宿敵(恋敵と書いてライバル)、登場⁉︎
私の名前は MIO ––ミオ––
普通の高校へ通う普通の高校二年生、
これまで私は毎日毎日特に変わったこともなく、ただただ同じような毎日を繰り返し生きてきた、
そしてこれからもそんな毎日が永遠に続いていくはず、
–––––––そう思っていた––––––
私がこれからも続いていくと思っていた日常は、ある日突然終わりを迎えたることになる。
それは私が高校二年生に学年が上がってすぐだった。
その時起きた、とある出来事を境に私の普通の日常は……
普通じゃなくなった。
私の普通が崩れ始めたのは、私が高校一年生、つまり、今通ってる高校に入学してしばらくたったある日の、五月のごろの事、
全ては、通りすがりの、おそらく同学年と思われる、一人の女子生徒に目を奪われてしまったことに始まる。
校舎内の、人通りの少ない場所にあるとある女子トイレの前で、お弁当を持って歩いているその女子生徒に、私は何故か目を惹かれた。
その子は、一言で言うと、『不幸そう』な女の子だった。
顔は俯いていてよく見えないし、肩をすぼめて歩くその姿は、全体的に影が差していて、なんだか弱った野良犬を見ているかのようだった。
そして、その姿を見て初めに私が感じたのは、
「…可哀想な奴…」
だった。
おそらく仲の良かった友達にでも裏切られてグループから外されたのだろう、
なんて可哀想な女の子なんだろう、私にできることはなにかないかな?
と少しは考えたが、
「わざわざトラブル抱えてそうな子に近づく義理はないか……」
私は普通の日常を続けられればそれでいい……
と思い至り、
その女の子に関わることなくその場を後にすることにする。
しかし、
その後も、何度かモヤモヤと、お昼に見かけた女の子のことを思い出し、その度に深くは考えないように努力してきたMIO、今日も何事もなく家へと帰宅したのだが、
「ホント、なんでこんなにあの子のことが気になるのかしら……」
考えないようにしようと思えば思うほど
昼間に見た少女のことが頭から離れなくなるMIO、
だが、何があろうと普通の日常を続けるため、その少女には絶対関わらないと固く心に決めるMIOなのだった。
それからしばらくして––––––––
「…今日も来たわね、あの子…」
あの日、何故か目を奪われた少女のことを、深く考えないようにしていたMIOだったが、
その日以来、なんだかんだ言って例の少女のことが気になり、お昼休みの度に初めに少女を見かけた、校舎内にある人通りの少ないトイレの前に来るようになっていた。
いつも少女が毎日お昼を食べにここへ来ることを知ったMIOも、同じくここへ通うようになっていた。
そして今日はMIOの通う学校の前期の授業が終わって、明日から夏休みに入るという日、
最後にあの少女の姿を目に焼き付けようということで、いつもより力を入れて待っていたワケだが、
「…ホント…なんで私がこんなストーカーみたいなことしなくちゃいけないのかしら?」
勝手に一人でしている事に無性に腹がたつMIO、
そう言いながらも、その少女がトイレへ入っていくのを見届けると、自分もお昼を食べるため、教室へ戻ろうと身を翻す、
が、
「あれ〜?ミオじゃね?」
「あっホントだ〜!やほやほ〜ミオミオ〜」
と
MIOが振り返った先から歩いてきた、二人の女子生徒が、聞くからに頭の悪そうな、不愉快極まりない声でMIOの名を呼ぶ。
うっとおしいなーなんで今ここへ来るかなー?
という、苛立ちを隠す気もなくMIOは、女子生徒達へ向き合い
「何かしら?」
さっさとあっち行けという思いを全力でこめた声で返すMIO
「何?その態度、ウッザ〜」
「ね〜ミオ〜、ひょっとして、ミノムシの分際で私達のことなめてんの?」
ミノムシとは、MIOが中学生だったころ、当時同じクラスにいた、彼女らによってつけられたアダ名だった。
MIOは、阿保な親につけられたこの阿保みたいな名前のせいで昔から多くの人に弄られて非常に不愉快な思いをしてきた。
このミノムシというのも、MIOがつけられてきた数々の不愉快なアダ名の一つである。
そして、
なんで普通にひらがなや漢字の名前にしてくれなかったんだろう、
と自分の親を恨んだことも両手の指で数えられないくらいあった。
そんな時、この二人がMIOの前に現れた。
そしてこの二人が ミノムシなんてアダ名をつけたことよって、約三年間、名前を馬鹿され続けるという、思い出すだけで全身を掻き毟りたくなるような最悪の中学生活を送る羽目になった。
MIOが普通にこだわるようになったのもこのころからである。
高校ではそんなMIOの中学時代を知る人間のいない普通の生活が送れる、遠くの学校へ進学したつもりだったのだが、
どうやら彼女らもこの高校へ進学していたらしい、
そんな最悪の相手と再会してしまい、最悪の気分になったMIO
一刻も早くこの場を立ち去ろうと
「気に障ったのなら謝るわ、だから道を開けてくれないかしら?」
できるだけ下手に出て、穏便に教室へ帰るつもりのMIOだったが、
「はぁ?せっかく再会したんだからもっとお話ししよ〜よ〜」
「あははウケる〜」
急に馴れ馴れしく話しかけてくる二人、
だんだん心にドス黒いものが溢れてくるのを感じるMIO、
「ごめんなさい、私、今急いでるの」
このままここにいると死人が出る、
冷静に冷静に、
と自分で自分に言い聞かせながら最後の力を振り絞り、二人との意思の疎通に挑戦するMIO、
「じゃあ通行料、払えよ?」
急に無表情になった片方の女子生徒がMIOに金銭を要求してくる。
もうダメだ、
私は頑張った、こいつらが人語の通じないゴミ虫だったのが悪かったんだ。
…仕方ない、殺そう…
と、目の前の阿保二人に掴みかかろうとした時、
「あの〜…邪魔なのでどいてくれませんか?」
MIOの後ろから女性の声が聞こえる。
突然の出来事に今までの殺意が消え失せ、冷静になって後ろを振り向く、
そこには、
ここ最近、気になって気になって仕方がない少女の姿があった、
どうやらお昼を食べ終えて教室へ帰る途中らしい、
予期せぬ邂逅に言葉を失っているMIO
すると
「はぁ?何お前?」
「何舐めた口きいてんだよこのクソ女が!」
急にキレた二人が少女に掴みかかる、
止めないと、
と一歩踏み出そうとしたMIOだったが
次の瞬間、
床に倒れた二人を見て思考が止まる、
「……大丈夫、ですか?」
最後に立っていた少女に話しかけられ、
何とか思考を再開させるMIO、
「え、えぇ、私よりあなたは?怪我とかない?」
二人と喧嘩したにもかかわらず、何ごともなかったかのようにMIOを気遣ってくる少女に驚くMIO
「私は平気です、それよりも、人殺しはダメですよ?もったいない」
「…⁉︎…」
さっき自分がしようとしていたことを見透かされているような少女の言動に声が出ない
「何でそれを?」
思わず聞き返してしまう、
「私、分かるんです、そーゆーの、何となくですけど」
私を助けてくれたの?
私は貴方を見捨てたのに?
とは言えなかった、
かわりに出たのは、
「私を……止めてくれたの?」
「まぁ、私も似たようなこと何度もしてきましたから」
今目の前にいる少女と、私の思考は似ている、
似ているからこそ、さっき私がしようとしていたことに気がつき止めてくれたのだろう、
「お名前…聞いてもいいかしら…?」
何でか今、彼女に名前を聞かなくてはと思ったMIO、
「私は、桐谷玲奈って言います」
「私はMIOよ、たぶん同学年よね?敬語はなしでいきましょ、よろしくね?」
「うん、分かったわ、よろしくね?ミオさん」
ニコッと笑うその少女のことを無性に抱きしめたくなったのはナイショの話である。
「どうして私を止めてくれたの?」
その後、教室へ帰りながら話をするMIOだったが、一つ気になったことを聞いてみる。
「校内で殺人事件は流石に怖いから、」
「それに…」
と
桐谷玲奈と名乗った少女は、少し照れた感じで答える。
「もし、あそこでMIOさんがあの二人を殺っちゃってたら、MIOさんの方があのゴミ虫二匹より下ってことになっちゃうなって思ったから。そんなことでMIOさんの価値を下げるのは、もったいないなーと思って」
ふふっと
何気ない笑顔で告げる玲奈のことを見てMIOは、
あぁ……
…私はその子のことが好きなんだ…
そう自覚するまでにあまり時間はかからなかった。
何でこんないい子が一人でいるの?
私はこの子を救いたい、
いや、
私が、ずっと側にいて彼女を救ってあげないと、
–––––そして、あわゆくば、彼女とキャッキャウフフな毎日を–––––
そう思った。
その後、玲奈と名乗った少女と別れたMIOは、
桐谷、玲奈さん…か…
あんな子と付き合えたらな……
でも、女の子同士でそんな……
と延々考えていた。
でも、いくら考えたところで、
私には、どうやっても変えられない、『普通の日常を送る』という壁がある。
私の中の普通の恋愛とは、男女での恋愛だ、
その壁を前に、私は叶わぬ夢として、彼女との恋愛を諦めるという選択肢以外存在しなかった。
–––––だけど––––
それからしばらくして、
そんなある日も、私は、いつも通り、何の変哲もない日常を送っていた。
しかし、その時、全てが変わった。
「……何?あの女…」
玲奈が知らない女の子と何処かへ行ってしまった。
時期は9月、
つまり、玲奈があゆみと出会った瞬間を目撃してしまったということになる。
さらにその日以来、玲奈が来なくなってしまった。
どうやらあの日、玲奈と何処かへ行った女と玲奈が仲良くなっているらしい。
「あの女…許さない…私の玲奈を奪っていくなんて」
私はただ影から眺めているだけでよかった。
なのにあの女は、
あの女から、玲奈を取り戻す!
こうして、私の玲奈を取り戻すための戦いが始まった。
とはいっても何か作戦があるワケでは無い
どうしましょう。
と悩んでいたところ、
それは、聞こえてきた。
それはたまたま私が廊下側に席があり、そこに座っていたこと、
そして、丁度、私の耳に聞こえる範囲を、おそらく同学年と思われる女子生徒達が通ったこと、
その女子生徒達が非常に興味深い噂話をしてたのを私が耳にしてしまった時に、私の運命は変えられたのだ。
噂話によると、
この高校には、他の学校にもよくある七不思議的なものがあるらしい。
そしてその女子生徒たちは、その七不思議について一つ一つ言い合いをしながら、それらを実際にする?やらないよーといった軽い感じで流していっていた。
だが、
普通なら、私もその女子生徒達と同じく、ただの噂話と聞き流すところだが、
私は、なぜかその内容に酷く心を惹かれた。
おそらく、その中に私の夢を叶えることが出来るものがあったからだろう、
でもその時思ったのだ、
「これはただの噂話ではない」
と
その話を聞くまでの私は、本当に何の変哲もない普通の日常を、毎日毎日全く同じことを機械みたいにし続けていて、できない事はできないと、キッパリあきらめながら、ただ生きている感じの人間だった、
だから
一筋の光が差したきがした
もしかしたらこれなら私のこのつまらない、普通という壁を木っ端微塵に粉砕してくれるのではないか?
今、手を伸ばせば私の叶えたい夢に届くかもしれない、
そして、もしかしたら彼女とも……
でも同時に、
所詮は噂話、七不思議なんて本当な訳がない、とも知っているつもりだった。
でも、もう私一人の力ではではどうすることもできないのだ、
こんな本当かどうかもわからない、噂話に頼ることくらいしか、道は残されていないなら、試してみよう、
そう思った。
そうして、七不思議について、詳しく調べてみることにした。
七不思議はその名の通り、七つある都市伝説的な噂話の類いらしい。
だが、
そのなかでも特に私の興味を引いたのはこの学校の何処かにある、開かずの教室にあると言われる一冊のノートについての話だった。
それは、見た目は一般に販売されている普通のノートとかわらないただのノート、でも、その教室にあるノートは、何かしら不思議な力を持っている特別なノートらしい。
でも、そのノートを所有し、力を行使できるようになるためには、
『その人にとっての一番大切な何か』
を払わなければならない、という、何だか噂話にはよくある代償が必要なんだと、
では何もない私にとっての一番大切な何かとなると……?
「…何もない普通の日常…ということになるのかしら?」
つまり、今一番大切な何かである普通の日常を払うことで、私は普通ではなかくなってしまう代わりに、特別な力を手に入れられる、ということになる、
––––––私には叶えたい夢がある––––––
それはどんな形でもいいから、普通の日常を送っていき、その中で普通に”恋愛をしてみたい”という、なんとも乙女な願いだ。
でも、それはもうどの道もうできない、
だって、
何もない普通の日常を送ってきた私が、
生まれてはじめて恋をしたのは、
–––––––女の子だったのだから––––––––
…彼女への恋を実らせたい…
それが、今の私の夢だ、
もしかしたらしょうもないと笑う者もいるかもしれない、
でも、
笑いたきゃ好きなだけ笑うがいいわ!
私にとってこの夢は、他人がどうこうしたところで絶対に変えられるものではないから、
そもそも他人という存在事態、私は一切気にする気はないのだけどね?
私は、その夢を叶えるために必要なことなら、何でもするつもりでいた。
そして、その願いを叶えるための活路が、目の前に現れたかもしれない、
代償は私のこの何事もない、普通の日常だというのなら、
「お安いものじゃない!こんな何もない私の日常を払うだけで願いが叶うなら、私は––––––」
「––––––私は人間をやめるわ‼︎待っててね、玲奈‼︎–––––––」
こうして、私の日常は終わりを迎えた。
〜つづく〜
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