もう一人の友達(セカンドラヴァー)

朝、玲奈が学校に登校して上履きに履き替えようと下駄箱を開けた所、自分宛のラブレターと思われる手紙がが入っていた。


それを見た玲奈は、中身と差出人を確認すべく一人になれる場所、トイレへ向かう、


途中、親友のあゆみと遭遇、あゆみによる数々の誘惑により手紙の存在自体忘れかけるピンチに陥るが、鉄の精神でなんとかこれを乗り切る。

そして目的地へ到着、無事手紙の内容確認に成功する。


しかし、手紙には玲奈に対する好意を示す内容は記されていたものの、差出人の明記はなかった。


手紙を読み、差出人の明記がないことに気づいた玲奈は、



まぁいっか〜



と手紙のことなど綺麗さっぱり忘れることにし、愛するあゆみの待つ教室へ向かうのだった。


その様子を影から見つめる者がいたが…気づかない玲奈なのだった…。




その後、




お気楽に廊下を歩いている玲奈はと言うと、


…よく考えたら差出人が誰でも今は特定の誰かと付き合う気はないし?



あゆみがいればそれでいいやー…



と言う結論に至っていた。


「第一、こんな女々しい手紙を書く男の子なんて、どーせなよなよしたやつだろうし、興味ないわー」


で、もし、

…女の子だったらどうしよー…


あゆみなら速オーケー、


あゆみ以外の女の子なら?


「さすがにそこまでストライクゾーン広くないしなー」


あゆみは特別なのだ!


って言うか、


そもそも私、女の子にラブレターもらうようなタイプでもないと思うしなー…ボッチだったし…


サクッと

自分の発言に勝手に傷つく玲奈、


その後、延々と同じよーなことをグールグールと考えながら、


教室へ到着、



馴染み深い我が愛する机に向かって着席する玲奈、


「…で…?」


ただ……、


「何私の膝の上に座っとんじゃボケー‼︎暑苦しいわー‼︎」


それは我が愛妻、

あゆみちゃんの膝の上だけどね〜‼︎


これも朝の定番行事なのだ‼︎



許せ‼︎あゆみ‼︎




デヘヘヘヘへどかな〜い!



華の女子高生とはとても思えないような最高に気色悪い顔をして笑う玲奈、


その酔っ払いみたいな絡みにも嫌な顔一つせず付き合ってくれるあゆみ、好きよ‼︎


(実際は肩に芋虫が乗ってるのに気づいた時みたいな本気で嫌そうな顔をしていたあゆみだったが)


…どうやら玲奈の脳内ではウフフな反応に変換されているらしい…


「どけ!この!」

と必死に玲奈をどけようとじたばたしてるあゆみ


「あっ、いやっ、もっと〜」


背中をしばかれ殴られ、しかし幸せそうにはしゃぐ玲奈、



そしてついに玲奈の気持ちが最高潮に達したらしく、


「大好きだよ〜、あゆみ〜(ハート)」


まだ朝早く人が少ないとはいえ教室のど真ん中で大声で告白し出した玲奈、


たまたま朝早くに登校して教室内にいたため、突然の玲奈の告白を聞いてしまった生徒達がざわめき出す中、


あっそうだ!


と急に素に戻った玲奈、


ドン引きしてるクラスのみんなを無視し、

やっとの思いで玲奈を跳ね飛ばし、真っ赤な顔をしてフーフー威嚇してくるあゆみを、可愛いなぁ〜と暖かい目で見つめながら、何か思いついた様子の玲奈、



それは、


今度あゆみにラブレター書こー

それで朝あゆみの下駄箱にいれて…

グフフ…楽しみ、

あゆみどんな反応するかしら?




さっき自分がそのラブレターをもらったことなどすでに頭の中から何処かへ飛んでいき、忘れ去った様子で阿保としか思えない考えをし出す玲奈だった。



このすべてを自分の脳内でポジティブに変換してやりたい放題する光景もまた日常の一部なのよ!


そしてようやく自由になったあゆみが玲奈に掴みかかるか逃げるかするべく行動を起こそうとする。


とその時、


「あっ玲奈、あゆみ、おはよー…ってあんたらまたやってんの?馬鹿だね〜」


時刻は八時五十分、


朝のホームルームまであと少しのギリギリで教室に入ってきた一人の女子生徒が、朝の恒例行事となっているらしい、玲奈とあゆみの絡みを見るなり問答無用でからかいにかかる。


「失敬な‼︎これは私とあゆみのお互いの愛を確かめ合う大切な儀式よ‼︎馬鹿にしないで!刺すわよ⁉︎」


「はいはい、ごめんごめん…って…えっちょっまじでハサミ出すのやめて怖いから、分かった、私が悪かったから、そんなガチで殺意向けないでよ⁉︎」


軽い気持ちで適当に謝ったら本気でキレれて刃物を取り出し始めた玲奈にビビり、玲奈を止めるべく必死に謝る理沙、


「じゃあ、今日のお昼は一緒に食べて?そしたら許したげる」


それに対して、玲奈もおそらく本気で刺す気はなかったのだろう、すぐにハサミをしまい(スカートに)謝ってくる理沙を許すための条件を出す。


「分かったよ⁉︎ってそんなんでいいの⁉︎今にも殺人事件起こしそうだったわりに、なんか考える事しょっぼいなぁ〜」


「うっさいわね!こーゆー時どんな事言ったらいいかわかんないのよ!元ボッチ舐めないで!だいたい理沙、いっつもお昼休みどっかいっちゃうんだもん、あゆみがいるからいいけどちょっとは寂しいのよ?」


もしキツめの条件を出して、「あっ、じゃあ友達やめます」とでも言われようものならその場で白目むいてショック死する自信がある元ボッチ玲奈、ゆえに若干ビビりすぎなんじゃないの?ってくらいヘボい事しか言えないのだ、



対して理沙は、



(私的にはもっと痛い事とかしてくれてもぜんぜんいいんだけど……)と思ったものの、口に出さず、



「ごめんごめん、お昼はいつも屋上で寝てるからさ、それに二人の邪魔しちゃ悪いと思うし、」(ちょっとかー)


そう言いながも色々な意味で少し残念そうな理沙、


「何いってんのよ⁉︎私たちが理沙のこと邪魔だなんて思った事なんてないわよ?ねーあゆみ?…ってあゆみ?あれ?どこ行ったの?あゆみー‼︎」


玲奈があゆみのいた方を向くと、

さっきまで自分のとなりにいたはずのあゆみがいつの間にか居なくなっている事に気づきキョロキョロと辺りを見回す玲奈、


…理沙は見ていた…、


理沙が玲奈に絡んで行くのを見たあゆみが、チラッと、一瞬理沙を睨んだ後、そそくさと教室から出て行くところを、


(玲奈はそうでも、あゆみが私をどう思ってるかって言うと、ねぇ〜?)


ハァ、


と何か悟った様子でため息をつく理沙、


「あはは、あゆみどっかいっちゃった、この恥ずかしがり屋さんめー、

…そういえば…あゆみって理沙の前だとちょっと硬くなるよね?理沙、あゆみになんかした?」


「してないよ、

あゆみ、初めてあたしと会った時からなんか壁作ってたからなー、怖がられてるとか?」



「あゆみ人見知りだからなー、その金髪が怖いんじゃない?黒にすれば?」


「しないわよ⁉︎これはあたしのトレードマークなんだから」


エッヘン!

と胸を張る理沙、


「そうよねぇ〜、この学校、髪を染めるの禁止だから大体みんな黒髪なのに、理沙だけは地毛だからって許されてるんだもんね〜?」


「そうよ?いいでしょう?」

「うん、理沙って金髪すっごく似合うもん!綺麗だし羨ましいわぁ〜」


「ちょっ…なっ何よ?綺麗なんて、褒めても何も出ないわよ?」

「ううん、そんなつもりで言ったんじゃないよ、本当にそう思っただけ、すっごく似合ってる…かわいいよ…理沙……」



「玲奈……あっありがとう……」

頬をほんのり染めて目を泳がせながら言う理沙、



二人がなんかムフフな雰囲気になりそうな所で、




ほいっ、じゃあそろそろ、


理沙の紹介しましょうか、





彼女の名前は橘理沙


背は私より頭ひとつ高い、モデルさんみたいな体型(…胸が無いとも言う…)


うっさい!どーせ負け惜しみですよ〜


それは置いといて、




とっても綺麗な女の子です。


腰まである長い金髪はそれ自体が光を発してるんじゃ無いかってくらい輝いて見える。


勉強も運動もすごくできて、すっごく頼りになる、いかにも姉御‼︎っていう雰囲気、


外を歩けば同性異性関係なく彼女に見とれちゃうような物凄い存在感。(…中学時代、何度か女の子にも告白された事があるらしい…)



ではそんな高スペックな彼女が何で私みたいな愚図でボッチで変態なメス犬野郎と話をしてくれているかというと、




さっき外を歩けばって言ったよね?





そう!彼女は、引きこもりだったのだ‼︎



原因は中学時代に告白された内の一人の女の子、


理沙に告白した女の子の内の一人に強烈な子がいたらしいの。



その子は元々付き合ってた人がいたらしんだけどわざわざ理沙に告白するために別れてきたんだって。


でも、理沙は断っちゃったんだって。(…そんな熱烈な子、なかなかいないし付き合っちゃえばいいのに…)


その時の理沙は彼女に関係なく恋愛ごとに興味がなかったんだと、


(全く、羨ましいヤツめ)


まぁそんなこんなでその子とは終わるはずだったんだけど、



その女の子がまぁ危険というか怖いというか、


理沙をストーキングするようになったらしいの。


学校ではどこにいてもまとわりついてくるし、帰りも家までついて来るし、



教えてもいない電話番号やメールアドレスを知られていた時はさすがに鳥肌がたったとか、(あれ?私もヤバイ?)


そしてついに、その子がやっちゃったの



おそらく理沙に一生もののトラウマを植え付けた事件、


『私の何がダメなんですか⁉︎私はこんなにも理沙さんの事を思ってるのに…もういいです…理沙さんが私と付き合ってくれないなら、私、生きてても仕方がないので死にますね、理沙さん、見てて下さい‼︎これは全て理沙さんが招いた事なんですから‼︎』


そう言って、その女の子はカバンから刃物を取り出し、理沙が見てる前で




…自らの喉を掻き切った…





その後、


病院へ運ばれた女の子は、なんとか一命を取り留めたらしいんだけど、


その日以来、理沙は人と接するのが怖くなって部屋から出られなくなっちゃったんだって、


…うん…


これはキッツイなー、





……それが理沙が中学二年生の時のこと、




で、その後、


中学三年の七月くらいまで引きこもってた理沙だったけど、


そんな理沙も、なんとか立ち直らなきゃと考えたらしく、高校へ進学する事を決意、一人で勉強に打ち込み、元々のスペックの高さもあって今の私たちと同じ高校へ通うことになったんだ、



でも、



一度出来たトラウマはなかなか取り払えないもの。





まず人の多い登校時間に外に出るのは無理、


事情を知っている先生達は何かと理沙を気遣ってくれたらしいんだけど(…入試含め…)、その先生達とすらまともに話ができなくて、


教室にも入れないため授業にも出れないという事で、卒業は絶望的、

でも、授業には出れなくとも学校に来る意思はありとして先生達が特別に彼女にだけ一般では立ち入り禁止になってる屋上への立ち入りを許可したんだって。


それで、表立っては立ち入り禁止なため誰も来ない屋上だけが当時の理沙にとって唯一のオアシスとなったんだ。



……人との接触を避けながら、少しずつ学校内での行動範囲を広げていた理沙の努力が、先生達を動かし理沙に屋上に入る許可が出たのが高校一年の夏休み明けの九月……、


つまり、私とあゆみが運命の出会いをした頃の話、


その頃、私はあゆみと二人っきりでイチャイチャ、キャーキャーできる場所探してたの、(もちろん、あゆみにはナイショでね?)


それで、校内の立ち入り禁止場所を巡っていたのだけど、(あっこれバレたら私、即停学だから秘密ね?もし言ったら……ワカルヨネ?……)




そして出会ったの、





顔にウル○ラマンな仮面を付けて、ガタガタ震えながら私に向かってファイティングポーズをとる理沙と、





…ちなみにそれまでの理沙は、外ではずっとこの仮面付けてたから別の意味で凄い存在感だったらしい…



…そして、まぁ色々あって…


今言ったみたいな重い話もしてくれるくらい私を信用してくれるようになったんだけど、





それでも教室に来れるようになるまでは苦労したわー、




まず、あゆみと理沙が初めて会う事ができたのが高校二年に上がってすぐ、五月の半ばくらい、


それまでは私と理沙の二人で話をして人と接する練習をしてたんだけど、そろそろ理沙のトラウマ解消の第二歩目へ踏み出そうと言う事であゆみを紹介する形で理沙とあゆみには出会ってもらった。


ちなみに、


それまであゆみには理沙の事を言ってなかったから、なんだか浮気してる気分になって、私が耐えられなくなったってのもある。


理沙とあゆみが初めて会った時、


理沙にはあゆみのことを、私にとって唯一の友達にして最高の親友って紹介して、(くそ〜、何であゆみのことを私のフィアンセって紹介できなかったのか!いまだに悔やまれる)


あゆみには理沙のことをたまたま会って話をしてたらなんか仲良くなった新しい友達って紹介したー。(後であゆみにどこでどうゆう風に出会ってどんな話をして仲良くなったのか、それはいつくらいからのはなしか、あゆみに隠れて理沙と会ったのは何回くらいか、などなど、めっちゃ問い詰められた)


ん〜?


ひょっとしてヤキモチかしらぁ〜?


可愛いのぅあゆみちゅぁ〜ん!


私は貴方のフィアンセですぜ?(勝手に決めた)

他の誰かになびくなんてありえませんぜ?



とまぁ


そんな感じで出会ったあゆみと理沙なのですが、





–––––––––––––





初対面の時、


「そーゆーワケなので、あゆみ、理沙、二人とも仲良くしてね?二人とも私の大切な友達だから、」


と、玲奈は二人の間に立ち、あゆみ、理沙の顔を交互に見ながらそれぞれの紹介を終える。


「…よっ…よろしく……」


まずはなんか先生にこっぴどく叱られた後の小学生みたいな不貞腐れた感じで

渋々挨拶するあゆみ、


緊張してるのね?


相変わらず可愛いいわ〜、


「こっ……こここここここ、こちら…こここ、こそ…」


方や、


なんか鶏みたいに”こ”を連発しながら最後の方が聞こえないくらい小さな声になりながらも、必死な感じで答える理沙、新手の八尺様かしら?


見た目大人っぽい感じの理沙がまるで産まれたての子鹿のようにプルプル震えながら、視線を泳がせ、頬を赤く染めて、精一杯相手に応えようとしてる。



あれ?



なんか、


そんな理沙を見てると…ぐっとくるものが…ある……、



…なんてこと⁉︎…


この私が!あゆみ以外の子に、かわいいと思ってしまうなんて⁉︎



でも、溢れてきてしまうものは、もう、止められない‼︎


…理沙…


か〜わい〜いの〜‼︎


何?あのS心をくすぐる表情は?


自分で言うのもなんだけど、私ってドMなはずなのに、あんな姿見せられると無性にいじめたくなるじゃない!





と、それは置いといて、





まぁ、そんな会話からあゆみと理沙の関係は始まった。


のだけど、


その後、二人で会話するように勧めてみると、



「……」

「……」



…….




数十分、


お互いに一言も発することなくただポーッとしている時間が続く。




それからさらに十数分がたった所で、ようやく理沙が何か決意を固めたような表情になり、



「……あっ、あの……」



恐る恐るな感じで何とか声を絞り出してあゆみに話しかけようとする、


そんな理沙に対して、あゆみは、



「……何?……」



なんか超不機嫌オーラ全開でドスの効いた声で答えるあゆみ、



「……い、いえ……何も……」



それに怯えたのか、一瞬ビクゥッ、と肩を震わせたのち、せっかく何か言いかけていたことを飲み込んでしまう理沙、


「……そう……」


別に興味ない、


といった感じで一言で返すあゆみ



……会話終了……である。




……何コレ……



……話……続かねー……、


そして振り出しへ、




という感じがさらに続く、



その後、理沙は何とか教室に来ることもできるようになり、

普通にクラスメイト達とも話ができるようになった。


でも、あゆみとだけは話ができないらしい、


おそらく今でも二人が会話をしないのはこの最初の壊滅的な会話が原因なのでは?と私は思うわ!


いつか二人共仲良くなってくれる日が来るといいのだけど、




と玲奈が珍しくまともなことを考えているところで、




あっ、そういえばずっと回想中だったわね、そろそろ先に進みましょうか、


と、玲奈が回想の終了を宣言した所で、あゆみと理沙との出会いのお話は終了しまーす。







–––––––そして時は動き出す!–––––––––






予鈴のチャイムが鳴り、朝の9時からのホームルームの開始を知らせる。


ガラガラッと


引き戸を開けて先生が入ってくる。


あゆみは、帰ってこない。


まぁ?


どこにいようがすぐに見つけ出せる自信が私にはありますけどね?


なんせ、最初の文字がジーで始まって最後がエスで終わる、アルファベット三文字の力があるからね?

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