにくいこと聞いてごめんなさい、」
「いえいえ」
よかったー、
これで話を先に進められそうです。
「で、私が今日あゆみさんを訪ねてきた理由なんですが、」
「うん」
「現在、私は玲奈お姉ちゃんのお家に住まわせてもらってます、」
「みたいね」
「それで今日、学校へ行ったお姉ちゃんが、何の連絡もなしにまだ帰って来てないんです、」
「なるほど、それで心配になってウチへ来たのね、」
「はい、そうゆうわけです」
「でもごめんなさい、私も玲奈の居場所は分からないの、今日も学校で別れたっきりだし」
申し訳なさそうなあゆみさん、
「あっそこは大丈夫です!お姉ちゃんの居場所は分かっているので!」
そう、そこは大丈夫なのです!
「?」
首をかしげるあゆみさん、
じゃあ連れて帰ればいいじゃない?とでも言いたげだ、
でも、
「実は居場所は分かっているのですが、私一人ではお姉ちゃんを連れ帰るのは少々難しくて」
「それで私?」
「はい」
なるほど、実際に玲奈の置かれている状況を見てきたから、さっき玲奈がさらわれたなんて言ってきたのね……
と、
どうやら色々理解してくれた様子のあゆみさん、
「……で?私が行けば連れ帰れそうなの?」
「はい、おそらく」
「でも誘拐されてるんでしょう?あなたも来るとしても二人でどうにかなるの?玲奈を誘拐した犯人は」
「はい、余裕です!」
「余裕なの⁉︎……でもやっぱり危なくない?女の子二人で行くのは、警察とかに連絡してからの方が……」
「いえ、それには及びません、犯人は私の知り合いですので、戦力はハッキリしています、二人以上でいけば大した危険はありません!」
ついでに出来れば大事にはしたくないので、
と伝える
「なるほどねー……うん、分かったわ!しょうがないから行きますか、玲奈を助けに、」
「はい‼︎行きましょう!」
二人でエイエイオーをして立ち上がる、
「では、私は万が一を考えて援軍を呼んできます!あゆみさんは準備が出来次第玲奈お姉ちゃんを助けに向かって下さい!」
私は行く気ありませんけどね‼︎
「分かったわ!でも何処へ行けばいいのか、私はまだ知らないわよ?」
「では、連絡交換しましょう‼︎地図を送ります‼︎」
「そうね、その方が色々便利だし、交換しましょうか、」
と言うわけで、あゆみさんの連絡先をゲット‼︎
その後、私はあゆみさんの携帯にメールでお姉ちゃんの居場所をあゆみさんに教え、
あゆみさんの家を後にする
「では、また後で!」
「分かったわ‼︎……あんまり無理しちゃダメよ‼︎」
「はーいそちらこそー、では、行ってきます!」
会話はそれを最後に、私は、次なるヒーロー候補、理沙さんに、会いに行く、
あゆみは、桜が走って行く背中を眺めたあと、自分も支度をするべく、家へ入っていくのだった、
––––––––––––––––
桜が帰った後のあゆみの家にて、
桜が家を出て約3分、
桜から玲奈の緊急事態を聞いたにもかかわらず、あゆみはまだ先ほどと変わらずリビングの机に座っている、
その様子は、冷静そのもの、全く焦る様子もない、
「……玲奈が、さらわれた、誰に?……いやっ、問題はそこじゃない、玲奈の居場所なら地球の裏側だろうと地下深くだろうと一瞬で見つけられる、」
一人でブツブツと何やら呟くあゆみ、
「問題は、玲奈を連れ去った相手……理沙かしら?……でもそれはありえない、なぜなら理沙には玲奈を連れ去る理由が見当たらない、なら……」
先ほど桜からの情報だけでどうやら犯人に重い至った様子のあゆみ、
「理沙じゃあないなら、犯人は……”さやか”ね?」
……?
おかしい、
さやかと玲奈とは、小・中学時代の友人のはずである、
高校に入ってから知り合った、あゆみとは、一切の接点もないはずの人物の名前が、あゆみの口から出てくる、
「なら、ちょっとだけ厄介ね、さやかめ、私が動く前に先手を打って来たわけ?いい度胸じゃあない‼︎……いいわ、受けて立ってあげる!そして私と玲奈の間を邪魔した罰を与えてあげるわ!」
何やら物騒な方向へ話を進め出したあゆみ、
「後問題は、あの桜って子ね、あの子、私より先に玲奈のことを知っていた、ただ者じゃないわね、そしてあの様子だと、彼女、今から同じことを理沙に伝えに行くつもりかしら?なら……」
ポケットからスマホを取り出し、何処かへ連絡を始めるあゆみ、
「……はい、」
「私よ、例の作戦、実行しちゃって」
「了解しました、では」
そこで通話は切れる、
「さぁ〜て、私も行きますか、理沙には悪いけど、玲奈を救うのは私の役目だから……」
そう言って、家を後にし、学校へ向けて歩を進めるあゆみなのだった、
–––––––––––––––
無事、あゆみへ玲奈の緊急事態を知らせた私は、
もう一人のヒーロー足りうる存在である
理沙の元へ、
あゆみに言った内容と同じ、玲奈の緊急事態を知らせに向かっていた。
「理沙さんは、今は確か、この近くの河原でさやかの手下達と戦っているはず」
物理的に戦う担当として、玲奈の元へ向かってもらうようなんとか話をしなければ、
あゆみの家から徒歩15分ほどの場所にある川、
その河原で理沙は戦っていた。
……はずなのですが……
「えっ……一体何が……」
ようやく河原に到着し、全体が見渡せるところへ来た私が目にしたのは、
……すでに気を失っている、さやかの手下達と思われる女の子達、
どうやら私が到着するより前に決着がついてしまっていたようです、
では理沙さんはどこへ、
辺りに動くものは見当たりません、
理沙さんはもう何処かへ移動してしまったのでしょうか?
いや、私が最後に理沙さんを確認したのは、私が玲奈お姉ちゃんの家を出る時、その時は、まだ、結構な数の敵が残っていました、
その数は、いくら理沙さんでも、この短時間に全員倒して、私の目の届かないところまで移動するのは無理なくらいでした。
仮に、理沙さんが全員倒していたとしても、まだこの辺りにいなければ異常です。
よく探しましょう、
というわけで、
辺りを見て回ってみると、
……いた!
理沙さんです!
視界の遥か先、二百メートルほど離れたところに米粒ほどの大きさですが見えます!
でも
なんか一人で猛ダッシュ中、
何やってんのあの人、
まぁ呼んでみたらわかるでしょう、
「お〜い、お茶‼︎……なんちって♪」
テヘペロ☆
…………、
はい……
なんかスンマセン
結構離れててどんなに叫んでも聞こえなさそうだったので適当しました、
改めまして、近くへ行ってみましょうか、
というわけで、理沙さんの元へ駆けていく、
あと100メートルほどのところまで近づいたところで、理沙さんが私に気づいたようで、走る進行方向を変更して私の方へやってくる、
「お〜い理沙さーん!」
何か必死に走ってくる理沙さんに癒されながら気楽に呼びかける。
こっちはアハハウフフなテンションなのに、理沙さんは鬼の形相で、ズドドドドという擬音が聞こえてき……てますね、
それはもう、凄い勢いでこちらへ駆けてくる。
さっきから気になってたのですが、このテンションの差は何なのでしょうか、
「何してるんですかー?」
あと50メートル、
そこで理沙さんが何か言っているのが聞こえてくる
「あんたが誰だか知らないけどここから逃げなさーい‼︎」
あと20メートル、
「えっ?なんで?」
私が首をかしげたと同時、
ズッドーーーン、
と、
理沙さんの後ろが爆発し、なんか生えてきた、
それは
植物のような、蛇のような、
どんなに心清らかな聖人が見ても嫌悪感しか抱けそうにない、
この世に生まれてきたのが可哀想に思えるくらいキモイ見た目の生き物?……と言っていいのでしょうか?
体長は見えるだけでも10メートル以上はありそうです、
「キェェェェェェェェー‼︎」
と鳴いてるからから生き物なのでしょう、
そいつは
大量の砂埃を巻き上げ、それに紛れながら、ウネウネと体をクネらせて、猛スピードでこちらへ向かってくる。
「とにかく走りなさーい!」
「⁉︎??⁉︎、は、はい〜!」
何アレ何アレ!
あんなのが地上にいていいんですかー⁉︎
死ぬ!
アレは確実に殺しにきてる!
あの生き物からは殺意しか感じない!
こうして、
私と理沙さんのナゾの巨大生物との命をかけた夜の追いかけっこが始まった。
そして、
私はここへ来たことを全力で後悔するのだった。
–––––つづく
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