懐かしきあの日(そろそろ真面目に戻ります)

あの頃の私はまだ幼かった、だって、自分に親切にしてくれた人なら誰でも簡単に信用てしまっていたから、



自分に優しくてくれるなら誰でも友達、仲間だと思い込んでしまっていた、


そして、




相手と自分の、格の違いというヤツに、気付くことができなかったのだから、





–––––––––––––





それは今から六年前、私がまだ小学生だった頃、



教室、



周りには私と同い年の男の子や女の子が話をしたり、追いかけっこをして走り回っていたりする。


そんな中、一人、誰とも絡まず席に着き、ポーッと黒板を見ている女の子。



……私である。



その前の記憶は無い、




無いと言っても、それは記憶喪失とか、そうゆうのではなく、単純に物心つく前だった、というだけである。



その前の記憶自体、全くないという訳ではないのだが、


なんと無く覚えているような感じのものばかりで、



誰かと遊んでいたような気のする記憶もあれば、



今のこの状況と全く変わっていないような気のする記憶もある。




言ってしまえば、夢を見た後の、眠りから覚めた時のような、思い出せそうで思い出せない、非常に曖昧な記憶である。



だが、今の、ボーっとしている頃からの記憶が、急にハッキリし出した。





その頃の私は、何をするでもなくただボーっとしているだけ、



そんな毎日をただ送っていた。





–––––私は周りとは違う–––––






そう感じ、周りの子供たちの輪に入っていくことができなかった。






–––––––––––





でも、そんなある日、ポンポンッと後ろから肩を叩かれる、



振り向くと、




「ねぇ?あなたお名前は?」


キョトンとした表情で私に名前を聞いてきた一人の女の子がこちらの目を覗き込んでいた。


その顔は今でもはっきりと思い出せる。



思わず見とれてしまうくらい可愛かった。





「ん?わたし?わたしは玲奈!桐谷玲奈っていうの!」


私が答えると


「れなちゃんていうんだ!わたしはね、さやか!よこたさやかっていうの!よろしくね?」


女の子は、


パァァーと明るい表情になり私に抱きついた。



その時私は思った、



あっ好き!




と、




思ってしまった。




これが私、桐谷玲奈の初恋、


そして……










……そして同時に悪夢の始まりだった。


それは今となっては思い出すだけでも吐き気を催すほどに気色の悪い記憶、





できるなら、忘れたい、


それができなくとも、せめて捻じ曲げて、少しでもマシな記憶にしたい、



でもそれは、




私の中の一番深いところにあって、壊すことも、忘れることもできない、



この先も私にずーっとついて回ってくる、重い枷のような、



決して逃れることのできない記憶である。






––––––––––––––





その日以来、



私とさやかはいつも一緒にいるようになった。



ホント、今思うとなんで名前聞かれただけであんな奴になついてしまったのか、非常に腹立たしい。




でもあの時は、とっても嬉しかった。




初めて私に話しかけてくれた人、



私を、何もない世界から、楽しいことであふれた世界に引っ張っり出してくれた人、




……横田さやか……




さやかはとても活発な女の子だった、


私はあちこち連れまわされ、その度にイタズラの片棒をかつがされた。






イタズラや落書きをいたるところにした後は、先生に見つかり、説教部屋へ連行されて、二人一緒に先生に叱られるということは、もう何回くらいあったか思い出せない、




その度にもう嫌だ、こんな人と一緒にいたくない、と思った。






こんな酷い思いをするくらいなら一人でいた方がマシだったとも何度も思った、






でも、彼女は離してくれなかった。




無視しようとすると、あらゆる手段で私に口を聞かせ、気がつくと、私はさやかと笑いあいながら話をしていた。





いつもさやかは私に楽しいことを教えてくれる、私の大切な親友、





おそらく、さやかが話しかけてくれなければ、私はあのまま一人でボーっとしてる毎日を繰り返すだけだっただろう、



だから、そんな私を引っ張って色々な、楽しいことを見せてくれる、さやかについて行こうと、当時の私は思った。



その行動が、後に私に大きな傷を残す結果になるとも知らずに……、









––––––––––––





現在、




日の光も当たらない、暗い部屋にて、








「玲奈……」





愛しい人にようやく会えたといった感じで玲奈の名を呼ぶ女の子、


その声を聞いた玲奈は、





「⁉︎……さやか?」




声は震えており、あゆみになら、どれだけ酷いことを言われても平気な顔でいられる玲奈だが、



その知り合いと思われる相手の女の子に名前を呼ばれるだけで、いつもの反応とは明らかに違う、



この世の終わりみたいな表情で、そのさやかという女の子の声のした方を向く、



その様子は、その声の主のことを、本気で拒絶している、といった感じだ、






玲奈は現在、両腕を後ろ手に縛られ、何かの布で目隠しをされている状態で床に転がされている。


両足も縛られ、立ち上がることも出来そうにない。





しかし、身動きが満足にできない状態であるにもかかわらず、身体を必死にくねらせて、声のした方から少しでも遠くへ逃げようとする玲奈、



「覚えててくれたんだ!嬉しい!そう!さやかよ!玲奈!久しぶり!声だけなのによくわかったね!さすがはわたしの親友だよ!」




嬉しそうに、




身体を縛られて、床に転がされている玲奈を見下ろしながら言う、さやかという女の子、




さやかの返事を聞いた玲奈は、





「ああっ……いやあぁぁ……」



力が思うように入らないのか、絞り出すような、悲鳴のような声を上げながら必死に身体を動かす、



だが、なかなか距離を進めない。




すると、



「玲奈?……どうして逃げるの?」


キョトンと、


自分の思っていた反応と違う行動をしている玲奈を見て、不思議そうに玲奈に問い、近づいていくさやか、




「いやっ……こない……で……‼︎」




この状況ではどうやっても逃げられないと悟りながらも、なお、逃げようとする玲奈、




声は涙声になり、目隠しの下からは涙と思われる水滴が頬をつたっている、




だが、すぐにさやかに追いつかれる。




逃げる玲奈に追いついたさやかは、玲奈の身体を抱き抱え、うつ伏せに這って逃げようとしていた玲奈を、仰向けにして、自分の方へ向かせると、目隠しを取る、





すると、顔を涙でぐしゃぐしゃにしている玲奈の顔が露わになる、



「あぁぁ……いやっ!……さわら……ないで……」


明らかに混乱している玲奈の顔を見たさやかは、



「玲奈⁉︎ねぇ玲奈‼︎しっかりして‼︎」




肩を揺すり正気に戻るよう、呼びかける。



すると、少し、正気を取り戻したらしい玲奈は、自分が今どんな顔をしているのかを悟ったらしく、顔を隠すように、さやかから顔をそらし、さらに、さやかから離れようと暴れ出す。



さやかは、涙をボロボロ流しながら暴れて、自分から離れようとする玲奈を落ち着かせようと、視線を合わせ、声をかける。



視線が合った瞬間、玲奈はハッとした様子で、慌てて目を閉じ、首を横に向ける。



さやかはその首を無理やり自分の方へ向かせ、目を合わせようとする。




そして、玲奈が時々目を開けると問答無用で視線が合うようにする。




視線を合わせるたびに、きつく目を閉じて首を回す玲奈を押さえつけ、


無理やりにでも目を合わせようとするさやか、



しばらくそんな不毛な争いをしていた二人だが、



「玲奈‼︎目……合わせてくれないと……このままキスするよ……?」




「なっ……!」




唐突に出たさやかの一言により、



ようやく、諦めがついたのか、大人しくなる玲奈。




すると、さやかは、玲奈からの抵抗が無くなったことを確認すると、




「ねぇ?玲奈、ホントどうしたの?私のこと、覚えてるんだよね?やっと会えたのに、どうして逃げようとするの?」


と、尋ねる。


尋ねられた玲奈は



「逆に聞くけど……その……理由なら、さやかの……方が……心当たりあるんじゃない……?」



中学を卒業してすぐ、自分が私にしたことの意味をよく考えてみら、そしたらどうして今、どうして私がさやかから離れたいかくらい、わかるでしょ?



最後までは言葉にできなかったが、そういった思いを混ぜて言う玲奈、






本気で怒っている様子の玲奈だが、


その怒りの対象のさやかは、




かなり攻撃的な言い方とは言え、ようやくまともな返事が聞けた。





ホッと胸を撫で下ろし、一安心している様子、






ひとしきり暴れた後ということもあり、



玲奈も少し頭が冷えた様子で、今度は玲奈の方からさやかに質問をする、




「ねぇ……さやか……」



「ん?何?」




「どうして……急に……私の前に現れたの?」




……あなたは中学を卒業すると同時に、私のことを捨てたくせに……



と、頬を膨らませて問う玲奈、



するとさやかは、



「どうしてって、好きな人に会うのに理由なんて、いる?」



「ふざけないで!アンタなんて、キライよ!人のこと、バカにして!何が好きな人よ!」




アンタが、あの時、私のことを捨てたクセに、自分の都合のいい時にだけ、そんなこと言わないで!







だが、さやかは、


ようやく合点がいったかのような、なるほどね、という表情になり、





「やっぱり、玲奈、勘違いしてたんだね」


と、不安そうな玲奈とは逆に、安心した様子で答える。


「勘違い?どうゆうことよ⁉︎あなたは中学を卒業すると同時に、私との繋がりをことごとく消して何処かへ消えたくせに!」




–––––––––––––





さやかとは、ついに中学の卒業式の日まで、玲奈とクラスが一度も離れることもなく、ずっと一緒にい続けた、




1日の中のほとんどの時間をさやかと過ごし、玲奈にとって、それが当たり前になっていた。







そして、そんな毎日が、例え、違う高校へ通うことになっても、変わることなく続いていくと、玲奈は思っていた。




玲奈は、普通の家庭に生まれ、普通に育ってきた。


その為、高校も、普通の高校へ通うことにした。





さやかは、どこぞのお金持ちの家に生まれていたため、


中学までは普通に通っていたが、高校は、さすがにお金持ちの通うような、レベルの高い高校へ通うことになっていた。




だが、仲の良かった二人は、


高校が違うくらい、なんとも思っていなかった。






「私達は離れててもずっと親友だよ?連絡も毎日するし学校終わりに会える日は毎日会お?」




そう言い合い、卒業した後も、当たり前のように、それまでの日常を送るつもりでいた。







……少なくとも、玲奈は、





目指すべき目標であり、かけがえのない親友、



いつしか、



玲奈にとって、さやかの存在は、対等ではなくなり、常に自分の上に、先にいる存在となっていた、



私は、さやかを目指して進めばいいんだ、


そう思い、いつもさやかを目指して努力していた玲奈、



ずっとそうやって、さやかを追いかけて生きていくつもりだった玲奈だが、



……離れていても親友、毎日連絡する、会える日はいつでも会おう、等といったことをさんざん言って別れた後、



さやかによる突然の裏切りにより、その目標をアッサリ断ち切られる。





それは卒業式の次の日、



玲奈が、さやかにメッセージを送ってみた時に発覚する。





待てど暮らせど返事がない、どころか、着拒されていたという、並の精神ではとても耐えられない残酷無比な仕打ちをされていたことが、





それが原因で、玲奈は人を普通に信用することができなくなり、高校生活の出だしからボッチ道を突き進む羽目になったのだ、



親友だと思っていたのは自分だけだったんだ、


今頃、玲奈の知らないところで、さやかは自分を散々馬鹿にしていることだろうと何度も思った。




私は、さやかを……




絶対に、許さない‼︎




そう、誓っていた。




こうして、楽しかった思い出は、さやかの裏切りにより、忘れたい思い出となり、




目指すべき目標は、憎むべき対象となった。




–––––––––––––––





そんなさやかが、約一年半ぶりに、玲奈の前に現れた。



それも突然に、


そして、玲奈が今まで裏切りだと思っていたことを勘違いだと笑った。




さやかの、玲奈をバカにした様子が気に障ったのか、声を荒げてさやかに噛みつこうとする。


両腕が自由ならさやかを押さえつけて喉元喰いちぎる勢いである。



が、対してさやかは、


冷静に、


「確かに、あんなこと言った後すぐ、何も言わずに玲奈との連絡を絶ったのは悪いと思ってる、ごめんなさい、でもあれには理由が……」


「聞きたくないわ‼︎私、本気で怒ってるんだよ⁉︎今更あれにどんな理由があったかを聞いたところで私、さやかを許す気ないから‼︎」



例え、


あの行為に今の状況をひっくり返すだけの理由があったとして、玲奈自身が負った、心の傷が癒えることはない、


仮に、




さやかの言ったことが本当だとして、




今の自分の怒りがただの勘違いで、さやかは私のためにあんなことをしていたのだとか知ってしまったら、


さやか自身も辛い思いをしていたとか、言われたら……




やっぱり、さやかのことを許す気にはなれない、





さやかにはこのまま私を裏切った悪者でい続けてもらわないと、いけない、



何故なら、



もし、



あれに今の状況をひっくり返す理由があって、さやかもまだ、私のことを好きでいてくれていると知ってしまったら、




……私、また、さやかのこと、好きになってしまいそうで、怖いのよ……





いくら、心に深い傷を負わされた相手とはいえ、



ついこの前まで好きだった人のことを、急に嫌うことなんて、出来るはずがない、





「そうよね……私は玲奈に酷いことをした、あのことを、今更玲奈になんと言われようと何も言い返せないわ」




でも‼︎





と、さやかは、それ以上聞きたくないと、さやかの話を拒絶する玲奈の目を見据え、続ける。





「それでも、まだ少しでも私のことを信じてくれるなら聞いて欲しい……玲奈‼︎あなたはあの時も、そして今も、とっても危ない状況の中にいるの‼︎」




「えっ⁉︎」


危ない状況の中に?私が?



……何で?



なんか、思っていた理由と違い、今までの怒りやら何やらがぶっ飛んだ玲奈、







全く危ない状況になる心当たりが無い玲奈は、







キョトンと、




アホヅラを晒すことしかできないのだった。






–––––––––––––––








……とまぁ、何だか玲奈の心が揺れに揺れておりますが、


このままだと、玲奈お姉ちゃんが、パッと出の女の子に持ってかれそうなので、

私もちょっとだけ、本気を出させてもらおうと思います。




普通なら、こんな時、ヒーローがカッコ良く駆けつけて、玲奈お姉ちゃんを救い出してくれるところですが、



現在、そのヒーローとなり得る存在の、あゆみ、理沙、私、あと大穴枠として修行中のMIOさんですが、




MIOさんは言うまでもなく、行方不明、





理沙さんは、さやかの手下共と、玲奈を守るための交戦中、


(もうお姉ちゃん捕獲されてるから戦闘やめさしてこっち来さすか?なんかそれが一番無難な気がする……)






私はお姉ちゃんの家でポテチを……っと危ない危ない、私は現在、こうして解説入れていて、直接物語に干渉は出来ません、なんせ、全部把握している私が動けばなんも面白くないですからね!



という感じで、



誰も現在の玲奈の状況を知りません、



なので、私がチョチョイ!とそれとなく伝えてみようと思います、





そして現在、




マトモに動いてもらえそうなのは……理沙さんだけですね?




では!理沙さんに伝えに行きましょう!






……あっ!最後の切り札として、一回玲奈を逮捕しかけたあのお巡りさんに連絡入れたら即解決しそうですが、それは無しで、


あの人に仕事をさせてはいけない!






そして、メインヒロイン?ヒーロー?のあゆみは……

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