お待たせしましたね…さぁて、第二回戦と行きましょうか…

私の名前はMIO、



いきなりだけど私には好きな人がいる。



でもそれは叶わぬ恋、とあきらめて、彼女のことをただ影から見ているだけでよかった、


なのに、


夏休みが開けてすぐ、あの女が現れた。



そいつは突然現れて、私から玲奈を奪っていった。


許さない、あの女から玲奈を取り戻す!


と誓う。



だが、そうは言っても何か作戦があるワケでは無い、


困っていたところ、


ある噂話が私の耳に入ってきた



それはあきらめていた私の夢を叶えることができるもの、



私はそれに賭けることにした。






学園七不思議の内の一つ、私が注目したものの呼び名は––––––





–––––『LOVE.NOTE.』–––––








そのノートは、元々ただのノートだったのだが、ある原因によって特別な力が宿った、というものらしい、



それは元々そのノートの持ち主であった一人の少女の力によるものらしい。


その少女は、十年ほど前には、今私が通っているこの学校に普通に通っていた普通の生徒だった。


でも、その女子生徒にとっての普通は、周りの言う、普通とは少し違う普通だった。


「この世界はラブで満ちている‼︎」


これがその少女の口癖だった、



少女はその頃、許されざる者に恋をしていた。しかし、周りの人間はそれを許さず、少女は否定された。


しかし、少女はそれでもその者のことを愛そうとしていた。



少女はこの世界にあるものなら何であっても愛することが出来ると信じ、


愛してはいけないものはない、あってはならないと考えていた。




この世界にはありとあらゆるラブの形があり、それらを止めることや批判することは誰であっても許されるものではないのだ。





そして


その少女の願いとも言える少女の思いを、ある一冊のノートに記した。




後に現れるかもしれない、自分と同じ、叶わぬ恋に悩む少女達に向けて、


そして、その少女の強い思いが、ただのノートに力を与えた。



それが、開かずの教室にある


『LOVE.NOTE.』なのである。



–––––このノートには叶わぬ恋を叶える力がある–––––––



ゆえに、



このノートの力を使えば、私の中の、私自身では絶対に変えることのできない、普通という考え方の概念を破壊し、女の子同士の恋愛も出来るという考え方を得られる。



私も愛する玲奈との恋愛が出来るようになる。


そう信じて、この『LOVE.NOTE.』に賭けてみることにした。


「まずはその開かずの教室を探してみることから始めようかしら」


何よりまず、そのノートを探さなければならない、


ただ、



「どこにあるかは記されてないわね」




とりあえず、らしいところをあたってみるか、



まずは自分のいる教室から一番近い空き教室を回って、それでなければ次は普段生徒の立ち入りが少ない場所を見て回ろうと、第一候補の教室の中へ入る。



「……」





…………







……あった……




教室のドアを開けて入り口をくぐってすぐに、おそらく目的のものが見つかった。



それは、教室に入ってすぐの場所にある机の上に置いてあった。




確かに、見た目は普通のノートだ、



ただ、表紙には


『LOVE.NOTE.』



という文字が金色の字で書かれている。



それに、なんだか、普通じゃない力を感じる、


でも、


「もう見つかったの?」


唖然とするMIO、



「まぁ、探す手間が省けたのは良いことだけど、こんなに簡単に見つかるものなんだ、」


そもそも実在したんだ、七不思議、


等考えながらも、


とりあえず確認のため、ノートを開いてみることにするMIO、



「……何コレ……」


ノートを開いてみると、


一ページ目に


『悩める女子たちへ、天才‼︎未知瑠ちゃんによる、叶わぬ恋を叶えるための必勝法伝授‼︎……私に任せなさい!」


という、なんとも不安しかいだけそうにない文章が書かれていた。





……めっちゃでかい字で、この文章だけで開いた一ページ目が埋まっているほどに。


「アホくさ……」



これは期待できない、


他を当たるか、


と、


ノートを閉じようとしたMIOだが、




「……何故、ページをめくってしまったの?」


ノートを閉じようとして動かした手だったが、何故か逆に次のページを開いてしまっていた。


そして、開かれた次のページには



『まぁまぁそう言わずに〜話だけでも聞こうぜぃ〜?』


ノートに書かれている文章が、何故かこちらの考えを先読みして書かれているとしか思えないくらい、的確に話しかけてくる、



⁉︎



話しかけてくる?ですって⁉︎



『そう、今、あなたはこの私、未知瑠ちゃんとお話ししているのだ!』


次のページに書かれていた、この文章を見て、MIOはようやく理解した。



あぁ……



これは普通じゃ無い、


この学校に伝わる七不思議の内、少なくともこの『LOVE.NOTE.』は、


実在するのだと、


こうして、叶わぬ恋をする普通の女の子、MIOと、その恋を叶えるという噂の、七不思議の一つ、『LOVE.NOTE.』

との、奇妙な対話が始まったのだ、





––––––––––––––––––







「……一体、どうなっているの?」


あまりの現実離れした事態にとまどい、一人呟くMIO、


すると


ペラッと



風もないのにノートのページがめくれ


『ハロハロ〜!悩める乙女の願いを感じてやって参りました!我らが女神!未知瑠ちゃん!満を持して登場で〜す!』



という文章が現れる、



「未知瑠?さっきからよく出てくるけど、これを書いた人物の名前かしら?」



すると再びページがめくれ、




『ヘイ!そこの色々突っ込むところ用意したのに全て無視して名前に突っ込んできたお嬢さん!いいでしょう!答えてあげます!そう!何を隠そうこの私、このノートを生み出した超本人!名前を未知瑠といいます!このたびは、学園七不思議などという非常に愉快な称号をいただき、一部の乙女の間で有名になりました!そして今回!あなたの願いを叶えるべく、他ならぬあなたの前に現れさせていただいたのです!』


どうやら、この『LOVE.NOTE.』は、本自体に意思があるわけではなく、この未知瑠ちゃんとやらが何かしらの方法でこのノートを通して私に話しかけてきている類のものなのかもしれない、



まぁ、仮にこのノートが本物で、意志があり、自在に見え隠れができ、今回、私の願いを聞きつけて私の前に現れたのだというなら、


普段いくら探しても見つからないことにも、このノートの力を必要とした私が探すとすぐ見つかったことくらいには、まぁギリギリ納得できる。




逆に、これら全てが、誰かがこのノートを見て考える事を予測して書いていたものだというなら、実にご苦労と言うしかないような、MIOの考えに完璧に答えてくるノート



とりあえず会話は成立してるし、こうゆうこともあるんだ程度にはノートのことを信じるとして、



「……で?どうすんの?確かあんたの力使うには、私の一番大切な何かを払わないといけないらしいけど、何払うかくらいおしえてくれんの?」


いきなり魂だのを持って行かれてはたまったものではない、


『アーアレネー、アレ、デマだから、』


急にカタコトになったノートの文字で話す未知瑠ちゃんとやら、


「は?」

しかもこの噂の一番ハードルが高いと思われていた代償がいらないという、


『あれはね?実は私が力を貸すに値するか、その子の覚悟を試すために広めてもらってるの!』


「はぁ〜……」


『そもそも、私は悪魔でも死神でもないし別に相手の何かが欲しくてやってるわけじゃないのよ!私が願うことは一つ、悩める女の子が幸せになること!その子が幸せになれるなら、何かをあげるならまだしも、何かをするときに必要になるかもしれないものを奪うなんてありえないわ!』


第一!


というところでページがかわる。



『私を頼りたいくらいに叶えたい恋をする女の子にとって、一番大切なものは、

ズバリ!愛でしょ!私がもし仮にその子の一番大切な何かを貰うんだとしたら愛を貰うことになるわよ?それじゃあ色々成り立たないじゃない?』


「……ですよねー?」


恋をする女の子にとって一番大切なものは、間違いなくその対象を愛する気持ちである、そんな子から一番大切なものを奪うとしたらその愛する気持ちになるんじゃないか?


と、薄々気づいていたMIO、


じゃあ何を払えば?


と考えるMIOだったが、


『じゃあ、本気で私の力を借りたいと思うなら……』


やはりタダではないらしい、

何やら条件を提示しようとするノート、ペラペラと勝手にめくれながら話を進めていく、そしてピタッとあるページでめくれるのが止まる、


そこにはデカデカと、







『この講座に十日以内に––––円、振り込んでね☆』


新手の詐欺か!


と思わずノートを床に叩きつけるMIO、



大体、気持ちの次あたりに大切なものでしょう⁉︎現金は‼︎


これからいくらいるかも分かんないのに払えるか!



先ほど、結構いいことを言っていた未知瑠に対し、

このノート、いい奴だな、と思ってしまった自分を全力で後悔するMIO、


『ヘイユー!今後悔してるとこーかい?』


それじゃ、燃やそっか、


たしかあそこに焼却炉が……


等考え始めたMIOだったが、


抗議するかのようにバサバサとページが勢いよく開かれるノート、



見ると、


『マジでごめんなさい謝るのでどうか燃やすのは勘弁して下さい』



本気で謝っているらしい文面、

ただし、

土下座する少女の挿絵付きで、



…………、





何か可愛いから許す、



『とまぁ、冗談は置いといてそろそろ真面目な話をしようと思います』


「一体どこが冗談なのかしら?」


『お金あたりから』


「はいはい、で?真面目な話?」




『そう!あなたのこれからのこと』

「これから……」


すると、今まではバサッバサッと雑にめくれていたノートのページが、ピラッピラッと、なんだか相手を諭すように静かに開いていくようになる。



『そう!これからよ!あなたは叶わぬ恋をした。でもそれはあなた自身が決めた常識、自分が、自分の常識を超えることを拒んでいて、勝手に許されないこと、だとか、叶わない、とか思っているだけ、あなた自身が変わればこの恋は叶わぬ恋じゃなくなるわ‼︎』



そんなことは分かっている、

でも、


「でも……」

「何がでもよ?簡単なことじゃない、今までの考えを捨てるだけのことよ?私にかかれば一撃よ!』


何が一撃なのかは置いといて、



もし本当にこのノートを信じれば私の常識を変えられるというなら、ぜひその方法を教えていただきたい。


ということで話を進めることにする。


「……で?具体的にどうするの?」


『今ここで誓うのよ!何があっても愛を貫き通すって、そしたら私はあなたに力を与える、あなた自身を変え、そして並みいる恋敵達を蹴散らせるくらいの力をね?』



蹴ちらすテ……


だいぶ物騒なこと言い出したわね、


でも……


私、このままこのノートに頼らなくても相手を蹴散らすくらい出来る気がするけど


私を変え、玲奈の周りをうろちょろするあの女達を蹴散らせる力って一体……



MIOの微妙な反応からなんとなく察したらしいノートの未知瑠ちゃんは、




『それは勿論、戦うのよ!自分と、そして恋敵と!そうして乗り越えるの!自分の常識を!』


「戦う?まさか物理で?」


『そんなわけないじゃない!リアルファイトはお客様の迷惑になるから絶対にやっちゃダメよ!愛は物理で殴ったところで手に入るものじゃないわ!』


「じゃあどうやって……」



と悩みだしたMIO、



ノートのページはさらにめくれ



『そんなに悩むことじゃないわ!簡単なことよ、愛を貫くためにいるもの、それは相手を思い貫く覚悟と、恋敵達に負けないくらいの愛の力……ラブパワーよ!」



ラブパワーて……


なんじゃそら、




MIOが驚愕する。


『何それ?……って感じね?いいわ!説明してあげる、ラブパワーというのはそのまま、相手を愛する気持ちの強さ、戦うというのはそのラブパワーをぶつけ合うの!』


「ぶつけ合うって、つまり相手と向かい合って愛を叫び合えばいいの?」


『そんなわけないじゃない、バッカね〜、ラブパワーはラブパワー、それ以外何者でもないわ!』



「だからそのラブパワーがイミワカンナイんじゃない!」



MIOが言うと、


『そこから⁉︎全く今時の子供は……いいわ、これは知らないなら言葉より見た方が早いから、』


なんかやれやれといった感じで進める未知瑠、なんかムカつく、


悪かったわね⁉︎現代っ子で!いつの時代ならラブパワーが誰でも理解できるのかしら⁉︎


とMIOが考えていたところで、



バチィ‼︎っと辺りに電気が走ったように見えた


それはノートから発せられたものらしい、



瞬間、


何もなかったノートの傍に……



天使が舞い降りた……




「んなアホな…」


とつぶやいたMIOの前には、



背中に一対の翼を広げ、頭には光輝く転輪が浮かび、


全身からまばゆい光を放ち、先ほどまで薄暗かった教室を、黄金の光で明るく照らしている、見るからに美しい姿の女の人が浮いていた、


地面からは数十センチほど浮かんでおり、種も仕掛けも全く分からない、流石は七不思議としか思えないような、超常現象が降臨していた。




『ラブパワーは愛の力をこうしてそして具現化させたものよ!』



何よ⁉︎



ラブパワーは一昔前なら一般常識みたいな言い方して、



こんなの誰も知るわけないじゃない!


っていうか、


私達普通の人に出せるわけないじゃない!それこそバカじゃないの⁉︎


と思うMIOだが、


『大丈夫よ!私はそのために来たのだから!』


私にラブパワーを具現化する力を与える為に……


「だったら最初からそう言いなさいよ!散々人をバカにして」


『ごめんって、じゃあ、行くわよ?』



「えっ?行くってどこへ?」



『修行と言ったら山でしょう?さぁ決まったなら即行動!……そうねぇ〜、今から真剣にトレーニングすれば、一週間もあればラブパワー百五十万は目指せるかしら?』



その数値の意味は?



という疑問を飲み込むMIO、



という訳で私、MIOはしばらく山籠もりして来ます、





待っててね?玲奈!すぐに私が救い出すから!––––––––––






–––––––––––––


一週間後、



近隣の山の中にて、






「ほほっ!ほほほ!これはすばらしい!以前の私が嘘のように強くなった気がしますよ!未知瑠さん!」




MIOの声がこだまする、



未知瑠と呼ばれた、ノートに不思議な力を宿し、そこから意志の疎通をすることができる七不思議の少女は、




『確かに、以前とは比べ物にならないくらいのラブパワーになったけど、喋り方なんとかなんないの?』




「なりませんね!これこそが真の強者の喋り方だと、悟りましたから!」



『そうなのね……なら私は何も言わないわ、好きになさい』


「ええ!しますとも!未知瑠さん、今までご教授ありがとうございました!これからMIOは愛しの玲奈さんの元へ参り、この恋を成就させてきます!」



『もう私があなたに教えることはないわ、いってらっしゃい』



こうして、新生MIOは一週間ぶりに学校へ登校する。




その前日に玲奈が停学処分をくらって一週間の自宅謹慎となっているとも知らずに、



〜つづく〜

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