思わぬ伏兵(えぇっ⁉︎私ですか⁉︎)
玲奈の家にて、
「……ってゆーかさ、あんた誰よ?」
開口一番、何か意味不明なことを言い出した玲奈、
「……」
当然、それに答える者は…いない…
「ホラあんたよ!そのなんか私らの考えてることやら動作やらにいちいち解説みたいなんいれてってるあんた!」
なんか言い出した玲奈、
「……無視……やめてくれないと……いい加減……泣くわよ?私、無視と陰口だけはマジで耐えられないから」
私、泣くとすごいんだから!
とちょっと涙目になりながら何か言って
いる玲奈、
「……」
……だがその声に答える者は……いない
「……うぅっ……お願いよ〜…返事くらいしてよ〜、本当に泣いちゃうわよ⁉︎」
目に一杯涙を浮かべて何かに必死で問いかける玲奈、
「それよ!それ!……いい加減気づきなさいよ!今私の必死に訴えてる様子を面白おかしく解説してるあんたよ!そろそろ私のメンタルが限界だからなんか反応して下さいお願いします!」
涙を流しながら何かに必死で訴えている玲奈の様子を面白おかしく解説している誰か、とは?
「えぇ⁉︎……ひょっとして、私のことですか⁉︎」
どうやら玲奈は(自分)に言ってきていたようだ
「そ〜よ〜‼︎や〜っと反応してくれた〜それだけで玲奈、幸せ(ハート)」
やっと救われる〜といった表情で天を仰ぐ玲奈、
「っと、解説は置いといて、あの…私に何かご用でしょうか?…私、これでも忙しくて、あまり長くお話しできないのですが」
解説は大変なのだ!
「いやね?暇だったから、日頃気になってたことにでも突撃取材してみようと思って」
「はぁ〜……、だからって、別に私に話しかけなくてもいいじゃないですか!私は声だけの出演ですし、名前も無いし姿だってありませんよ⁉︎」
悲しい話ですけどね!
「いやっ、フツーに今私の目の前にいるじゃない、あなた、こうして話もできてるし……まぁ、たしかになんかいると言われればいる感じがするし、いないと言われれば見えない気もするけど」
うーむ
と悩む仕草をする玲奈、
ちなみに、
今日は平日、
時刻は午後2時ちょっと前だ、
普通なら今頃学校で授業を受けている時刻だが。
玲奈は現在、玲奈の家の、玲奈自身の部屋で、こうして解説を入れてる私に話をしてきている。
ではなぜ彼女は今、学校にも行かず、こんな暇そうな事をしているかというと、
玲奈は、最近、授業の合間や昼休みに、親友、あゆみとイチャイチャするための、二人っきりになれそうな場所を探して学校内にある、立ち入り禁止の場所を巡っているのだが、
昨日、ついにその悪事が先生に見つかり、補導された、
しかし、
玲奈はその日の昼食をあゆみと食べるという、なんとも言えない目的のため、逃走する。
その後、玲奈捕獲隊の先生方との大乱闘をした末、捕獲、みっちり説教された上、一週間の停学処分をくらっていた。
という訳で現在、自分の部屋から出ることすらできず、だからと言って、勉強なんてする気などさらさらないため、ものすごい暇らしい
「……あなた、今なんかめっちゃ失礼なこと言ってるでしょ……」
ジトー
と半目で見てくる玲奈、
「まっまさか!あははは」
ごまかす私
「嘘だったら全裸で登場させて街中引きずり回すわよ?」
「ごめんなさい考えてました素直に謝るのでそれは勘弁してください」
この人は言ったことはマジでしてくるので逆らうととんでもない目にあう、
という訳で、ここは素直に土下座で謝る、
まぁ、姿が無いので土下座してるつもりで話をしてます。
「……そう……」
「……はい……」
沈黙、
重い空気、
蛇に睨まれたカエルの気分、
ちょうど、私の胃がキリキリ言い出し限界を迎えようとしたところで、
玲奈が話しかけてくる。
「……ねぇ?」
「はい何でしょう?」
「私今ものすごい暇なのよね」
「存じております」
「だからさ」
「はい」
「何か面白い事やって?」
「……」
…………
はい、
無茶振りキター!
何?何?急に、
面白い事?
玲奈さんて、一体何が面白いと思うの?
面白いの基準は?
しゃべり倒せばいいの?
それとも姿が無い私に対して面白い行動を起こせと無茶なこと言って私を困らせたいだけ?
色々私が考えていると、
「……じゃあ、あなたの姿を決める所から始めましょうか」
「……は?」
どうやらどちらでもなく、私を登場させて本当に何か面白い事をさせたいらしい。
「……そうねぇ〜…まずなんか喋り方が年下っぽいから後輩ね?それで、内気な感じもするから髪型はおかっぱでしょ?で、ぱっと見小学生かってくらい小柄なの!でねでね?……」
なんか色々勝手に作られていく私の姿、そして、
「はいっ!完成〜!ってウワッ‼︎何この子!可愛すぎるわ!」
まぁ私の趣味嗜好を全力で積み込んだから私のタイプど真ん中になるのはあたりまえだけどね?
と続ける玲奈、
そしてその玲奈のタイプど真ん中な姿にされて登場させられた私、
「ジー……」
「……何でしょう?」
めっちゃ見つめてくる玲奈の視線に耐え切れず問うてしまう私、
「あなた、今日からわたしの妹ね?年子は何かと大変らしいから二つ下の」
なんか勝手に家族にされた私、
「急ですね?」
戸惑いを隠せず後ずさりしながら言う、
だが、
まぁ今日はそんな気分なのだろうと暇そうな玲奈の姉妹ごっこに付き合うことにする、
「……まぁ、今日だけならそうゆう設定でいいですよ?」
と言ってみる私、
「じゃあ脱いで?」
コンマ1秒もたたないうちになんか物凄い勢いで食いついてくる玲奈お姉ちゃん
えっ⁉︎今なんて⁉︎
脱ぐ⁉︎
私が⁉︎
何で⁉︎
言葉の意味が理解できず頭が真っ白になり、あわあわしてる私、
その様子を見て何かを悟ったらしい玲奈は、キョトンとしながら
「ん?どうしたの?姉妹なら裸で接するものでしょ?そしてお代官様ごっこがテンプレよ!」
え?そうなの?わたしの中の常識が間違ってたの?姉妹なら裸でお代官様ごっこをするものなの?
もう、
ワケガワカラナイヨ
グルグル回る思考の中、
私は、
––––––––考えることをやめた––––––––
その後、
玲奈の部屋にて、
裸で絡み合う女の子が二名、
「あははくすぐったいよお姉ちゃん!」
「よいではないかよいではないか〜!」
結局、
我を失った私は、玲奈に服をはぎ取られ、一糸まとわぬ姿で、全裸で襲い来る玲奈を必死に拒む、という設定のお代官様ごっこをしていた。
後で思い出すと死にたくなるような実に恥ずかしいことである、
その状態が約二時間ほど続き、二人の体力が尽きたことにより、この悪夢は終わりを迎える。
「はぁ〜、疲れたわね?」
「ハイ〜何か汗かいちゃいました。」
「クンクン……」
「もぉ〜やめてよね?お姉ちゃん!恥ずかしいから」
「何を今更、私達、姉妹じゃない!」
「そっか……じゃあ、いっか……」
何が⁉︎何がじゃあ、いっか……なの⁉︎
何も良くないじゃない⁉︎しっかりしなさい私‼︎
今なら分かる、
あの時の私は玲奈に洗脳されていたのよ!
なんか物凄いお姉さんオーラ出してくるから思わず飲まれちゃったのよ!
素であんな変態のことをお姉ちゃ〜んなんて思うわけないわ!だから……
「ねぇねぇ!一緒にお風呂入りましょうか!」
「うん分かった!一緒に入ろ!お姉ちゃん‼︎」
…………
結局、
最初に私が言った今日だけという期限は無視され、
次の日以降も私は玲奈お姉ちゃんの妹をすることになるのだった。
と、いうわけで、
今日、私にお姉ちゃんが出来ました。
–––––––––––––––––
一週間後、
玲奈が停学処分をくらってから一週間、ようやく外出許可がおり、一週間ぶりの学校へ向かうべく歩く玲奈、そして隣には、停学中に、玲奈宅にて、玲奈によって半ば強引に登場させられた少女が歩いている。
家を出てしばらく歩いていた二人だが、玲奈が同じく学校へ向けて歩いているあゆみの背中を見つけ、
「おぉ〜いあゆみ〜!会いたかった〜」
と駆け寄っていく、
「お……おはよう……」
会いたかったような、会いたくなかったような、複雑な表情で玲奈に応えるあゆみ、
あゆみに追いついた玲奈だが、挨拶の次に、
「……という訳で、昨日、私に二つ下の妹が出来ましたー‼︎」
バーン‼︎
と、いきなり自分の隣にいた少女––私を紹介し出す。
当然、
ワー‼︎パチパチ‼︎
なーんて、
なるはずもなく、
「……アンタ……ついに本当の犯罪者に……」
と絶望の表情で言うあゆみ、
「だから、誘拐違うって!説明したでしょ?昨日出来たの!」
と、
完全に犯罪者を見る目になっているあゆみに昨日の出来事を必死に訴える玲奈、
「昨日出来た妹がアンタの二つ年下なわけないでしょ⁉︎アンタの両親二人とも健在なのに……それとも複雑な家庭の事情?なら何も言わないけど」
となんか申し訳なさそうな目で見るあゆみ、
「あっあの!私からもいいでしょうか?」
お姉ちゃんのため、何かフォローしなくては!と、私が間に入る。
すると、あゆみさんは、
「何?警察突き出すならなら早めにしときなよ?その内手足をもがれて身動きが取れなくなった後、喉も潰され、言葉も話せなくされるかもしれないから」
「私そんな鬼畜じゃないわよ‼︎」
「そっそうです!玲奈さんは……お姉ちゃんは、そんなことしません!むしろ何もなかった私に姿も名前も与えてくれた人ですから!」
ジーン
と隣で涙目になっている玲奈はほっといて、話を進める。
「そういえば、あなた名前は?」
あゆみさんが私に質問を投げかける。
「私の名前は……」
名前を聞かれた私が答えるより早く、
もう復活したらしき玲奈が割り込み答える、
「この子の名前は桐谷綺礼よ!切嗣とどっちにしようか悩んだんだけど、やっぱり切ってつなげるのはあゆみじゃん?」
なんかうまくいった気なのか、ムカつくドヤ顔で話に割り込んできた玲奈お姉ちゃん、
対してあゆみさんは、
「私が死んだ目をしているって言いたいの⁉︎きっちり見てみなさい!生き生きとしているから!あんた!何うまく言った気になってんのよしばくわよ⁉︎」
半ギレで返す、
すると玲奈お姉ちゃんは、
「と言うのは冗談として……」
「冗談なんかい‼︎こっちは大真面目にきいてんのよ⁉︎真面目に答えないとマジでぶっ殺すわよ?」
「フッ、命乞いの算段ぐらいはついている。」
「だからそれ冗談だったんでしょ⁉︎もういいわよ!アンタには聞かないわ!そこの妹!名前!」
「はいぃ!わっ私の名前は遠坂…」
「ちなみに!ふざけたこと抜かしたらこの先一週間、食べ物が喉を通らなくなるくらいグロいホラー映画鑑賞大会がはじまるから。」
「桐谷桜です、よろしくお願いします」
初対面の年下相手になかなか当たりきつくないですか⁉︎あゆみさん⁉︎
「冗談じゃないでしょうね?」
どっかの間桐さんだったりしないでしょうね……と一応聞いてみるあゆみ、
「はい、今度こそ本当です」
「なら、許す!ちなみに玲奈は死刑ね」
「えっ⁉︎何で⁉︎」
「なんかむかつくから」
「あぁ……なんて理不尽……でも、好きかも……こうゆうのも」
相変わらずキモイ顔して地べたを這いずり回り出した玲奈はほっといて、
「ところで桜、アンタ私達の二コ下ってことは今中三でしょ?夏休み明けの中三って受験とか大丈夫なの?」
受験生が追い込みの時期である夏に何やってんだと、不思議そうに聞いたあゆみだが、数秒後、それを激しく後悔することになる。
「えっ?ああ大丈夫も何も、私この世に存在しないものですし、学校にも行く必要が無いんです。もし仮に行かなければならないとなっても、あゆみさん達レベルよりははるかに学力上なので勉強なんて必要ありません」
「……」
……ひょっとして痛い子なのかな?この子、と、
私の言ったことに、どこからツッコむべきか、それとも、触れてほしく無いところだったなら軽く流してやるべきなのか、反応に困ってるあゆみさん、
なんだか言ったこっちもいたたまれなくて、適当にでもありえそうなことを言っておけば良かったかなと後悔してしまうような気まずい雰囲気、
沈黙が続く中、
何気なく足元に目をやると、
ウゾウゾと、
二人の足元で、私達の気まずい雰囲気よりももっといたたまれない生物が蠢いていた。
それは歩きながら話している私とあゆみさんに置いていかれていた玲奈お姉ちゃん、
どうやら、歩きながら話す私達を、地べたを這って追いついてきたらしい、
お姉ちゃんは、おおよそ人間にはできそうに無い、実に気色悪い動きで、一体あの体はどうなっているんだ、というようなありえない場所を曲げたりくねらせたりしながらこちらへ向けて地面を這って来ていた。
「あ〜ゆ〜みぃぃぃぃ〜!」
「きぃぃぃぃゃゃゃゃぁぁぁぁぁ‼︎」
「………」
と、
状況を冷静に見て説明してみましたが、あゆみさんの悲鳴を聞いて我に帰りました。
なんというか、
……これはキモイです……形容しがたいキモさです、
シャコやらグソクムシやらみたいな足だけを高速で動かして移動しているお姉ちゃん、
顔はもちろん獲物を見つけたハイエナみたいな顔で、ヨダレをダラダラ垂らして迫ってくる様はもう人とは違うなにかです、
……私、お姉ちゃんのそんな姿見たくなかったよ……
まぁこの後きっちりあゆみさんに駆逐されましたけどね!
–––––––––––
「はぁ〜楽しかった!」
「それはあのキモい動きが?それとも物理で殴られるのが?」
「モチ後者!」
「お姉ちゃ〜ん……」
前々から分かってたことですが、
もうダメそうです、お姉ちゃん
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