第2話 次元の裂け目 懐かしい再開

とりあえず町へ向かおうとする一行だったがヴィランの一件もあってとりあえず偵察してから先に進むように決めた。

待つことしばし。

偵察しに行ったエクスが戻ってくる。


「どう? 何も無さそう?」


シェインがエクスに問う。


「向こうにヴィラン達が固まっている場所がある。何かを守ってるみたいだ」

「そうですか……だったら見逃すわけにはいかないわね。行きましょう!」


レイナの提案で一行はヴィランを叩くことにした。


エクスに先導されて歩き続ける事10分。その場所へとたどり着いた。森の中にある開けた広場、そこをエクスの報告通りヴィラン達が占拠していた。何かを守る様に円陣を組んでいたため何を護っているのかはわからない。


「行ってみましょう。カオステラーの手がかりになるかもしれません」


全員ヒーローの姿へと変える。両手杖を使うヒーローへと姿を変えたシェインが魔法弾を放つ。直撃を喰らい力を失ったヴィランは煙となったかのようにパッ消えた。


「グギィ!?」


異変に気付いたヴィランが魔法弾が飛んできた方向を向く。その後ろからエクスとタオとレイナが突っ込んできた!


もともと弱かったことに加えて不意を突かれたヴィランは早くも敗戦濃厚であった。エクスの剣で切り裂かれるか、タオの槍で突かれるか、レイナの魔法で倒されるかというどう足掻いてもやられる以外に無い3択であった。


「隠れている奴は……いなさそうだな」


この前のような不意打ちを避けるために周囲を慎重に警戒する。おそらく大丈夫だろうと判断しヒーローへの変身を解いた。


「これ……何なんだろう?」


エクスが指差した物はヴィラン達が守っていたもの。空間が裂けたかのような次元の裂け目。その先には1軒の家があった。


「どうしよう……」


見慣れないものにエクスは戸惑う。


「ここまで来て引くわけにもいかないでしょ? 行ってみましょう」


レイナが先陣を切って裂け目の中に入っていく。


「ま、待って!」


エクス達もそれに続いた。




次元の裂け目を通り抜けた先には一軒の家があった。


「この家……どこかで見たような……どこだっけ?」


その家は、以前どこかで見たような覚えのある家だった。エクスが思い出そうとしたとき、住人が中から出てきた。


「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい。お父さん」


中から出てきたのは銃を持った猟師と、赤い頭巾をかぶった女の子だった。


「あれは、猟師と赤ずきん!?」

「ということは……ここは赤ずきんの想区ってことか?」

「おお! あんたたちか! 久しぶりだな!」


驚く一行を見つけた猟師がやってくる。


「猟師さん、何か変わったことはありませんでしたか?」


レイナが問いかける。何とかカオステラーの手がかりをつかもうと思いながら。


「うーん。変わった事ねぇ。特にないなぁ。あるとすればここ数日狼をサッパリ見かけなくなったことかな。遠吠えすら聞かない。あるのは狼の死骸ばかりだな。あんまり退治されすぎても困……」


猟師が言いかけたその時だった


「キャンキャンキャウン!」


狼の悲鳴がこだまする。


「行ってみましょう!」


猟師を連れた一行が悲鳴が聞こえた場所に到着するとそこには狼の死骸とヴィラン達がいた。その手は血でべっとりと濡れていた。


「猟師さん! あなたは下がって!」


レイナは猟師を下がらせる。残りの3人はヒーローの姿へと変身しヴィランに立ち向かう。


「今回はメガ・ヴィランもいるな」


ヴィランの中でも特に大柄でひときわ目立つメガ・ヴィラン。そのタフさから部隊長として他のヴィランを率いていることも多い。今回の奴も様子を見ているとあちこちに指示を飛ばしているように見える。


そのせいか今までは「ただの群れ」だったに過ぎないヴィラン達にもある程度統率がとれていた。傷ついたものは下がらせるし遠距離攻撃が出来るヴィランの射線をさえぎらないように撃つときは前線で戦ってるヴィランを屈ませるといった指示を出していた。

そのせいか実力そのものは今までのヴィランと同程度だが、手ごわい。


「クッ! 手ごわいわね」

「エクス! 指揮官を倒すぞ! ついてきてくれ!」

「わ、分かった!」


エクスとタオの二人は高くジャンプし、ヴィランを踏みつけてさらに高く跳ぶ。そして上空からメガ・ヴィランに襲い掛かる!


空中から1激をお見舞いし、よろけさせる。その隙に懐に入り込んだエクスはとっておきの必殺技を繰り出す。振り上げた剣が光り輝き、それを振り下ろすとメガ・ヴィランの背丈すら優に超えるほどの衝撃波が走る!


直撃を食らったメガ・ヴィランはぶつかった衝撃で細い木をへし折りながら吹き飛ばされ、消えた。


「ギ、ギギィ!?」


指揮官を失ったヴィラン達に動揺が走る。それまで整っていた隊列が乱れて焦りが見え始める。やはりメガ・ヴィランを優先的に倒したのは正解だったようだ。


烏合の衆と化したヴィランはもはやエクスたちの敵ではなかった。ほんの数分で全滅させることが出来た。



ヴィランを倒した一行は不思議に思っていた。


「……ヴィランが狼を退治してたみたい」


シェインが狼の死骸の傷跡を見て分析する。


「ヴィランが狼を? 何で?」


「……分からない」


「もうカオステラーにつながりそうな手がかりはなさそうね。いったん戻りましょう」

「なんか壮大な話になりそうだな。他の想区にまで飛び火してるからなぁ」


一行は現場を後にする。

……とあるメッセージを見落としたまま。

倒れた幹に彫られた「Z」の文字を、見逃していた。

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