玲奈の不思議な恋愛〜ガールズラブは止まらない〜

ベームズ

始まり、始まり。

私の名前は桐谷玲奈!



普通の高校に通う普通の高校2年生の女の子!



今日も朝からいつも通り、普通に起きて普通に登校してきたんだけど、



「…えっ…⁉︎」



下駄箱を開けて上履きを取ろうとしたら……

なんとびっくり‼︎


靴の上に何か手紙が乗っていました。



それは見るからに可愛らしいピンク色をした入れ物に、ハート型のシールで封をしてある…いわゆるラブレターと呼ばれる手紙…⁉︎


「…一体誰が…?」



もちろん、昨日帰る時は無かったし、私が自分で入れて帰ったのを忘れたって訳でもない。


「えらく可愛らしいけど、まさか間違い?」

男の子がこんな可愛らしい手紙を書くなんて考えられない、なら


と名前が書いてないか手紙を見てみると


「…桐谷玲奈様へ…」


間違いなく私へのラブレターでしたー、


「いや、まだわからないわ…

ラブレターだと思ってウキウキと開いたら…実は中身は果たし状でしたーなんて、よくあることよ」


…よくあるかはわからないが…



意を決して手紙を開けてみる、


「…って…、こんなとこで見る訳にはいかない…よね?」


彼女は現在、手紙を見つけた衝撃で動揺し、そのまま下駄箱の前から動けずにいた。


こんなところでいつまでもゴソゴソしてたら完全に不審者じゃない!


とりあえず人の来ない場所を探さなきゃ



というわけで、手紙を開く場所を探しに校舎の中へ入っていく玲奈、


人気の無いところは……トイレ‼︎



と目的地を決め、トイレ目指して早足で校舎の中を進んでいく、



玲奈は朝の登校時刻を早めにしている。

今は朝の八時、


ホームルームが九時からだから、まだ1時間以上あるし、登校している生徒も少ない。


そのため、すれ違う生徒はまばらで、進行を妨げられることなく順調にトイレが目視できる所までやってきた玲奈、


しかし、


「あっ玲奈じゃん、おっはよー‼︎」


トイレのドアを目の前にして


この先にある教室からやってきたと思われる一人の女子生徒に声をかけられた。


「おっおはよ〜」


手紙のことが気になって焦り、

思わず返事が上ずった声になってしまった。


その様子を不審に思ったのか、


「…?…どしたの?体調でも悪い?」


眉根を寄せて心配そうに首を傾げて聞いてくれる女の子。


…かわいい…


が、しかし!


今は手紙のことが気になるの

だからごめん


「ううん、大丈夫!ちょっとトイレに行きたくて急いでたの」


と先を急ごうとすると


「そう?ならよかった、玲奈の事だからまたなんか道に落ちてる物でも食べてお腹壊したのかと思ったわ」


「うんだから…って…私道に落ちてる物なんて食べたことないからね⁉︎」


この子、かわいいくせに何て事いうの⁉︎





……もっと言って‼︎






「そうだったかしら?この前私と散歩した時、道に落ちてたガム食べてたじゃない?あの時は吐かせるの苦労したわ〜」


「それ私じゃないよね⁉︎あゆみのうちで飼ってる犬のジョンよね⁉︎」


「じゃあ試してみる?ほーら、貴方の好きな足裏よー?」

「ワン‼︎…って違うからね⁉︎私足裏舐めないからね⁉︎」



(舐めたいけど‼︎)



危なかった、そんな本気でクズを見る目で言うから思わず流れに飲まれて犬のジョンになりきる所だったわ、


ヤリたい、でもヤレない、

と言う葛藤の後、なんとか人の道に踏みとどまった玲奈、


あゆみのノリに流されるままこんな場所で四つん這いになって地べたを這いずっていって、あゆみの足裏舐める所だったわ、


恐るべし、

我が友、あゆみ‼︎


というわけで


あゆみの紹介ね、


彼女の名前は柚原あゆみ



背は私よりちょっとだけ低くて、彼女のおでこと私の目が丁度同じくらいの位置になる、

顔立ちは、一言で言うと猫を思わせる感じで同性の私が見ても可愛い!と思わず口に出してしまうほどに完璧‼︎

いつまで見てても飽きないくらいにドストライクな女の子、もう家に持って帰って飾ってたいくらい、(いつかしちゃいそうで怖いです〜)


ただ性格が割としっかり者なためか、目がちょっと怖い、(…ツンツンしたツンデレちゃんです…)

あの目で睨まれたら……

何かに目覚めそうになる……。


うふふ…それもいいかも…


いつかあのゴミを見るような目で睨まれ、その可愛らしい足で踏みつけられながら思いっきり罵倒されるのが今の私のささやかな夢なのです(爆笑)。


そして髪‼︎


髪は少し茶色がかっていて長さが肩くらいまで、髪型は当然ツインテール‼︎(私のリクエスト)

元々はストレートだったのを、あの見た目にあの性格で、髪型はツインテール以外ありえないでしょ⁉︎と言うことで私が全力で勧めた所、最初 は渋々だったけど、最終手段、土下座(ジャパニーズ‼︎)で頼み込んで何とかツインテールにしてもらった(ガチで引かれた)、その後もなんだかんだ続けてくれている、


…優しいのう…


でもそんなに優しいと、いつかヤバイやつに目をつけられそうで心配なのです。

だから私がついていてあげないと、


えっ⁉︎私?


やだなー、


私は別にヤバくはないよー


ただあゆみの生年月日からスリーサイズから好きな物嫌いな物から住所から携帯家電番号から…(以下個人情報ほぼ全て)

……知ってるくらいだよー?



…うん知ってた…



私が結構やばい人だってことは、


えっ⁉︎あぁ警察だけはマジ勘弁して下さいお願いします。私はただあゆみが心配で心配でたまらないだけなんです。他の変な人と一緒にしないで下さい。私だけはあゆみの事が本当に心配なだけなんです他意はないんですだから…(中略)

…あゆみは私の数少ない友達なんです、大切な友達のために何かしてあげたいと思ってやってることなんです、ってゆーか‼︎友達を心配に思って何が悪いんですか⁉︎第一、何の権利があって私とあゆみの仲を引き裂こうってんですか刺しますよ⁉︎(キレ気味)



…私とあゆみが出会ったのは、私が高校に入ってからしばらくした9月の夏休み明けてのあるひのこと…


それまで私は、


朝は一人でその日の授業の予習、お昼休みは、


今思い出しても涙が出てくる、トイレでの一人飯、


放課後は帰宅部の寄り道なし、日が暮れる前には家に着いていたという、


いわゆる完っ壁なボッチでしたー。


というのも


時は4月、


一生に一度の記念すべき入学式の日、


誰もがこれから始まる新しい生活に心躍らせる中、


その頃は私もまだそんな生徒達の一人でした。


私が進学した高校は特に目立つ事もない、家が近くだからという感じで選ばれるような、普通の高校でした、

中学の時の友達も結構通うからという理由で私もそこにしたんだけど、


『あっごっめーん、私、第一志望通ったから何処何処の何々高校に行く事になったー』



と言った感じで次々と知り合いが他の高校に行くことになっていき、


『えっ⁉︎玲奈、他の高校受けてないの?馬っ鹿だねー』


中学の時の友達にはこんなこと言われて馬鹿にされ、絶望、


『まぁ、通う学校は違っても私達は親友だからね?連絡もするしいっぱい遊ぼ?』


と言って別れた中学時代、一番仲の良かった親友からは卒業して一週間後には一切の連絡も来なくなったし。


気がつくと、その学校に通うのは私だけだったっていう落ちね、


でも、

まぁそれはもう終わったことだから



「ふっ…友達が何よ!いなくなったところで痛くもかゆくもないわ!」




ってスパッと割りきっ…








…れるわけなく、


泣きに泣いて何とかかんとか振り切り、



(これから私は高校生なんだから、新しい友達だってすぐできるよね?)


と気持ちを切り替え、入学式の日を迎えたのだが、






いざ入学式の日、






…何コレ…?


入学式の入場列、そこにはおそらく知り合い同士なのだろう新入生達が楽しそうに話をしている光景が、


なるほど、


…そうなりますか…


どうやら別の中学の同級生同士がまとめてここへ入ってきたらしい、

理由は、まぁ上の通りだから言うまでもないか、


そんな感じで、初っ端からつまづき、気がつくとボッチ道まっしぐらでしたー


マジデ、ミンナシネバイイノニ、


とあの時は世の中の全てを本気で恨んだものだわ、


でも、それから、


夏休みが明けてしばらくしてからのこと(もちろん友達と何処かへ行ったとかゆー楽しい思い出など一切ない)


その日も夏休み前と同じようにお昼休みを一人で寂しく過ごすべく、トイレでお弁当を食べようと、教室から静かに出てお弁当を持ってトイレに入ろうとした時のこと、


「「…あっ…」」

同じタイミングで、


同じような雰囲気をしてお弁当を持ってトイレへ入ろうとしていた一人の女子生徒–––––あゆみと出会った。


ちなみに、

彼女と出会って最初に感じたのは、

(…河原に捨てられた、ダンボールの中から見つめてくる捨て猫みたい…)

だった。




「…お弁当…一緒に、食べませんか?」


恐る恐る聞いてみると、


「…うん…」


その子はうつむきながら、細々とした声で返事をする。


これが私とあゆみの初めての出会いだった。


その後、


一緒にお弁当を食べながら色々な話をした。


そこで彼女も私と同じような理由、友達だと思ってた人達に、裏切られる形でボッチになったことが分かった。

ただ私と違ったのは、あゆみがボッチなのは中学のときからだったってとこ、


『…こんな私だけど友達になってくれませんか…?』


と泣きながら言ってきたあゆみの顔が今でも忘れられない。



ええ‼︎なりますとも!

こちらこそよろしくでしたからね‼︎




で晴れて友達になった私とあゆみがまずしたことは、


とにかく二人で愚痴りまくったね、はい、


最初は引っ込み思案でぐずぐずと弱気だったあゆみも二人であれやこれやと気持ちをぶつける内に今みたいな冗談も言えるような明るい女の子になった。





それで私とあゆみは意気投合、その日以来、時間があれば二人でいるようになった。




そして現在、



私とあゆみは、


…お互いに高校生になって初めてできた友達同士にして…かけがえの無い






「…最高の親友です…」


「えっ…何…急に…?一人で恥ずかしいこと呟いて…」


若干引き気味になるも逃げずに返してくれるとこが…好き…


「ま…まぁ?…私も…そう…思ってる…よ?」




ズッキュゥゥン❤︎





あぁ、

その照れながらもハッキリと気持ちを伝えてくれるところがまた…最高です…


そこでハッと気づく


あれ?これって…もしかして…手紙を書いたのがあゆみなやつ?


あゆみなら、今日だって私より先に登校してたし、手紙だって下駄箱に入れられる。


聞いてみる?


いや、でも、


と考えていると、

「…玲奈?どうしたの?そんなに見つめて…」


私の顔に何か付いてる?


少し顔を赤らめながら上目遣いで問いかけてくるあゆみ、


…だからなんで顔を赤らめる…⁉︎

勘違いするでしょ!


まぁしてもいっかーしちゃおー

愛してるわ!あゆみ‼︎



等と考えながら


「あっ…あぁ、ごめん、あんまりにもあゆみが可愛かったから…、つい見つめちゃった☆」


パチンッ


と玲奈がウィンクしながら返す

するとあゆみは


ボンッ


と今にも爆発するんじゃないか?と思うほど顔を真っ赤にして


「えっ…なっ何?…きっ…急に何言ってんのよ!バカー‼︎」


とあわあわ慌てだしたかと思うと次の瞬間には両手で顔を隠しパタパタと走り去って行くあゆみ、


あぁ…その羞恥にまみれて今来た方向を逆走して行く姿…そそりますな〜



よし!



…後で襲うか…




イケナイ妄想が始まった所で気がついた



あれっ?


…ところであゆみ、ここまで来た目的は良かったのかなー?、多分トイレだったと思うんだけど…、


まぁ?授業中、必死でトイレを我慢するあゆみの姿を見られると想像をするだけで興奮しちゃってる私がいるのよさ!


机に向かって椅子に座りながら手を股に挟んでモジモジとかするのかなー


うーん、


…是非、見たい…

この先もお昼休みまではトイレに行かせてなるものか‼︎

ずっと楽しませてもらうぜ!

ムービーとか撮ってやろーかー?


などと下衆な思考が頭の中に蔓延しだした所で


そういえば私もなんかトイレに用があったような…


二秒後、


当初の予定を思い出す。


「そうだった!あゆみがあまりにも可愛すぎて完全に手紙のこと忘れてた!」


結局、あゆみに聞けなかったなー

でもまぁどっちみち今から読む訳だし、よしとしよう。


と考えている間に無事トイレに到着、中に入って個室を一つ占領して手紙を開く



「…えーっと?何々?拝啓、桐谷玲奈様へ…」


『拝啓、桐谷玲奈様へ、

初めて貴方を見かけたあの時から貴方の事が頭から離れません…云々

私にとって貴方は…云々

好きです…』


以上



それはもう、完ッ壁にラブレターな内容やったわー。


って、ん?


そういえば…この手紙書いたの…結局誰なの?


手紙には玲奈に対する好意を必死に伝えんとする内容が永遠と書かれてはいるが、

肝心な差出人、クラスや名前などが一切書かれていない、

ついでに何時に何処何処へ来てくださいなどの呼び出し指定もないためこの手紙だけでは差出人本人を特定することができない。


わたし、どーすればいいのかしら?


うーむ


一瞬考えたかと思ったら、


まぁいっかー、考えても分かんないし!


とスッパリ本人特定を諦めて手紙をしまいトイレを後にする玲奈、




…それでいいのか…?






……悩みを強引に”まぁいっか”で片付け、何だか清々しい顔をしてトイレから出てきた玲奈。


まるで手紙のことなど無かったことのようにルンルンと教室へ向かって行く玲奈の後ろ姿を、



近くの角からこっそり覗く影があったのだが、


……玲奈の知る所ではない……。

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